第13話 見学
二週間後。
バンコク。スワンナプーム国際空港。
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六人の候補者が、到着した。
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レイチェル・モーガン。元CIA。情報管制官候補。
ハンス・ミュラー。元ドイツ連邦軍大佐。参謀候補。
キム・スヨン。元韓国軍。通信要員候補。
アブドゥル・ハッサン。元エジプト軍。戦闘要員候補。
ピーター・オコンクォ。元ナイジェリア軍医。医療要員候補。
もう一人、コンゴで見つけた男。ジャン=バティスト・ンゴマ。元コンゴ軍。戦闘要員候補。
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柏木とハーパーが出迎えた。
「ようこそ、タイへ」
「長旅だった」
ミュラーが言った。
「疲れただろう。だが、今日中に拠点を見せたい」
「今日中に?」
「そうだ。時間がない」
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バンコク郊外。
突撃隊の拠点。
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六人の候補者が、施設を見学していた。
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「ここが訓練場だ」
柏木が説明した。
広大な敷地。射撃場、近接戦闘訓練場、障害物コース。
「本格的だな」
アブドゥルが言った。
「本格的だ。毎日、ここで訓練している」
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「車両庫」
白いハンヴィーが四台、並んでいた。
「M1114か」
ミュラーが目を細めた。
「武装は」
「GAU-19、M2、Mk19。それぞれ搭載」
「重武装だな」
「重武装だ。相手も重武装だからな」
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「ヘリポート」
UH-1が駐機していた。
「UH-1か。古いが、信頼性がある」
ピーターが言った。
「そうだ。イーゴリが整備している」
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「通信指令室」
川島とカルロスが作業していた。
モニターが並んでいる。地図。通報状況。シフト表。
「整理されているな」
スヨンが言った。
「一ヶ月前は、もっと混乱していた」
川島が答えた。
「ハーパー少佐とルノー大尉が来てから、改善された」
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「医務室」
アレクセイが器具を整備していた。
手術台。麻酔機。心電図モニター。
「本格的な手術もできるのか」
ピーターが驚いた。
「できる。戦場では、病院に搬送する時間がないことがある」
「分かる。俺もコンゴで、野戦手術を何度もやった」
アレクセイの目が光った。
「経験があるのか」
「ある。百回以上」
「......いい。お前が来れば、助かる」
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見学が終わった。
会議室に集まった。
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「質問はあるか」
柏木が聞いた。
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ミュラーが手を挙げた。
「指揮系統を確認したい」
「指揮系統?」
「誰が最終決定権を持つのか」
「俺だ。現場では、俺が全ての決定を下す」
「上層部の干渉は」
「ない。局長は信頼してくれている。作戦には口出ししない」
「政治家は」
「いない。王室直轄だ。政治家は関与できない」
ミュラーは頷いた。
「いい。それが聞きたかった」
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レイチェルが聞いた。
「情報収集の方法は」
「今は、各自が独自に集めている。体系化されていない」
「だから、私が必要なのか」
「そうだ。お前が来れば、情報を一元管理できる」
「CIAのような組織的な情報収集は」
「ない。だが、現場に近い情報がある。お前がそれを整理すれば、効果は大きい」
レイチェルは考えていた。
「......面白いかもしれない」
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スヨンが聞いた。
「女性隊員は、本当に対等に扱われているのか」
サラが答えた。
「対等よ。私は十二年、柏木と一緒に戦ってきた。一度も、女だからと軽く扱われたことはない」
マリーが続けた。
「私は狙撃手だ。戦闘では、最も重要な役割を担っている。性別は関係ない」
ファリダーが言った。
「私は新人です。でも、先輩たちは、いつも私を尊重してくれます」
スヨンの表情が少し和らいだ。
「......韓国軍とは、違うのね」
「違う。ここでは、能力だけが評価される」
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アブドゥルが聞いた。
「給料は」
「高くはない。だが、生活には困らない」
「金のためではないのか」
「金のためではない。俺たちは、正義のために戦っている」
「正義か」
「そうだ。信じられないか」
「......いや、信じる。お前たちの目を見れば、分かる」
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ピーターが聞いた。
「負傷者は、どのくらい出る」
「多くはない。だが、ゼロではない」
アレクセイが答えた。
「最も重い負傷は」
「銃創。爆発による裂傷。過去に、重傷者が三人出た」
「死者は」
「いない。今のところは」
「今のところは、か」
「そうだ。いつか、出るかもしれない。それが、俺たちの仕事だ」
ピーターは頷いた。
「覚悟はできている」
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ンゴマが聞いた。
「コンゴとは、何が違う」
「何が違うと思う」
ニコライが逆に聞いた。
「......分からない。だから聞いている」
「コンゴでは、誰のために戦っていた」
「金を払う奴のために」
「ここでは、誰のために戦う」
「......タイの人々のために?」
「そうだ。それが違いだ」
ンゴマは黙っていた。
「......悪くないな」
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夜。
拠点の食堂。
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候補者たちと隊員たちが、一緒に食事をしていた。
タイ料理。パッタイ、トムヤムクン、グリーンカレー。
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「辛いな」
ミュラーが水を飲んだ。
「慣れる」
ニコライが笑った。
「俺も最初は、舌が焼けるかと思った」
「今は」
「今は、辛くないと物足りない」
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「ビールは」
アブドゥルが聞いた。
「ある。シンハー、チャーン、リオ。どれがいい」
「全部試す」
「いいな。その姿勢」
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レイチェルはサラと話していた。
「あなたは、どのくらいここにいるの」
「最初からよ。特捜班の頃から」
「特捜班?」
「今の突撃隊の前身。NGOから始まったの」
「NGOから?」
「長い話よ。でも、簡単に言うと、私たちは、どこにも居場所がなかった人間の集まり」
「居場所がなかった」
「そう。軍を追われた人、組織に裏切られた人、正義を失った人。みんな、傷ついていた」
「......」
「でも、ここで、もう一度立ち上がれた。柏木が、私たちを集めてくれた」
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レイチェルは柏木を見た。
柏木は、ンゴマと話していた。
笑っていた。
「......あの人、笑うのね」
「笑うわよ。最近は、少しずつ。昔は、もっと無愛想だった」
「何があったの」
「色々あったのよ。でも、今は、変わった」
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翌日。
候補者たちに、決断を求めた。
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「どうする」
柏木が聞いた。
「来るか、来ないか」
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ミュラーが最初に答えた。
「来る」
「理由は」
「政治家の干渉がない。それだけで、十分だ」
「分かった。歓迎する」
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レイチェルが答えた。
「来る」
「理由は」
「......ここでなら、私の能力を、人を守るために使える気がする」
「使える。保証する」
「分かった。やってみる」
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スヨンが答えた。
「来ます」
「理由は」
「女性が対等に扱われる場所。それを、自分の目で確かめた」
「確かめたか」
「はい。ここなら、やっていける」
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アブドゥルが答えた。
「来る」
「理由は」
「金のためではなく、正義のために戦える。それが、俺の求めていたものだ」
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ピーターが答えた。
「来る」
「理由は」
「アレクセイと話した。彼は、本物の医者だ。彼と一緒に働きたい」
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ンゴマが答えた。
「来る」
「理由は」
「......分からない。だが、ここには、何かがある。コンゴにはなかった何かが」
「何だと思う」
「......目的。かもしれない」
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六人全員が、来ることを決めた。
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「ようこそ、王室犯罪対策局へ」
柏木が言った。
「これから、お前たちは、俺たちの仲間だ」
「光栄だ」
ミュラーが答えた。
「光栄ではない。責任だ」
「責任か」
「そうだ。俺たちは、タイの人々を守る責任がある。お前たちにも、その責任を負ってもらう」
「了解した」
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新しい仲間が、六人。
合計、二十六人になった。
目標まで、あと十八人。
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三ヶ月後。
さらに人員が増えた。
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イギリスから、元SASの兵士が二人。
オーストラリアから、元特殊部隊の兵士が二人。
カナダから、元JTF2の兵士が一人。
ポーランドから、元GROMの兵士が一人。
ブラジルから、元BOPEの兵士が二人。
フィリピンから、元特殊部隊の兵士が一人。
そして、韓国から、スヨンの紹介で通信要員が二人。
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合計、十三人が追加された。
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「これで、三十九人だ」
ハーパーが言った。
「目標は四十四人だった」
「あと五人」
「あと五人だ」
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「半年で、三十九人」
ルノーが言った。
「よくやった」
「よくやった。だが、まだ足りない」
「足りないが、形にはなってきた」
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柏木は全員を見渡した。
「いいか、聞け」
全員が注目した。
「俺たちは、三十九人になった。最初は、十六人だった」
「......」
「倍以上だ。だが、数が増えただけでは意味がない」
「意味がない?」
「そうだ。俺たちは、チームだ。一人一人が、信頼し合えなければ、意味がない」
「......」
「これから、訓練を始める。新しい仲間と、古い仲間が、一緒に訓練する」
「了解」
「俺たちは、一つのチームになる。それが、目標だ」
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新しい仲間たちが、頷いた。
古い仲間たちも、頷いた。
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突撃隊は、成長していく。




