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The Man Who Would Not Die: 死んでたまるか  作者: Operator3118
第3章 聖域
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第11話 本領

深夜二時。


 UH-1がプーケットに向かって飛んでいた。


---


 機内には、戦闘要員が乗っていた。


 柏木、ニコライ、ジョンソン、マルティネス、ヨナタン、サラ、ファリダー、川島。


 八人。


 マリーは別のヘリで、狙撃ポイントに向かっていた。


---


 ハーパーとルノーは、バンコクの指揮所にいた。


 通信で状況を把握している。


---


 「状況を確認する」


 柏木がヘッドセット越しに言った。


 「リゾートホテル『パラダイス・ベイ』。五階建て。犯人は推定十人。自動小銃で武装。人質は五十人以上。一階のロビーと二階のレストランに集められている」


 「犯人の目的は」


 「不明。身代金要求はまだ来ていない。テロの可能性もある」


 「了解」


---


 ハーパーの声が入った。


 「柏木、作戦は」


 「屋上からの降下突入。マリーが外から狙撃支援。俺たちが上から下へ制圧していく」


 「下から上じゃなく、上から下か」


 「そうだ。人質は一階と二階に集中している。上から制圧すれば、犯人を下に追い込める」


 「追い込んで、どうする」


 「逃げ場をなくす。外にはマリーがいる。出口を塞いで、投降させる」


 「了解。気をつけろ」


 「了解」


---


---


 午前二時三十分。


 ホテル上空。


---


 UH-1がホバリングした。


 ロープが降ろされた。


---


 「降下開始」


---


 柏木が最初に降りた。


 ロープを滑り降り、屋上に着地。


 すぐに周囲を確認。


 「クリア」


---


 次々と隊員が降りてきた。


 ニコライ。ジョンソン。マルティネス。ヨナタン。サラ。ファリダー。川島。


 八人が屋上に集結した。


---


 「マリー、位置は」


 「東のビル。五階。全ての窓が見える」


 「犯人の位置は」


 「五階に二人。四階に一人。三階に二人。二階に三人。一階に二人。合計十人」


 「人質は」


 「一階ロビーに約三十人。二階レストランに約二十人」


 「了解」


---


 「作戦開始」


---


---


 屋上のドアを開けた。


 階段がある。


 五階へ。


---


 柏木が先頭。


 ベレッタを構えている。


 静かに階段を下りる。


---


 五階。


 廊下。


 犯人が二人、見張りをしている。


---


 柏木は手信号を出した。


 「二人。左と右」


---


 ニコライとヨナタンが前に出た。


---


 「三、二、一」


---


 同時に飛び出した。


 ニコライが左の犯人に突進。


 銃を叩き落とし、首を絞めた。


 三秒で気絶。


---


 ヨナタンが右の犯人に接近。


 銃口を逸らし、肘を顎に。


 倒れた。


---


 「五階クリア。二人確保」


---


---


 四階。


 犯人は一人。


 部屋の中にいる。


---


 ドアの前に立った。


 ヨナタンがブリーチングショットガンを構えた。


 「いくぞ」


---


 ドアを吹き飛ばした。


 閃光弾を投げた。


 爆発。白い光。


---


 柏木が突入した。


 犯人が目を押さえている。


 近づいた。


 銃を奪った。


 後頭部に手刀。


 気絶。


---


 「四階クリア。一人確保」


---


---


 三階。


 犯人は二人。


 廊下の両端に分かれている。


---


 「挟み撃ちだな」


 ジョンソンが言った。


 「サラ、ファリダー、右を頼む。俺とニコライで左」


 「了解」


---


 同時に突入した。


---


 左側。


 犯人がAKを構えた。


 発砲。


 弾がニコライの横を抜けた。


 ニコライは止まらなかった。


 距離を詰めた。


 銃身を掴んだ。


 捻り上げた。


 犯人の指が折れた。


 悲鳴。


 ニコライの拳が、犯人の顔面に叩き込まれた。


 吹き飛んだ。


---


 右側。


 犯人が撃とうとした。


 サラが先に撃った。


 足を。


 犯人が倒れた。


 ファリダーが駆け寄り、手錠をかけた。


---


 「三階クリア。二人確保」


---


---


 二階。


 人質がいる。


 慎重に行く必要がある。


---


 階段を下りた。


 レストランの入口が見えた。


 中に、人質約二十人。


 犯人が三人、銃を構えている。


---


 「マリー、二階の窓から犯人は見えるか」


 「見える。三人とも」


 「撃てるか」


 「二人は撃てる。一人は人質の陰にいる」


 「二人を頼む。残り一人は俺がやる」


 「了解」


---


 「三、二、一、実行」


---


 窓ガラスが割れた。


 二人の犯人が同時に倒れた。


 マリーの狙撃。


 正確無比。


---


 同時に、柏木が突入した。


 残りの一人。


 人質を盾にしようとしている。


---


 「動くな! 撃つぞ!」


 犯人が叫んだ。


---


 柏木は止まらなかった。


 走った。


---


 犯人が発砲した。


 柏木は横に跳んだ。


 弾が空を切った。


---


 距離を詰めた。


 犯人が再び撃とうとした。


 遅い。


---


 柏木の手が、犯人の銃を掴んだ。


 上に逸らした。


 銃声。天井に穴が開いた。


---


 銃を奪った。


 逆手で持ち、グリップで犯人の顎を打った。


 犯人が崩れ落ちた。


---


 「二階クリア。三人確保。人質二十人、全員無事」


---


---


 一階。


 最後のフロア。


 犯人は二人。人質は三十人。


---


 階段を下りた。


 ロビーが見えた。


---


 犯人二人が、人質の前に立っている。


 銃を構えている。


 緊張している。


---


 「上から来たぞ!」


 犯人が叫んだ。


 「出てこい! 出てこないと人質を殺す!」


---


 柏木は階段の影から声を出した。


 「投降しろ。お前たちの仲間は、全員確保した」


 「嘘だ!」


 「嘘じゃない。五階から二階まで、八人全員だ」


 「......」


 「投降すれば、命は助かる。抵抗すれば、死ぬ」


---


 犯人たちが顔を見合わせた。


 迷っている。


---


 その隙に、マルティネスと川島が別の入口から回り込んでいた。


---


 「三、二、一」


---


 閃光弾が投げ込まれた。


 爆発。白い光。


---


 犯人たちが目を押さえた。


 マルティネスと川島が飛び出した。


 銃を叩き落とした。


 地面に押し倒した。


 手錠をかけた。


---


 「一階クリア。二人確保。人質三十人、全員無事」


---


---


 「作戦完了」


 柏木が報告した。


 「犯人十人、全員確保。人質五十人、全員無事。味方の負傷者なし」


---


 時刻、午前三時十五分。


 作戦開始から、四十五分。


---


---


 バンコク。指揮所。


---


 ハーパーとルノーは、通信を聞いていた。


 モニターには、ヘリからの映像が映っていた。


---


 「......すごいな」


 ハーパーが呟いた。


 「すごい」


 ルノーが同意した。


---


 「十人の武装犯を、四十五分で全員確保」


 「人質五十人、全員無事」


 「味方の負傷者なし」


 「完璧だ」


---


 ハーパーは椅子に座った。


 「外人部隊でも、ここまでの精度は出せない」


 ルノーが言った。


 「米軍の特殊部隊でも、難しいだろう」


 ハーパーが答えた。


---


 「彼らは、本物だ」


 ルノーが言った。


 「ああ。戦闘に関しては、世界最高峰だ」


 「だから、局長は彼らを集めたんだろう」


 「そうだな」


---


 だが、ハーパーの顔は曇っていた。


 「問題がある」


 「何だ」


 「人員だ」


---


 ルノーも頷いた。


 「分かっている」


 「今回、八人で突入した」


 「ああ」


 「タイ全土をカバーするには、足りない」


 「足りない」


---


 ハーパーは立ち上がった。


 「考えてみろ。今回、プーケットで事件が起きた」


 「ああ」


 「同時に、バンコクで別の事件が起きたらどうする」


 「......対応できない」


 「そうだ。全員がプーケットに行っている。バンコクには誰もいない」


---


 「今回は、たまたま一件だけだった」


 ルノーが言った。


 「たまたまだ。運が良かった」


 「運に頼る作戦は、作戦ではない」


 「その通りだ」


---


 ハーパーは壁の地図を見た。


 タイ全土。五十一万平方キロメートル。


 「根本的に、人員が少なすぎる」


 「何人必要だと思う」


 「最低でも、三チーム。戦闘要員だけで二十四人。それに通信、医療、パイロット、整備......」


 「合計四十人以上か」


 「そうだ。今の倍以上だ」


---


 ルノーは溜息をついた。


 「どこから集める」


 「分からない。だが、集めなければならない」


 「また、世界中を探し回るのか」


 「探し回るしかない」


---


---


 翌日。


 プーケットから戻った柏木たちを、ハーパーとルノーが出迎えた。


---


 「お疲れ様」


 ハーパーが言った。


 「ああ」


 「見事だった。四十五分で完全制圧」


 「普通だ」


 「普通じゃない。あれは、世界最高レベルの作戦だ」


 「......そうか」


---


 ルノーが言った。


 「一つ、話がある」


 「何だ」


 「人員の問題だ」


---


 柏木の顔が引き締まった。


 「分かっている」


 「分かっているのか」


 「ああ。今回は運が良かった。プーケットだけで済んだ」


 「そうだ」


 「同時に別の事件が起きていたら、対応できなかった」


 「その通りだ」


---


 ハーパーが言った。


 「柏木、正直に聞く」


 「何だ」


 「今の人員で、タイ全土をカバーできると思うか」


 「......思わない」


 「何人必要だ」


 「......分からない。だが、今の倍は必要だろう」


 「俺たちも同じ結論だ」


---


 柏木は溜息をついた。


 「また、人探しか」


 「そうだ」


 「戦闘要員を」


 「戦闘要員だけじゃない。通信、医療、パイロット、整備、全てだ」


 「どこから集める」


 「分からない」


 「分からないが、集めるしかない」


 「そうだ」


---


 ニコライが言った。


 「終わりがないな」


 「終わりがない」


 「麻薬王を倒して、政治家を逮捕して、組織を改革して、将校を探して、また人探し」


 「そうだ」


 「......まあ、暇よりはマシか」


 「マシだな」


---


 ジョンソンが笑った。


 「俺たちは、どこまでも戦い続けるのか」


 「戦い続ける」


 「いつまで」


 「タイが平和になるまで」


 「平和になるのか」


 「分からない。だが、諦めない」


---


 柏木は全員を見渡した。


 「一つ、言っておく」


 「何だ」


 「人員が増えても、俺たちの役割は変わらない。最前線で戦う。それだけだ」


 「了解」


 「新しい仲間が来たら、俺たちが鍛える。俺たちと同じレベルまで」


 「了解」


 「簡単じゃない。だが、やるしかない」


 「了解」


---


 ハーパーが言った。


 「人員の募集計画を立てる」


 「頼む」


 「条件も整理する。どんな人材が必要か、何人必要か、どこから集めるか」


 「ああ」


 「一週間後に、提案する」


 「待っている」


---


---


 夜。


 拠点の屋上。


---


 柏木は一人で煙草を吸っていた。


 バンコクの夜景が広がっている。


---


 サラが来た。


 「考え事?」


 「少し」


 「何を」


 「人員のことだ」


 「足りないわね」


 「足りない」


---


 サラは柏木の隣に立った。


 「私たちだけでは、限界がある」


 「ある」


 「でも、私たちだけでやってきた」


 「やってきた」


 「これからも、やっていける」


 「......」


---


 柏木は煙草を吸った。


 「俺たちは、強い」


 「強いわ」


 「だが、強いだけでは、全てを守れない」


 「......」


 「人員が必要だ。仲間が必要だ。俺たちと同じ志を持つ人間が」


 「見つかるわ」


 「見つかるか」


 「見つかる。私たちが見つかったように」


---


 柏木は少し笑った。


 「そうだな」


 「そうよ」


 「お前は、いつも前向きだな」


 「前向きじゃないと、やっていけないもの」


 「......そうだな」


---


 夜風が吹いた。


 煙が流れていった。


---


 「さて、寝るか」


 柏木が言った。


 「明日も、仕事がある」


 「あるわね」


 「日常任務だ」


 「日常任務」


 「SWATだな」


 「SWATね」


---


 二人は笑った。


 屋上を後にした。


---


 戦いは続く。


 人員は足りない。


 だが、諦めない。


 それが、突撃隊だ。

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