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The Man Who Would Not Die: 死んでたまるか  作者: Operator3118
第3章 聖域
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第13話 見学

二週間後。


 バンコク。スワンナプーム国際空港。


---


 六人の候補者が、到着した。


---


 レイチェル・モーガン。元CIA。情報管制官候補。


 ハンス・ミュラー。元ドイツ連邦軍大佐。参謀候補。


 キム・スヨン。元韓国軍。通信要員候補。


 アブドゥル・ハッサン。元エジプト軍。戦闘要員候補。


 ピーター・オコンクォ。元ナイジェリア軍医。医療要員候補。


 もう一人、コンゴで見つけた男。ジャン=バティスト・ンゴマ。元コンゴ軍。戦闘要員候補。


---


 柏木とハーパーが出迎えた。


 「ようこそ、タイへ」


 「長旅だった」


 ミュラーが言った。


 「疲れただろう。だが、今日中に拠点を見せたい」


 「今日中に?」


 「そうだ。時間がない」


---


---


 バンコク郊外。


 突撃隊の拠点。


---


 六人の候補者が、施設を見学していた。


---


 「ここが訓練場だ」


 柏木が説明した。


 広大な敷地。射撃場、近接戦闘訓練場、障害物コース。


 「本格的だな」


 アブドゥルが言った。


 「本格的だ。毎日、ここで訓練している」


---


 「車両庫」


 白いハンヴィーが四台、並んでいた。


 「M1114か」


 ミュラーが目を細めた。


 「武装は」


 「GAU-19、M2、Mk19。それぞれ搭載」


 「重武装だな」


 「重武装だ。相手も重武装だからな」


---


 「ヘリポート」


 UH-1が駐機していた。


 「UH-1か。古いが、信頼性がある」


 ピーターが言った。


 「そうだ。イーゴリが整備している」


---


 「通信指令室」


 川島とカルロスが作業していた。


 モニターが並んでいる。地図。通報状況。シフト表。


 「整理されているな」


 スヨンが言った。


 「一ヶ月前は、もっと混乱していた」


 川島が答えた。


 「ハーパー少佐とルノー大尉が来てから、改善された」


---


 「医務室」


 アレクセイが器具を整備していた。


 手術台。麻酔機。心電図モニター。


 「本格的な手術もできるのか」


 ピーターが驚いた。


 「できる。戦場では、病院に搬送する時間がないことがある」


 「分かる。俺もコンゴで、野戦手術を何度もやった」


 アレクセイの目が光った。


 「経験があるのか」


 「ある。百回以上」


 「......いい。お前が来れば、助かる」


---


---


 見学が終わった。


 会議室に集まった。


---


 「質問はあるか」


 柏木が聞いた。


---


 ミュラーが手を挙げた。


 「指揮系統を確認したい」


 「指揮系統?」


 「誰が最終決定権を持つのか」


 「俺だ。現場では、俺が全ての決定を下す」


 「上層部の干渉は」


 「ない。局長は信頼してくれている。作戦には口出ししない」


 「政治家は」


 「いない。王室直轄だ。政治家は関与できない」


 ミュラーは頷いた。


 「いい。それが聞きたかった」


---


 レイチェルが聞いた。


 「情報収集の方法は」


 「今は、各自が独自に集めている。体系化されていない」


 「だから、私が必要なのか」


 「そうだ。お前が来れば、情報を一元管理できる」


 「CIAのような組織的な情報収集は」


 「ない。だが、現場に近い情報がある。お前がそれを整理すれば、効果は大きい」


 レイチェルは考えていた。


 「......面白いかもしれない」


---


 スヨンが聞いた。


 「女性隊員は、本当に対等に扱われているのか」


 サラが答えた。


 「対等よ。私は十二年、柏木と一緒に戦ってきた。一度も、女だからと軽く扱われたことはない」


 マリーが続けた。


 「私は狙撃手だ。戦闘では、最も重要な役割を担っている。性別は関係ない」


 ファリダーが言った。


 「私は新人です。でも、先輩たちは、いつも私を尊重してくれます」


 スヨンの表情が少し和らいだ。


 「......韓国軍とは、違うのね」


 「違う。ここでは、能力だけが評価される」


---


 アブドゥルが聞いた。


 「給料は」


 「高くはない。だが、生活には困らない」


 「金のためではないのか」


 「金のためではない。俺たちは、正義のために戦っている」


 「正義か」


 「そうだ。信じられないか」


 「......いや、信じる。お前たちの目を見れば、分かる」


---


 ピーターが聞いた。


 「負傷者は、どのくらい出る」


 「多くはない。だが、ゼロではない」


 アレクセイが答えた。


 「最も重い負傷は」


 「銃創。爆発による裂傷。過去に、重傷者が三人出た」


 「死者は」


 「いない。今のところは」


 「今のところは、か」


 「そうだ。いつか、出るかもしれない。それが、俺たちの仕事だ」


 ピーターは頷いた。


 「覚悟はできている」


---


 ンゴマが聞いた。


 「コンゴとは、何が違う」


 「何が違うと思う」


 ニコライが逆に聞いた。


 「......分からない。だから聞いている」


 「コンゴでは、誰のために戦っていた」


 「金を払う奴のために」


 「ここでは、誰のために戦う」


 「......タイの人々のために?」


 「そうだ。それが違いだ」


 ンゴマは黙っていた。


 「......悪くないな」


---


---


 夜。


 拠点の食堂。


---


 候補者たちと隊員たちが、一緒に食事をしていた。


 タイ料理。パッタイ、トムヤムクン、グリーンカレー。


---


 「辛いな」


 ミュラーが水を飲んだ。


 「慣れる」


 ニコライが笑った。


 「俺も最初は、舌が焼けるかと思った」


 「今は」


 「今は、辛くないと物足りない」


---


 「ビールは」


 アブドゥルが聞いた。


 「ある。シンハー、チャーン、リオ。どれがいい」


 「全部試す」


 「いいな。その姿勢」


---


 レイチェルはサラと話していた。


 「あなたは、どのくらいここにいるの」


 「最初からよ。特捜班の頃から」


 「特捜班?」


 「今の突撃隊の前身。NGOから始まったの」


 「NGOから?」


 「長い話よ。でも、簡単に言うと、私たちは、どこにも居場所がなかった人間の集まり」


 「居場所がなかった」


 「そう。軍を追われた人、組織に裏切られた人、正義を失った人。みんな、傷ついていた」


 「......」


 「でも、ここで、もう一度立ち上がれた。柏木が、私たちを集めてくれた」


---


 レイチェルは柏木を見た。


 柏木は、ンゴマと話していた。


 笑っていた。


 「......あの人、笑うのね」


 「笑うわよ。最近は、少しずつ。昔は、もっと無愛想だった」


 「何があったの」


 「色々あったのよ。でも、今は、変わった」


---


---


 翌日。


 候補者たちに、決断を求めた。


---


 「どうする」


 柏木が聞いた。


 「来るか、来ないか」


---


 ミュラーが最初に答えた。


 「来る」


 「理由は」


 「政治家の干渉がない。それだけで、十分だ」


 「分かった。歓迎する」


---


 レイチェルが答えた。


 「来る」


 「理由は」


 「......ここでなら、私の能力を、人を守るために使える気がする」


 「使える。保証する」


 「分かった。やってみる」


---


 スヨンが答えた。


 「来ます」


 「理由は」


 「女性が対等に扱われる場所。それを、自分の目で確かめた」


 「確かめたか」


 「はい。ここなら、やっていける」


---


 アブドゥルが答えた。


 「来る」


 「理由は」


 「金のためではなく、正義のために戦える。それが、俺の求めていたものだ」


---


 ピーターが答えた。


 「来る」


 「理由は」


 「アレクセイと話した。彼は、本物の医者だ。彼と一緒に働きたい」


---


 ンゴマが答えた。


 「来る」


 「理由は」


 「......分からない。だが、ここには、何かがある。コンゴにはなかった何かが」


 「何だと思う」


 「......目的。かもしれない」


---


 六人全員が、来ることを決めた。


---


---


 「ようこそ、王室犯罪対策局へ」


 柏木が言った。


 「これから、お前たちは、俺たちの仲間だ」


 「光栄だ」


 ミュラーが答えた。


 「光栄ではない。責任だ」


 「責任か」


 「そうだ。俺たちは、タイの人々を守る責任がある。お前たちにも、その責任を負ってもらう」


 「了解した」


---


 新しい仲間が、六人。


 合計、二十六人になった。


 目標まで、あと十八人。


---


---


 三ヶ月後。


 さらに人員が増えた。


---


 イギリスから、元SASの兵士が二人。


 オーストラリアから、元特殊部隊の兵士が二人。


 カナダから、元JTF2の兵士が一人。


 ポーランドから、元GROMの兵士が一人。


 ブラジルから、元BOPEの兵士が二人。


 フィリピンから、元特殊部隊の兵士が一人。


 そして、韓国から、スヨンの紹介で通信要員が二人。


---


 合計、十三人が追加された。


---


 「これで、三十九人だ」


 ハーパーが言った。


 「目標は四十四人だった」


 「あと五人」


 「あと五人だ」


---


 「半年で、三十九人」


 ルノーが言った。


 「よくやった」


 「よくやった。だが、まだ足りない」


 「足りないが、形にはなってきた」


---


 柏木は全員を見渡した。


 「いいか、聞け」


 全員が注目した。


 「俺たちは、三十九人になった。最初は、十六人だった」


 「......」


 「倍以上だ。だが、数が増えただけでは意味がない」


 「意味がない?」


 「そうだ。俺たちは、チームだ。一人一人が、信頼し合えなければ、意味がない」


 「......」


 「これから、訓練を始める。新しい仲間と、古い仲間が、一緒に訓練する」


 「了解」


 「俺たちは、一つのチームになる。それが、目標だ」


---


 新しい仲間たちが、頷いた。


 古い仲間たちも、頷いた。


---


 突撃隊は、成長していく。

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