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The Man Who Would Not Die: 死んでたまるか  作者: Operator3118
第3章 聖域
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第12話 世界

人探しの旅が始まった。


 六つのチームが、世界各地に散った。


---


---


 アメリカ。ワシントンD.C.。


---


 柏木とジョンソンは、元CIA職員と会っていた。


 退役軍人が集まるバー。


---


 「情報管制官を探している」


 ジョンソンが言った。


 「情報管制官?」


 相手は五十代の男。元CIAの分析官。


 「情報収集と分析の専門家だ」


 「タイで?」


 「そうだ」


 「......CIAを辞めた人間は、大抵、民間のセキュリティ会社に行く」


 「金のためにか」


 「金のためだ。タイで正義のために働く? そんな奇特な奴は、少ないぞ」


---


 「心当たりはないか」


 柏木が聞いた。


 「......一人、いるかもしれない」


 「誰だ」


 「レイチェル・モーガン。元CIAの情報分析官」


 「今は」


 「辞めた。理由は知らない。だが、業界から完全に消えた」


 「どこにいる」


 「分からない。ただ、最後に聞いた話では、シアトルにいるらしい」


 「シアトルか」


 「そこで、何か......ボランティアをしているらしい」


 「ボランティア?」


 「ああ。難民支援か何か」


---


---


 シアトル。


 難民支援センター。


---


 柏木とジョンソンは、センターの前に立っていた。


 古いビル。壁にはペンキが剥げている。


---


 中に入った。


 子供たちが走り回っている。


 様々な言語が飛び交っている。


---


 「レイチェル・モーガンさんはいますか」


 受付の女性に聞いた。


 「レイチェル? 奥にいるわ。子供たちに英語を教えているの」


---


 奥の教室に向かった。


 ドアが開いていた。


---


 女性がいた。


 四十代前半。茶色の髪。眼鏡。


 子供たちに囲まれて、絵本を読んでいた。


---


 「レイチェル・モーガンさん」


 ジョンソンが声をかけた。


 女性が振り向いた。


 目が鋭くなった。一瞬だけ。


 「誰」


 「話がある。CIAの話じゃない。別の話だ」


---


---


 三十分後。


 近くのカフェ。


---


 「タイで情報管制官?」


 レイチェルが言った。


 「そうだ」


 「なぜ私に」


 「お前が優秀だったからだ。CIA時代、中東の分析で何度も的中させた」


 「......誰から聞いた」


 「元同僚だ」


---


 レイチェルはコーヒーを飲んだ。


 「私は、もうあの世界に戻る気はない」


 「なぜ辞めた」


 「......」


 「答えたくなければ、いい」


 「......いや、言う」


---


 レイチェルは窓の外を見た。


 「私の分析が、空爆の根拠に使われた」


 「......」


 「ターゲットはテロリストのアジトだった。少なくとも、そう思っていた」


 「違ったのか」


 「違った。結婚式だった。民間人が四十七人死んだ」


 「......」


 「私の分析が、間違っていた。四十七人が、私のせいで死んだ」


---


 沈黙。


---


 「それで、辞めたのか」


 「辞めた。もう、情報分析はしたくない。私の分析が、また誰かを殺すかもしれない」


 「......」


---


 柏木が口を開いた。


 「俺も、人を殺した」


 レイチェルが柏木を見た。


 「部下を三人、俺の判断ミスで死なせた。ウクライナで」


 「......」


 「それ以来、俺も壊れた。感情を殺して、無愛想になった」


 「......」


 「だが、タイで変わった。人を守るために戦えるようになった」


---


 「守る?」


 「そうだ。殺すためじゃない。守るために」


 「情報分析で、人を守れる?」


 「守れる。お前の分析で、俺たちは敵を正確に把握できる。無駄な戦闘を避けられる。民間人を巻き込まずに済む」


 「......」


 「お前の能力は、人を殺すためではなく、人を守るために使える」


---


 レイチェルは黙っていた。


 長い沈黙。


---


 「......考えさせて」


 「分かった。連絡先を渡す」


 「一週間。一週間で決める」


 「待っている」


---


---


 ヨーロッパ。フランス。パリ。


---


 マリーとルノーは、元フランス軍の将校と会っていた。


 参謀を探している。


---


 「参謀か」


 相手は六十代の男。元陸軍大佐。


 「作戦立案の専門家だ」


 「タイで働く? フランス人が?」


 「フランス人でなくてもいい。フランス軍で参謀経験がある人間なら」


---


 「難しいな」


 元大佐は言った。


 「参謀は、軍の中枢だ。辞めても、国に留まることが多い」


 「海外に出た人間は」


 「いないこともない。だが......」


 「だが?」


 「参謀経験があって、かつ海外で働く意思がある人間。しかも、正義のために動ける人間」


 「いないか」


 「一人だけ、心当たりがある」


 「誰だ」


---


 「ハンス・ミュラー。ドイツ人だ」


 「ドイツ人?」


 「元ドイツ連邦軍の参謀。大佐まで昇進した」


 「優秀だったのか」


 「優秀だった。だが、上層部と対立して、辞めた」


 「何で対立した」


 「アフガン撤退の方針を巡って。彼は、もっと計画的な撤退を主張したが、政治家が聞かなかった」


 「......」


 「結果、撤退は混乱した。彼は責任を感じて、辞めた」


 「今は」


 「ベルリンにいるはずだ。軍事コンサルタントをしている。だが、不満を抱えているらしい」


---


---


 ドイツ。ベルリン。


---


 マリーとルノーは、オフィスビルにいた。


 「ミュラー軍事コンサルティング」


 小さな事務所。


---


 ドアをノックした。


 「入れ」


 声が聞こえた。


---


 中に入った。


 男がいた。


 五十代後半。灰色の髪。眼鏡。几帳面そうな顔。


 ハンス・ミュラー。


---


 「何の用だ」


 「話がある」


 ルノーが言った。


 「軍事コンサルティングの依頼か」


 「違う。人材募集だ」


 「人材募集?」


---


 ルノーは説明した。


 タイの王室犯罪対策局。突撃隊。参謀が必要だということ。


---


 ミュラーは黙って聞いていた。


 「......タイか」


 「そうだ」


 「なぜ、私に」


 「お前が優秀だからだ。アフガンでの作戦立案、評価が高かった」


 「評価が高くても、結果は最悪だった」


 「政治家のせいだ」


 「政治家のせいでも、軍人の責任だ」


---


 マリーが言った。


 「タイでは、政治家の干渉がない」


 ミュラーが顔を上げた。


 「ない?」


 「ない。王室直轄だ。政治家は口出しできない」


 「......」


 「あなたの作戦立案が、そのまま実行される。政治家に邪魔されない」


---


 ミュラーは考え込んでいた。


 「......興味深いな」


 「興味があるか」


 「ある。だが、すぐには決められない」


 「考える時間が必要か」


 「必要だ。一週間」


 「分かった」


---


---


 アジア。韓国。ソウル。


---


 川島とファリダーは、元韓国軍の通信士官と会っていた。


---


 「通信要員を三人探している」


 川島が言った。


 「三人か。多いな」


 「多い。だが、必要だ」


---


 相手は四十代の男。元韓国陸軍の通信将校。


 「韓国軍で通信をやっていた人間は、大抵、サムスンかLGに行く」


 「民間企業に」


 「そうだ。給料がいいからな」


 「タイで働く意思がある人間は」


 「......少ないだろうな」


---


 「心当たりはないか」


 ファリダーが聞いた。


 「一人だけ。女だが」


 「女でも構わない」


 「キム・スヨン。元陸軍の通信士官。優秀だった」


 「今は」


 「辞めた。セクハラに遭って」


 「......」


 「軍を訴えたが、もみ消された。それで、完全に嫌気がさして辞めた」


 「どこにいる」


 「ソウルにいるはずだ。だが、連絡先は知らない」


---


---


 三日後。


 ソウル市内のカフェ。


---


 キム・スヨンは、三十代前半の女性だった。


 短い黒髪。鋭い目。


---


 「タイで通信士官?」


 「そうです」


 川島が言った。


 「なぜ私に」


 「あなたが優秀だったからです」


 「優秀でも、軍には残れなかった」


 「軍ではない。別の組織です」


---


 ファリダーが説明した。


 王室犯罪対策局。突撃隊。女性隊員もいること。


---


 「女性隊員がいる?」


 「います。私もそうです」


 スヨンの目が少し変わった。


 「セクハラは」


 「ありません。隊長が許しません」


 「......」


 「私たちは、仲間です。性別は関係ありません」


---


 スヨンは考えていた。


 「......韓国では、もう働きたくない」


 「分かります」


 「でも、タイで働く? 言葉も分からないのに?」


 「言葉は覚えられます。私も、タイ語を覚えました」


 川島が言った。


 「......」


---


 「考えさせてください」


 スヨンが言った。


 「一週間でいいです」


 「分かりました」


---


---


 アフリカ。ケニア。ナイロビ。


---


 ニコライとマルティネスは、元傭兵たちと会っていた。


 戦闘要員を探している。


---


 「戦闘要員を十三人探している」


 ニコライが言った。


 「十三人? 多いな」


 相手は元南アフリカ軍の傭兵。


 「多い。だが、必要だ」


---


 「アフリカには、傭兵がたくさんいる」


 傭兵が言った。


 「だが、『正義のために戦える人間』となると、話は別だ」


 「どういう意味だ」


 「傭兵は、金のために戦う。正義なんて、考えない」


 「正義を考える傭兵はいないのか」


 「いないこともない。だが、少ない」


---


 「心当たりは」


 マルティネスが聞いた。


 「何人か、いる」


 「名前を」


 「アブドゥル・ハッサン。元エジプト軍。今は傭兵をやっているが、金よりも使命を重視する男だ」


 「他には」


 「ピーター・オコンクォ。ナイジェリア人。元軍医だが、戦闘もできる」


 「医療要員にもなるか」


 「なる。優秀だ」


---


 「連絡は取れるか」


 「取れる。だが、会うには、彼らがいる場所に行く必要がある」


 「どこだ」


 「コンゴだ。今、そこで仕事をしている」


 「コンゴか」


 「行けるか」


 「行く」


---


---


 一ヶ月後。


 バンコク。


---


 各チームが戻ってきた。


 報告会議。


---


 「成果を報告する」


 ハーパーが言った。


---


 「アメリカ。情報管制官候補、一人。レイチェル・モーガン。元CIA」


 「返事は」


 「待ち。だが、脈はある」


---


 「ヨーロッパ。参謀候補、一人。ハンス・ミュラー。元ドイツ連邦軍大佐」


 「返事は」


 「待ち。興味を示している」


---


 「アジア。通信要員候補、一人。キム・スヨン。元韓国軍」


 「返事は」


 「待ち」


---


 「アフリカ。戦闘要員候補、二人。医療要員候補、一人」


 「合計三人か」


 「三人だ。全員、会って話した。反応は良好」


---


 「合計、六人の候補か」


 柏木が言った。


 「六人だ。目標は二十四人」


 「まだ十八人足りない」


 「足りない」


 「だが、スタートとしては悪くない」


---


 「次のステップは」


 ルノーが聞いた。


 「候補者を、実際にタイに呼ぶ。見学させる。俺たちの活動を見せる」


 「見学」


 「そうだ。言葉で説明するより、見せた方が早い」


 「了解」


---


 「それと」


 柏木は続けた。


 「探索は続ける。六人では足りない。もっと探す」


 「どこを」


 「まだ行っていない場所。オーストラリア、カナダ、イギリス、日本」


 「日本?」


 「日本は難しいと言ったな。だが、諦めない。一人くらい、いるかもしれない」


 「......」


---


 「半年で二十四人」


 ハーパーが言った。


 「残り五ヶ月。まだ時間はある」


 「ある。だが、のんびりはできない」


 「できない」


---


 「では、続けよう」


 柏木が立ち上がった。


 「世界中から、仲間を集める」


 「了解」


---


 人探しの旅は、続く。

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