第4話 突入
作戦会議。
全員が集まった。
柏木が地図の前に立った。
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「作戦名、『白日』」
「白日?」
「白日の下に晒す。聖域を、日の光の下に引きずり出す」
「派手にやるってことか」
「そうだ。派手にやる」
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柏木は地図を指した。
「正面から行く」
沈黙。
「正面から?」
ニコライが聞いた。
「そうだ。裏口から侵入するのは効率が悪い。三分の死角では、十五人は入れない」
「だが、正面には重機関銃が」
「潰す。最初に」
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「作戦は三段階に分かれる」
柏木は説明を始めた。
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「第一段階。制圧射撃」
「ハンヴィー四台で正門に接近する。距離八百メートルで停止」
「八百メートル?」
「DShKの有効射程外だ。だが、GAU-19とM2とMk19の射程内だ」
「こっちは撃てるが、向こうは届かない」
「そうだ」
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「一号車のGAU-19で監視塔を潰す。二号車のM2で正門の見張りを制圧。三号車のMk19で重機関銃陣地を吹き飛ばす」
「同時にか」
「同時にだ。一斉射撃で、敵の初動を潰す」
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「対空ミサイルは」
マリーが聞いた。
「お前が潰す」
「私が」
「ドローンの情報では、二基が確認されている。正門付近と中央倉庫の屋根だ」
「千メートル以上あるな」
「できるか」
「できる」
マリーは即答した。
「制圧射撃が始まる前に、二基とも破壊する。射手を狙えば、ミサイルは使えなくなる」
「頼む」
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「第二段階。突入」
「制圧射撃で敵が混乱している間に、正門を突破する」
「正門は鉄製だ。頑丈だぞ」
「Mk19で吹き飛ばす。四十ミリ榴弾を十発も叩き込めば、開く」
「豪快だな」
「豪快でいい」
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「突入後、二手に分かれる」
「アルファチームとブラボーチーム」
「アルファは俺、ニコライ、ジョンソン、マルティネス、ヨナタン、サラ。車両整備場を叩く。装甲車を破壊する」
「ブラボーは」
「ファリダー、川島、カルロス、プラウィット。中央倉庫を制圧する。麻薬を確保」
「六人と四人か」
「マリーは狙撃支援を継続。アレクセイ、イーゴリ、ダニエル、エイブラハム、ナターシャ、ラッタナーは後方で待機。負傷者の搬送と、逃走者の阻止」
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「装甲車はどうやって破壊する」
「AT4とカールグスタフ」
「四台あるぞ」
「AT4が四本。カールグスタフの弾が六発。十発あれば、四台は潰せる」
「外さなければな」
「外さない」
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「第三段階。確保」
「装甲車を破壊したら、事務所棟に向かう。ウィワットを確保する」
「殺すのか」
「殺さない。生きたまま捕まえる。裁判にかける」
「他の幹部は」
「全員確保。抵抗すれば、無力化する」
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「質問は」
沈黙。
「では、作戦開始は明日、午前四時。夜明け前に終わらせる」
「了解」
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翌日。午前三時三十分。
サムットプラカーン県。
聖域から二キロ離れた地点。
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四台の白いハンヴィーが並んでいた。
月明かりに照らされて、幽霊のように白く浮かび上がっている。
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全員が装備を確認していた。
白のBDU。白の防弾アーマー。白のタクティカルベスト。
黒のニーパッド、エルボーパッド、ブーツ、グローブ。
金のガルーダエンブレム。
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柏木は紅色のシュマグを首に巻いた。
ベレッタM92FSをホルスターに収めた。
「出発する」
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四台が動き始めた。
ヘッドライトは消している。
暗闘装置で前方を確認しながら、ゆっくりと進む。
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午前三時四十五分。
聖域から八百メートルの地点。
停止。
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「マリー、位置につけ」
「了解」
マリーは車両から降りた。
白いギリースーツ。AI AXMCを背負っている。
闇の中に消えていった。
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五分後。
マリーから通信が入った。
「位置についた。目標を視認」
「対空ミサイルは」
「二基とも見えている。射手は......正門付近に一人。中央倉庫の屋根に一人」
「排除できるか」
「できる」
「合図を待て」
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柏木は時計を見た。
午前三時五十五分。
「全車両、戦闘準備」
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ジョンソンがGAU-19のハンドルを握った。
「準備完了」
ニコライがM2の安全装置を外した。
「準備完了」
マルティネスがMk19に弾帯を装填した。
「準備完了」
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午前四時。
「作戦開始」
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「マリー、撃て」
マリーの声が返ってきた。
「了解」
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千二百メートル先。
正門付近の射手。
マリーはスコープを覗いた。
風速を計算した。
呼吸を止めた。
撃った。
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.338ラプアマグナム弾が飛んだ。
一秒半後。
射手が倒れた。
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すぐに次の目標。
中央倉庫の屋根。
千三百メートル。
撃った。
射手が倒れた。
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「対空ミサイル、排除完了」
「よし。全車両、制圧射撃開始」
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三台のハンヴィーが、同時に火を噴いた。
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GAU-19。
毎分二千発の.50口径弾が、監視塔に叩き込まれた。
木造の塔が、粉砕された。
二つ目の監視塔。
粉砕。
三つ目。
粉砕。
四つ目。
粉砕。
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M2。
正門の見張りに向かって、.50口径弾が降り注いだ。
見張り小屋が吹き飛んだ。
鉄門の周りにいた兵士たちが、散り散りに逃げた。
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Mk19。
四十ミリ榴弾が、重機関銃陣地に着弾した。
爆発。
土嚢が吹き飛んだ。
DShKが横転した。
「命中!」
マルティネスが叫んだ。
次の陣地。
着弾。爆発。
「二つ目、破壊!」
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三十秒で、聖域の外周防御が崩壊した。
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「前進!」
柏木が叫んだ。
四台のハンヴィーが、正門に向かって突進した。
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敵が反撃してきた。
AKの銃声が響く。
弾がハンヴィーの装甲に当たった。
弾かれた。
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「止まるな! 押し通れ!」
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正門まで百メートル。
「マルティネス、門を開けろ!」
「了解!」
Mk19が正門に向かって撃った。
四十ミリ榴弾が、鉄門に次々と着弾した。
五発。六発。七発。
門が歪んだ。
八発目。
門が吹き飛んだ。
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「突入!」
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四台のハンヴィーが、聖域に突入した。
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中は混乱していた。
敵兵が走り回っている。
銃声が飛び交う。
悲鳴が上がる。
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「アルファチーム、俺に続け!」
柏木の乗ったハンヴィーが、車両整備場に向かった。
二号車が続く。
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「ブラボーチーム、中央倉庫へ!」
三号車と四号車が、中央倉庫に向かった。
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車両整備場。
装甲車が四台、並んでいた。
BTR-60。ソ連製の装輪装甲車。
乗員が慌てて乗り込もうとしていた。
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「させるか」
柏木がハンヴィーから飛び降りた。
「ニコライ!」
「分かっている!」
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ニコライがカールグスタフを肩に担いだ。
狙いをつけた。
撃った。
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八十四ミリの弾頭が、一台目のBTR-60に直撃した。
爆発。
装甲車が炎に包まれた。
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ジョンソンがAT4を構えた。
二台目のBTR-60。
撃った。
命中。爆発。
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三台目が動き出した。
エンジンが唸る。
「逃がすな!」
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マルティネスがAT4を撃った。
命中。
だが、装甲が厚い部分に当たった。
貫通しなかった。
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「くそ!」
BTR-60が旋回した。
砲塔がこちらを向く。
14.5ミリ機関砲。
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「伏せろ!」
全員が地面に伏せた。
機関砲が火を噴いた。
弾がハンヴィーの上を通過した。
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柏木は走った。
装甲車に向かって。
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「隊長!」
川島が叫んだ。
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柏木は止まらなかった。
弾が横を抜けた。
構わない。
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装甲車との距離が縮まる。
三十メートル。二十メートル。
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砲塔が柏木を追う。
だが、近すぎた。
仰角が足りない。
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十メートル。
柏木は装甲車に飛び乗った。
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ハッチを開けようとした。
ロックされている。
「ヨナタン!」
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ヨナタンが走ってきた。
ブリーチングショットガンを構えた。
ハッチの蝶番を撃った。
吹き飛んだ。
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柏木がハッチを開けた。
中に敵がいる。
三人。
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柏木はベレッタを抜いた。
体を中に滑り込ませた。
至近距離。
撃った。一人。
撃った。二人。
三人目が銃を向けてきた。
柏木は銃身を掴んだ。
捻った。
敵の指が折れた。
悲鳴。
肘を顎に叩き込んだ。
気絶。
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「三台目、制圧!」
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四台目が逃げようとしていた。
正門の方へ。
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ニコライがカールグスタフを再装填した。
狙いをつけた。
撃った。
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弾頭が、装甲車の後部に直撃した。
エンジンが爆発した。
装甲車が停止した。炎を上げている。
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「四台目、破壊!」
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「装甲車、全滅!」
ジョンソンが叫んだ。
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同時刻。
中央倉庫。
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ファリダーが先頭で突入した。
HK416を構えている。
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倉庫の中は広かった。
麻薬の袋が、山のように積まれている。
「すごい量......」
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敵がいた。
三十人以上。
だが、混乱していた。
外の爆発音で、パニックになっている。
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「王室犯罪対策局! 武器を捨てろ!」
ファリダーが叫んだ。
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一人が銃を向けてきた。
ファリダーは撃った。
肩に命中。
倒れた。
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「抵抗するな! 全員、地面に伏せろ!」
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川島とカルロスが援護射撃をした。
威嚇射撃。天井に向けて。
敵兵たちが、次々と武器を捨てた。
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「伏せろ! 手を頭の後ろに!」
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プラウィットがタイ語で叫んだ。
「動くな! 撃つぞ!」
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五分で、中央倉庫を制圧した。
確保者、三十七人。
押収した麻薬は、数え切れないほどだった。
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「ブラボーより本部。中央倉庫、制圧完了」
「了解。アルファは事務所棟に向かう」
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事務所棟。
柏木たちが接近していた。
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三階建ての建物。
窓から銃口が見えた。
「抵抗する気だな」
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「マリー、三階の窓を頼む」
「了解」
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千メートル離れた位置から、マリーが狙撃した。
窓際にいた敵が倒れた。
もう一人。
倒れた。
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「突入する」
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ヨナタンがブリーチングショットガンで正面ドアを吹き飛ばした。
柏木が最初に入った。
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一階。
敵が八人。
銃を構えている。
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柏木は走った。
撃ちながら。
一人が倒れた。
二人目。
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ニコライが続いた。
AK-103を撃ちながら。
三人が倒れた。
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残りの敵が逃げようとした。
ジョンソンが立ちはだかった。
「どこへ行く」
HK416の銃口が向けられている。
敵は武器を捨てた。
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「一階、クリア!」
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階段を上がる。
二階。
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敵が待ち構えていた。
廊下の奥から、弾が飛んできた。
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柏木は壁に身を隠した。
「閃光弾」
サラが投げた。
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爆発。
白い光が廊下を満たした。
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柏木が飛び出した。
敵は目を押さえている。
近づいた。
銃を叩き落とした。
膝を蹴った。
倒れた。
次の敵。
肘を顔面に。
倒れた。
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「二階、クリア!」
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三階へ。
最後のフロア。
ウィワットがいるはずだ。
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階段を上がった。
廊下の奥に、大きなドアがあった。
社長室。
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「ヨナタン」
「了解」
ブリーチングショットガンがドアを吹き飛ばした。
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柏木が突入した。
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広い部屋だった。
豪華な家具。絵画。ワインセラー。
窓際に、男が立っていた。
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ウィワット・チャロエンスック。
六十代。痩せた体。鋭い目。
拳銃を持っていた。
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「王室犯罪対策局か」
ウィワットは笑った。
「白い制服とは、洒落ている」
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「武器を捨てろ」
柏木が言った。
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「捨てない」
ウィワットは銃を構えた。
だが、柏木に向けていなかった。
自分のこめかみに。
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「死ぬのか」
「捕まるよりマシだ」
「裁判を受けろ。罪を償え」
「償う? 私が?」
ウィワットは笑った。
「私は、この国の半分を買収してきた。政治家、軍、警察、企業。全員、私の金で動いていた」
「だから何だ」
「だから、私は罪など犯していない。この国のシステムそのものが、私なのだ」
「お前は犯罪者だ。それだけだ」
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ウィワットの指が、引き金にかかった。
「さよならだ」
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柏木は動いた。
距離は五メートル。
踏み込んだ。
一歩。二歩。三歩。
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ウィワットが引き金を引こうとした。
遅い。
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柏木の手が、ウィワットの手首を掴んだ。
銃口を逸らした。
銃声。
弾は天井に当たった。
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柏木は手首を捻った。
拳銃が落ちた。
ウィワットの腕を背中に回した。
床に押し倒した。
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「お前は死なせない」
柏木の声は静かだった。
「裁判を受けろ。全てを白日の下に晒せ」
「......」
「お前の金で動いていた連中も、道連れだ」
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ウィワットは動かなかった。
「......負けたか」
「負けた。終わりだ」
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「アルファより全チーム。ターゲット確保。作戦完了」
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午前五時三十分。
夜が明け始めていた。
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聖域は、制圧された。
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戦果。
敵の死者:二十三人。
敵の負傷者:五十八人。
確保者:二百十九人。
逃走者:約五十人(後日、追跡予定)。
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押収品。
麻薬:末端価格で推定三百億バーツ相当。
現金:十二億バーツ。
武器:四百丁以上。
装甲車:四台(全て破壊)。
帳簿、通信記録、取引データ。
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そして、ウィワット・チャロエンスックの身柄。
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味方の被害。
負傷者:三人。全員軽傷。
死者:なし。
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柏木は、燃える装甲車を見ていた。
紅色のシュマグが、朝日に照らされている。
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サラが隣に来た。
「終わったわね」
「ああ」
「聖域を潰した」
「潰した」
「次は」
「次は、こいつの口から全てを吐かせる。政治家、軍、警察、企業。全員を引きずり出す」
「大変な仕事ね」
「大変だ。だが、やる価値がある」
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ニコライが近づいてきた。
「白い制服が、赤くなったな」
柏木の白いBDUに、血が付いていた。
敵の血だ。
「洗えば落ちる」
「落ちるといいな」
「落ちる。白は、汚れても洗えば白に戻る」
「詩的だな」
「たまにはな」
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ジョンソンが来た。
「局長から連絡だ。『よくやった』だそうだ」
「『よくやった』か」
「それと、『次の仕事がある』と」
「もう次か」
「ウィワットの取引先だ。政治家、軍幹部、警察幹部。全員を洗い出せと」
「......休む暇がないな」
「ないな」
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柏木は空を見上げた。
朝日が昇っている。
白い装備が、金色に輝いていた。
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「さて、仕事だ」
呟いた。
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聖域は、崩壊した。
だが、戦いは終わらない。
本当の敵は、まだ残っている。
政治家。軍。警察。企業。
この国を蝕む、腐敗の根源。
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それを断つまで、柏木は止まらない。




