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The Man Who Would Not Die: 死んでたまるか  作者: Operator3118
第3章 聖域
63/131

第4話 突入

作戦会議。


 全員が集まった。


 柏木が地図の前に立った。


---


 「作戦名、『白日』」


 「白日?」


 「白日の下に晒す。聖域を、日の光の下に引きずり出す」


 「派手にやるってことか」


 「そうだ。派手にやる」


---


 柏木は地図を指した。


 「正面から行く」


 沈黙。


 「正面から?」


 ニコライが聞いた。


 「そうだ。裏口から侵入するのは効率が悪い。三分の死角では、十五人は入れない」


 「だが、正面には重機関銃が」


 「潰す。最初に」


---


 「作戦は三段階に分かれる」


 柏木は説明を始めた。


---


 「第一段階。制圧射撃」


 「ハンヴィー四台で正門に接近する。距離八百メートルで停止」


 「八百メートル?」


 「DShKの有効射程外だ。だが、GAU-19とM2とMk19の射程内だ」


 「こっちは撃てるが、向こうは届かない」


 「そうだ」


---


 「一号車のGAU-19で監視塔を潰す。二号車のM2で正門の見張りを制圧。三号車のMk19で重機関銃陣地を吹き飛ばす」


 「同時にか」


 「同時にだ。一斉射撃で、敵の初動を潰す」


---


 「対空ミサイルは」


 マリーが聞いた。


 「お前が潰す」


 「私が」


 「ドローンの情報では、二基が確認されている。正門付近と中央倉庫の屋根だ」


 「千メートル以上あるな」


 「できるか」


 「できる」


 マリーは即答した。


 「制圧射撃が始まる前に、二基とも破壊する。射手を狙えば、ミサイルは使えなくなる」


 「頼む」


---


 「第二段階。突入」


 「制圧射撃で敵が混乱している間に、正門を突破する」


 「正門は鉄製だ。頑丈だぞ」


 「Mk19で吹き飛ばす。四十ミリ榴弾を十発も叩き込めば、開く」


 「豪快だな」


 「豪快でいい」


---


 「突入後、二手に分かれる」


 「アルファチームとブラボーチーム」


 「アルファは俺、ニコライ、ジョンソン、マルティネス、ヨナタン、サラ。車両整備場を叩く。装甲車を破壊する」


 「ブラボーは」


 「ファリダー、川島、カルロス、プラウィット。中央倉庫を制圧する。麻薬を確保」


 「六人と四人か」


 「マリーは狙撃支援を継続。アレクセイ、イーゴリ、ダニエル、エイブラハム、ナターシャ、ラッタナーは後方で待機。負傷者の搬送と、逃走者の阻止」


---


 「装甲車はどうやって破壊する」


 「AT4とカールグスタフ」


 「四台あるぞ」


 「AT4が四本。カールグスタフの弾が六発。十発あれば、四台は潰せる」


 「外さなければな」


 「外さない」


---


 「第三段階。確保」


 「装甲車を破壊したら、事務所棟に向かう。ウィワットを確保する」


 「殺すのか」


 「殺さない。生きたまま捕まえる。裁判にかける」


 「他の幹部は」


 「全員確保。抵抗すれば、無力化する」


---


 「質問は」


 沈黙。


 「では、作戦開始は明日、午前四時。夜明け前に終わらせる」


 「了解」


---


---


 翌日。午前三時三十分。


 サムットプラカーン県。


 聖域から二キロ離れた地点。


---


 四台の白いハンヴィーが並んでいた。


 月明かりに照らされて、幽霊のように白く浮かび上がっている。


---


 全員が装備を確認していた。


 白のBDU。白の防弾アーマー。白のタクティカルベスト。


 黒のニーパッド、エルボーパッド、ブーツ、グローブ。


 金のガルーダエンブレム。


---


 柏木は紅色のシュマグを首に巻いた。


 ベレッタM92FSをホルスターに収めた。


 「出発する」


---


 四台が動き始めた。


 ヘッドライトは消している。


 暗闘装置で前方を確認しながら、ゆっくりと進む。


---


 午前三時四十五分。


 聖域から八百メートルの地点。


 停止。


---


 「マリー、位置につけ」


 「了解」


 マリーは車両から降りた。


 白いギリースーツ。AI AXMCを背負っている。


 闇の中に消えていった。


---


 五分後。


 マリーから通信が入った。


 「位置についた。目標を視認」


 「対空ミサイルは」


 「二基とも見えている。射手は......正門付近に一人。中央倉庫の屋根に一人」


 「排除できるか」


 「できる」


 「合図を待て」


---


 柏木は時計を見た。


 午前三時五十五分。


 「全車両、戦闘準備」


---


 ジョンソンがGAU-19のハンドルを握った。


 「準備完了」


 ニコライがM2の安全装置を外した。


 「準備完了」


 マルティネスがMk19に弾帯を装填した。


 「準備完了」


---


 午前四時。


 「作戦開始」


---


 「マリー、撃て」


 マリーの声が返ってきた。


 「了解」


---


 千二百メートル先。


 正門付近の射手。


 マリーはスコープを覗いた。


 風速を計算した。


 呼吸を止めた。


 撃った。


---


 .338ラプアマグナム弾が飛んだ。


 一秒半後。


 射手が倒れた。


---


 すぐに次の目標。


 中央倉庫の屋根。


 千三百メートル。


 撃った。


 射手が倒れた。


---


 「対空ミサイル、排除完了」


 「よし。全車両、制圧射撃開始」


---


 三台のハンヴィーが、同時に火を噴いた。


---


 GAU-19。


 毎分二千発の.50口径弾が、監視塔に叩き込まれた。


 木造の塔が、粉砕された。


 二つ目の監視塔。


 粉砕。


 三つ目。


 粉砕。


 四つ目。


 粉砕。


---


 M2。


 正門の見張りに向かって、.50口径弾が降り注いだ。


 見張り小屋が吹き飛んだ。


 鉄門の周りにいた兵士たちが、散り散りに逃げた。


---


 Mk19。


 四十ミリ榴弾が、重機関銃陣地に着弾した。


 爆発。


 土嚢が吹き飛んだ。


 DShKが横転した。


 「命中!」


 マルティネスが叫んだ。


 次の陣地。


 着弾。爆発。


 「二つ目、破壊!」


---


 三十秒で、聖域の外周防御が崩壊した。


---


 「前進!」


 柏木が叫んだ。


 四台のハンヴィーが、正門に向かって突進した。


---


 敵が反撃してきた。


 AKの銃声が響く。


 弾がハンヴィーの装甲に当たった。


 弾かれた。


---


 「止まるな! 押し通れ!」


---


 正門まで百メートル。


 「マルティネス、門を開けろ!」


 「了解!」


 Mk19が正門に向かって撃った。


 四十ミリ榴弾が、鉄門に次々と着弾した。


 五発。六発。七発。


 門が歪んだ。


 八発目。


 門が吹き飛んだ。


---


 「突入!」


---


 四台のハンヴィーが、聖域に突入した。


---


 中は混乱していた。


 敵兵が走り回っている。


 銃声が飛び交う。


 悲鳴が上がる。


---


 「アルファチーム、俺に続け!」


 柏木の乗ったハンヴィーが、車両整備場に向かった。


 二号車が続く。


---


 「ブラボーチーム、中央倉庫へ!」


 三号車と四号車が、中央倉庫に向かった。


---


---


 車両整備場。


 装甲車が四台、並んでいた。


 BTR-60。ソ連製の装輪装甲車。


 乗員が慌てて乗り込もうとしていた。


---


 「させるか」


 柏木がハンヴィーから飛び降りた。


 「ニコライ!」


 「分かっている!」


---


 ニコライがカールグスタフを肩に担いだ。


 狙いをつけた。


 撃った。


---


 八十四ミリの弾頭が、一台目のBTR-60に直撃した。


 爆発。


 装甲車が炎に包まれた。


---


 ジョンソンがAT4を構えた。


 二台目のBTR-60。


 撃った。


 命中。爆発。


---


 三台目が動き出した。


 エンジンが唸る。


 「逃がすな!」


---


 マルティネスがAT4を撃った。


 命中。


 だが、装甲が厚い部分に当たった。


 貫通しなかった。


---


 「くそ!」


 BTR-60が旋回した。


 砲塔がこちらを向く。


 14.5ミリ機関砲。


---


 「伏せろ!」


 全員が地面に伏せた。


 機関砲が火を噴いた。


 弾がハンヴィーの上を通過した。


---


 柏木は走った。


 装甲車に向かって。


---


 「隊長!」


 川島が叫んだ。


---


 柏木は止まらなかった。


 弾が横を抜けた。


 構わない。


---


 装甲車との距離が縮まる。


 三十メートル。二十メートル。


---


 砲塔が柏木を追う。


 だが、近すぎた。


 仰角が足りない。


---


 十メートル。


 柏木は装甲車に飛び乗った。


---


 ハッチを開けようとした。


 ロックされている。


 「ヨナタン!」


---


 ヨナタンが走ってきた。


 ブリーチングショットガンを構えた。


 ハッチの蝶番を撃った。


 吹き飛んだ。


---


 柏木がハッチを開けた。


 中に敵がいる。


 三人。


---


 柏木はベレッタを抜いた。


 体を中に滑り込ませた。


 至近距離。


 撃った。一人。


 撃った。二人。


 三人目が銃を向けてきた。


 柏木は銃身を掴んだ。


 捻った。


 敵の指が折れた。


 悲鳴。


 肘を顎に叩き込んだ。


 気絶。


---


 「三台目、制圧!」


---


 四台目が逃げようとしていた。


 正門の方へ。


---


 ニコライがカールグスタフを再装填した。


 狙いをつけた。


 撃った。


---


 弾頭が、装甲車の後部に直撃した。


 エンジンが爆発した。


 装甲車が停止した。炎を上げている。


---


 「四台目、破壊!」


---


 「装甲車、全滅!」


 ジョンソンが叫んだ。


---


---


 同時刻。


 中央倉庫。


---


 ファリダーが先頭で突入した。


 HK416を構えている。


---


 倉庫の中は広かった。


 麻薬の袋が、山のように積まれている。


 「すごい量......」


---


 敵がいた。


 三十人以上。


 だが、混乱していた。


 外の爆発音で、パニックになっている。


---


 「王室犯罪対策局! 武器を捨てろ!」


 ファリダーが叫んだ。


---


 一人が銃を向けてきた。


 ファリダーは撃った。


 肩に命中。


 倒れた。


---


 「抵抗するな! 全員、地面に伏せろ!」


---


 川島とカルロスが援護射撃をした。


 威嚇射撃。天井に向けて。


 敵兵たちが、次々と武器を捨てた。


---


 「伏せろ! 手を頭の後ろに!」


---


 プラウィットがタイ語で叫んだ。


 「動くな! 撃つぞ!」


---


 五分で、中央倉庫を制圧した。


 確保者、三十七人。


 押収した麻薬は、数え切れないほどだった。


---


 「ブラボーより本部。中央倉庫、制圧完了」


 「了解。アルファは事務所棟に向かう」


---


---


 事務所棟。


 柏木たちが接近していた。


---


 三階建ての建物。


 窓から銃口が見えた。


 「抵抗する気だな」


---


 「マリー、三階の窓を頼む」


 「了解」


---


 千メートル離れた位置から、マリーが狙撃した。


 窓際にいた敵が倒れた。


 もう一人。


 倒れた。


---


 「突入する」


---


 ヨナタンがブリーチングショットガンで正面ドアを吹き飛ばした。


 柏木が最初に入った。


---


 一階。


 敵が八人。


 銃を構えている。


---


 柏木は走った。


 撃ちながら。


 一人が倒れた。


 二人目。


---


 ニコライが続いた。


 AK-103を撃ちながら。


 三人が倒れた。


---


 残りの敵が逃げようとした。


 ジョンソンが立ちはだかった。


 「どこへ行く」


 HK416の銃口が向けられている。


 敵は武器を捨てた。


---


 「一階、クリア!」


---


 階段を上がる。


 二階。


---


 敵が待ち構えていた。


 廊下の奥から、弾が飛んできた。


---


 柏木は壁に身を隠した。


 「閃光弾」


 サラが投げた。


---


 爆発。


 白い光が廊下を満たした。


---


 柏木が飛び出した。


 敵は目を押さえている。


 近づいた。


 銃を叩き落とした。


 膝を蹴った。


 倒れた。


 次の敵。


 肘を顔面に。


 倒れた。


---


 「二階、クリア!」


---


 三階へ。


 最後のフロア。


 ウィワットがいるはずだ。


---


 階段を上がった。


 廊下の奥に、大きなドアがあった。


 社長室。


---


 「ヨナタン」


 「了解」


 ブリーチングショットガンがドアを吹き飛ばした。


---


 柏木が突入した。


---


 広い部屋だった。


 豪華な家具。絵画。ワインセラー。


 窓際に、男が立っていた。


---


 ウィワット・チャロエンスック。


 六十代。痩せた体。鋭い目。


 拳銃を持っていた。


---


 「王室犯罪対策局か」


 ウィワットは笑った。


 「白い制服とは、洒落ている」


---


 「武器を捨てろ」


 柏木が言った。


---


 「捨てない」


 ウィワットは銃を構えた。


 だが、柏木に向けていなかった。


 自分のこめかみに。


---


 「死ぬのか」


 「捕まるよりマシだ」


 「裁判を受けろ。罪を償え」


 「償う? 私が?」


 ウィワットは笑った。


 「私は、この国の半分を買収してきた。政治家、軍、警察、企業。全員、私の金で動いていた」


 「だから何だ」


 「だから、私は罪など犯していない。この国のシステムそのものが、私なのだ」


 「お前は犯罪者だ。それだけだ」


---


 ウィワットの指が、引き金にかかった。


 「さよならだ」


---


 柏木は動いた。


 距離は五メートル。


 踏み込んだ。


 一歩。二歩。三歩。


---


 ウィワットが引き金を引こうとした。


 遅い。


---


 柏木の手が、ウィワットの手首を掴んだ。


 銃口を逸らした。


 銃声。


 弾は天井に当たった。


---


 柏木は手首を捻った。


 拳銃が落ちた。


 ウィワットの腕を背中に回した。


 床に押し倒した。


---


 「お前は死なせない」


 柏木の声は静かだった。


 「裁判を受けろ。全てを白日の下に晒せ」


 「......」


 「お前の金で動いていた連中も、道連れだ」


---


 ウィワットは動かなかった。


 「......負けたか」


 「負けた。終わりだ」


---


 「アルファより全チーム。ターゲット確保。作戦完了」


---


---


 午前五時三十分。


 夜が明け始めていた。


---


 聖域は、制圧された。


---


 戦果。


 敵の死者:二十三人。


 敵の負傷者:五十八人。


 確保者:二百十九人。


 逃走者:約五十人(後日、追跡予定)。


---


 押収品。


 麻薬:末端価格で推定三百億バーツ相当。


 現金:十二億バーツ。


 武器:四百丁以上。


 装甲車:四台(全て破壊)。


 帳簿、通信記録、取引データ。


---


 そして、ウィワット・チャロエンスックの身柄。


---


 味方の被害。


 負傷者:三人。全員軽傷。


 死者:なし。


---


 柏木は、燃える装甲車を見ていた。


 紅色のシュマグが、朝日に照らされている。


---


 サラが隣に来た。


 「終わったわね」


 「ああ」


 「聖域を潰した」


 「潰した」


 「次は」


 「次は、こいつの口から全てを吐かせる。政治家、軍、警察、企業。全員を引きずり出す」


 「大変な仕事ね」


 「大変だ。だが、やる価値がある」


---


 ニコライが近づいてきた。


 「白い制服が、赤くなったな」


 柏木の白いBDUに、血が付いていた。


 敵の血だ。


 「洗えば落ちる」


 「落ちるといいな」


 「落ちる。白は、汚れても洗えば白に戻る」


 「詩的だな」


 「たまにはな」


---


 ジョンソンが来た。


 「局長から連絡だ。『よくやった』だそうだ」


 「『よくやった』か」


 「それと、『次の仕事がある』と」


 「もう次か」


 「ウィワットの取引先だ。政治家、軍幹部、警察幹部。全員を洗い出せと」


 「......休む暇がないな」


 「ないな」


---


 柏木は空を見上げた。


 朝日が昇っている。


 白い装備が、金色に輝いていた。


---


 「さて、仕事だ」


 呟いた。


---


 聖域は、崩壊した。


 だが、戦いは終わらない。


 本当の敵は、まだ残っている。


 政治家。軍。警察。企業。


 この国を蝕む、腐敗の根源。


---


 それを断つまで、柏木は止まらない。

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