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The Man Who Would Not Die: 死んでたまるか  作者: Operator3118
第3章 聖域
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第1話 白装

チェンマイ。


 旧柏木班拠点。


 いや、もう「柏木班」ではない。


 王室犯罪対策局特別強襲部隊。


 通称、突撃隊。


 それが、新しい名前だった。


---


 倉庫に、全員が集まっていた。


 目の前には、大きな木箱がいくつも並んでいる。


 バンコクから届いた。局長——元ウィチャイ大佐——からの贈り物だった。


 「開けろ」


 柏木が言った。


---


 川島とカルロスが、木箱を開けた。


 中から出てきたのは、真っ白な装備だった。


 「......白?」


 ニコライが眉を上げた。


 「白だ」


 「なぜ白だ」


 「潔白を意味する」


 柏木が説明した。


 「俺たちは、汚職と戦う。腐敗と戦う。だから、白だ」


---


 全員が装備を手に取った。


 白のBDUジャケット。


 白のBDUパンツ。


 白の防弾アーマー。白のタクティカルベスト。


 黒のニーパッド。黒のエルボーパッド。


 黒のコンバットブーツ。黒のタクティカルグローブ。


 そして、金色に輝くエンブレム。


---


 エンブレムを見た。


 ガルーダが剣を咥えている。


 背景に王冠。


 縁取りは紫と金。


 「王室犯罪対策局特別強襲部隊」


 タイ語と英語で刻まれていた。


 「RCSB-SAU」


 Royal Crime Suppression Bureau - Special Assault Unit.


---


 「かっこいいな」


 マルティネスが言った。


 「ガルーダか。タイ王室の象徴だ」


 ファリダーが説明した。


 「神鳥だ。悪を滅ぼす力を持つと言われている」


 「俺たちにぴったりだ」


 ジョンソンが笑った。


---


 柏木が装備を見渡した。


 「二種類ある。重装型と機動型だ」


 「重装型?」


 「襟付きの防弾アーマー。首まで防護する。正面火力を担当する者向けだ」


 「機動型は?」


 「タクティカルベスト。軽量で動きやすい。突入や近接戦闘を担当する者向けだ」


---


 「割り振りを発表する」


 柏木が言った。


 「重装型。ニコライ、ジョンソン、マルティネス、ヨナタン」


 「了解」


 「機動型。俺、サラ、ファリダー、川島、アレクセイ」


 「了解」


 「マリーは狙撃手仕様。白のギリースーツを別途用意する」


 「分かった」


---


 全員が、装備を身につけ始めた。


 白のBDUを着る。


 防弾アーマー、またはタクティカルベストを装着する。


 ニーパッドとエルボーパッドを付ける。


 ブーツを履く。グローブをはめる。


---


 ニコライが襟付き防弾アーマーを着た。


 白い装甲が、巨体を包む。


 首まで覆う襟。肩パッド一体型。


 「重いな」


 「その分、防護力がある」


 「悪くない」


 ニコライは黒のバラクラバを首に下げた。


 白と黒のコントラスト。


---


 ジョンソンも重装型を着た。


 大柄な体に、白い装甲が映える。


 金の腕時計が、白の中で輝いていた。


 「いいじゃないか」


 「紳士的に見えるか?」


 「......白い戦車に見える」


 「戦車か。悪くない」


---


 マルティネスが胸のエンブレムを見た。


 シルバーのクロスと、金のガルーダが並んでいる。


 「神の加護と、王の加護か」


 「最強だな」


 「最強だ」


---


 ヨナタンは無表情で装備を着けた。


 だが、目に光があった。


 「白か」


 「気に入らないか」


 「気に入った。目立つ」


 「目立っていいのか。元モサドだろう」


 「モサドは辞めた。今は、王の剣だ。隠れる必要はない」


---


 柏木はタクティカルベストを着た。


 白のBDU。白のベスト。


 そして、紅色のシュマグを首に巻いた。


 白と赤。


 「指揮官の印だな」


 ニコライが言った。


 「そういうわけじゃない」


 「そういうわけだろう」


 「......まあ、いい」


---


 サラがタクティカルベストを着た。


 白の装備。金髪が映える。


 「似合うわね」


 「お前もな」


 「ありがとう」


 サラは髪を後ろで結んだ。


 白と金。


---


 ファリダーがタクティカルベストを着た。


 首には紫に金刺繍のタイシルクスカーフ。


 王室カラーだ。


 「このスカーフ、新しい装備に合いますね」


 「合う。お前にぴったりだ」


 ファリダーは少し照れた。


---


 川島がタクティカルベストを着た。


 「隊長、似合っていますか」


 「似合っている」


 「本当ですか」


 「本当だ」


 川島は嬉しそうだった。


---


 アレクセイがタクティカルベストを着た。


 胸には赤十字の医療パッチ。


 白と赤。


 「医者らしくなったな」


 「医者だからな」


 「戦場の医者だ」


 「そうだ」


---


 マリーは別の箱を開けた。


 白のギリースーツ。


 「雪山用か」


 「タイに雪山はない」


 「だが、白は目立たない場所もある」


 「どこだ」


 「建物の中。壁が白ければ」


 「なるほど」


 マリーは軽装ベストを手に取った。


 「これで十分だ。重い装備は、狙撃には向かない」


---


 全員が装備を身につけた。


 十五人が並んだ。


 白い戦士たち。


 「壮観だな」


 ニコライが言った。


 「ああ」


 「映画みたいだ」


 「映画より派手だ」


---


 別の木箱が開けられた。


 武装だ。


---


 「対装甲火器を追加する」


 柏木が言った。


 「聖域には装甲車がある。現行の火力では不足だ」


 「何を使う」


 「AT4とカールグスタフM4」


---


 AT4が並んでいた。


 使い捨ての対戦車ロケット。


 「これは、一発撃ったら終わりだ。だが、確実に装甲を貫通する」


 「誰が持つ」


 「ニコライとジョンソン。各二本ずつ」


 「了解」


---


 カールグスタフM4も出てきた。


 再装填可能な無反動砲。


 「これは、ニコライが運用する。お前なら扱えるだろう」


 「扱える。ロシア軍で似たようなものを使っていた」


 「頼む」


---


 ブリーチングショットガンが出てきた。


 「ドア破壊用だ。ヨナタン、お前が持て」


 「了解」


 「突入時に使う。鍵も蝶番も吹き飛ばせる」


 「便利だな」


---


 閃光弾と煙幕弾が大量に出てきた。


 「全員、携行しろ。突入支援に使う」


 「了解」


---


 小型ドローンが出てきた。


 「偵察用だ。川島、カルロス、お前たちが操作しろ」


 「了解」


 「聖域は広い。事前に内部構造を把握する必要がある」


 「任せてください」


---


 最後の木箱。


 大きかった。


 「これは」


 ジョンソンが聞いた。


 「M2重機関銃だ」


 「M2?」


 「.50口径。Hilux 2号車に搭載する」


---


 M2が姿を現した。


 巨大な機関銃。


 「GAU-19と並ぶ火力だな」


 「発射レートは劣るが、信頼性が高い。弾薬消費も少ない」


 「誰が撃つ」


 柏木はニコライを見た。


 「お前だ」


 「俺か」


 「PKMもあるが、車載火力としてはM2の方が強力だ」


 「了解。任せろ」


---


 「車両とヘリも一新される」


 柏木が言った。


 「白に塗り替えだ。金のストライプとエンブレム付き」


 「派手だな」


 「派手でいい。俺たちは隠れない」


 「堂々と正面から行く」


 「そうだ」


---


 全員が、新しい装備を見渡した。


 白のBDU。


 白の防弾アーマーとタクティカルベスト。


 黒のパッド、ブーツ、グローブ。


 金のガルーダエンブレム。


 AT4、カールグスタフ、ブリーチングショットガン。


 ドローン。


 M2重機関銃。


 「完全武装だな」


 ジョンソンが言った。


 「聖域を潰すには、これだけ必要だ」


 「必要だろうな」


---


 柏木は全員を見渡した。


 十五人の白い戦士。


 王室犯罪対策局特別強襲部隊。


 突撃隊。


---


 「聖域について説明する」


 柏木が言った。


 全員が姿勢を正した。


---


 「バンコク近郊。サムットプラカーン県」


 地図を広げた。


 「表向きは、物流会社の倉庫群だ。『サイアム・ロジスティクス』という会社」


 「物流会社」


 「表向きはな。実態は、東南アジア最大級の麻薬集積・配送センターだ」


---


 「規模は」


 「敷地面積、約五万平方メートル。倉庫が十二棟。事務所が三棟。宿舎が二棟」


 「でかいな」


 「構成員は三百人以上。武装は、自動小銃、重機関銃、RPG、装甲車複数。対空ミサイルの存在も確認されている」


 「対空ミサイル」


 「SA-7かSA-14と推定される。ヘリは近づけない」


 「地上からの攻撃になるな」


 「そうだ」


---


 「なぜ今まで手が出せなかったのですか」


 ファリダーが聞いた。


 「政治的な理由だ」


 柏木は写真を並べた。


 「この男は、プラソン・チャルーンポン。国家安全保障会議副議長」


 「会議で俺たちを潰そうとした男だな」


 「そうだ。サイアム・ロジスティクスの株主の一人だ」


---


 「この男は、ピチット中将。陸軍の高官」


 「軍が絡んでいるのか」


 「絡んでいる。だから、この地域は『国防上の理由』で立入禁止になっていた」


---


 「この男は、ソムチャイ大佐。バンコク警察」


 「以前、俺たちの拠点に乗り込んできた奴だな」


 「そうだ。捜査しようとした警察官を、異動させていた」


---


 「この男は、タナコーン・シリワット。与党の重鎮」


 「政治家も」


 「そうだ。法案を通して、この地域の捜査を困難にしていた」


---


 「そして、この男」


 柏木は最後の写真を出した。


 「ウィワット・チャロエンスック。サイアム・ロジスティクスのCEO」


 「企業家か」


 「表向きはな。実態は、東南アジア最大の麻薬王だ」


---


 「政治家、軍、警察、企業家。全員がグルだ」


 柏木は写真を見渡した。


 「彼らが作った『聖域』。誰も手が出せなかった場所」


 「だが、今は違う」


 ニコライが言った。


 「ああ。今は、俺たちがいる」


---


 「作戦は」


 サラが聞いた。


 「これから立案する。一週間かけて、情報を収集し、計画を練る」


 「ドローンを使う」


 「使う。施設の内部構造を把握する」


 「潜入調査は」


 「危険すぎる。外部からの偵察に留める」


---


 「敵は三百人以上。対空ミサイルもある。正直、今までで最も困難な作戦だ」


 柏木は全員を見た。


 「だが、やるしかない。ここを潰せば、タイの麻薬流通の心臓部を止められる」


 「止めましょう」


 ファリダーが言った。


 「止めます。タイのために」


---


 「準備を始めろ。装備の点検、武器の調整、体調の管理。一週間後に、作戦会議を行う」


 「了解」


 全員が動き始めた。


---


 柏木は窓の外を見た。


 白い装備が、陽光に輝いている。


 王の剣。


 潔白の戦士たち。


 「聖域を、断つ」


 呟いた。


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