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The Man Who Would Not Die: 死んでたまるか  作者: Operator3118
第2章 捜査班
46/132

幕間 武装

バンコク。王宮警察本部。


 会議室に、いつものメンバーが集まっていた。


 ウィチャイ大佐、チャイロン少佐、ナロン、そして柏木。


 議題は作戦報告と今後の方針だった。


 はずだった。


---


 「百二十億バーツか」


 ウィチャイ大佐が報告書を見た。


 「そうです」


 「一回の作戦で、これだけの成果。素晴らしい」


 「ありがとうございます」


 「負傷者は」


 「三人。全員軽傷です。既に復帰しています」


 「死者は」


 「ゼロです」


 大佐は頷いた。


 「装備を変えた効果が出ているな」


 「はい。プレートキャリアがなければ、俺は死んでいました」


 「だから言っただろう」


 「はい。感謝しています」


 大佐は少し満足そうな顔をした。


---


 「だが、問題がある」


 大佐は立ち上がった。


 「問題ですか」


 「ヘリだ」


 「ヘリに何か」


 「武装がない」


 柏木は少し黙った。


 「......確かに、UH-1には武装がありません」


 「輸送ヘリとしては十分だ。だが、戦闘地域で運用するには不安がある」


 「敵の対空火器が」


 「そうだ。今回は敵にRPGがあった。次はもっと重武装になる可能性がある。丸腰のヘリでは危険だ」


 「武装を付けるということですか」


 「そうだ」


 大佐の目が光った。


 「どんな武装がいいと思う」


---


 その瞬間、会議室の空気が変わった。


 大佐の声のトーンが変わっていた。


 公式の報告会から、何か別のものに。


 チャイロン少佐が小さくため息をついた。


 「大佐、また始まりましたか」


 「何がだ」


 「趣味の話です」


 「趣味ではない。実務的な議論だ」


 「......はい」


---


 大佐はホワイトボードに向かった。


 「まず、基本的な選択肢を挙げる」


 マーカーを手に取った。


 「一、M60機関銃。ドアガンとして使用。7.62ミリ。毎分五百五十発。信頼性が高い」


 書きながら、熱く語り始めた。


 「二、M134ミニガン。毎分三千発から六千発。圧倒的な火力。だが、弾薬消費が激しい」


 「三、ロケットポッド。ハイドラ70。対地攻撃に有効。だが、精度に難がある」


 「四、グレネードランチャー。Mk19。四十ミリ。面制圧に優れる」


 大佐は振り返った。


 「私はミニガンを推す」


---


 柏木は少し驚いていた。


 大佐がこんなに熱くなるのは初めて見た。


 「ミニガンですか」


 「そうだ。毎分六千発。敵が何人いようと、一掃できる」


 「弾薬消費が激しいと、さっき言いましたが」


 「補給すればいい。火力は正義だ」


 「......」


 チャイロン少佐が口を挟んだ。


 「大佐。ミニガンは維持費が高いです」


 「予算はある」


 「それでも」


 「火力は正義だ」


 「......」


---


 ナロンが発言した。


 「M60の方が現実的では。タイ軍でも運用実績があります」


 「M60は古い」


 大佐が即座に否定した。


 「信頼性は高いですが」


 「古い。ロマンがない」


 「ロマン......ですか」


 「そうだ。どうせ武装するなら、最高のものを使うべきだ」


 チャイロン少佐が頭を抱えた。


 「大佐、これは実務の議論です」


 「実務だ。火力は実務だ」


---


 柏木は黙って聞いていた。


 大佐がこんな一面を持っているとは知らなかった。


 「柏木、お前はどう思う」


 大佐が聞いた。


 「俺は......近接戦闘が専門なので、ヘリの武装には詳しくありません」


 「意見を聞いている」


 「......強いて言えば、ミニガンは重すぎるのでは。UH-1の積載量を考えると」


 「積載量は何とかなる」


 「本当ですか」


 「何とかする」


 「......」


---


 会議室のドアが開いた。


 ニコライが入ってきた。


 「呼ばれたから来た。何の話だ」


 「ヘリの武装についてだ」


 大佐が答えた。


 「武装?」


 「UH-1に武装を付ける。何がいいと思う」


 ニコライの目が光った。


 「ヤクシャスを付けろ」


 「何だ、それは」


 「Yak-B。ソ連製の四連装機関銃だ。12.7ミリ。毎分四千五百発」


 「ソ連製か」


 「最高の機関銃だ」


 大佐が首を振った。


 「却下だ。ソ連製は部品の調達が難しい」


 「アメリカ製より優れている」


 「優れていても、部品がなければ動かない」


 「......」


 ニコライは不満そうだった。


---


 ジョンソンも呼ばれていた。


 「GAU-19を推す」


 「何だ、それは」


 「.50口径のガトリングガン。毎分二千発。M134より威力がある」


 「重くないか」


 「重い。だが、威力は正義だ」


 大佐が頷いた。


 「いい考えだ。だが、UH-1には載らない」


 「載せろ」


 「物理的に無理だ」


 「......」


---


 ヨナタンも来ていた。


 「ラファエルのミニ・タイフーンはどうだ」


 「イスラエル製か」


 「そうだ。リモート操作式の銃塔。7.62ミリ。精度が高い」


 「面白いな」


 大佐が興味を示した。


 「ドアガンより安全だ。パイロットが操作できる」


 「コストは」


 「高い」


 「どれくらい高い」


 「ミニガン三丁分くらいだ」


 「却下だ」


 「......」


---


 マルティネスが口を挟んだ。


 「M240でいいだろう。シンプルで信頼性が高い。部品も調達しやすい」


 「つまらん」


 大佐が言った。


 「つまらん、ですか」


 「M240は普通すぎる。ロマンがない」


 「実用性が」


 「ロマンだ」


 「......」


 マルティネスは黙った。


---


 チャイロン少佐が立ち上がった。


 「大佐。そろそろ決めましょう」


 「まだ議論が足りない」


 「十分です。一時間も議論しています」


 「一時間しか経っていない」


 「一時間もです」


 大佐は不満そうだった。


 「......分かった。結論を出す」


---


 大佐はホワイトボードを見た。


 「現実的な選択肢は三つ。M60、M240、M134」


 「ミニ・タイフーンは」


 ヨナタンが聞いた。


 「予算オーバーだ」


 「......」


 「Yak-Bは」


 ニコライが聞いた。


 「部品がない」


 「......」


 「GAU-19は」


 ジョンソンが聞いた。


 「重すぎる」


 「......」


---


 大佐は少し考えた。


 「M134にする」


 「ミニガンですか」


 チャイロン少佐が聞いた。


 「そうだ。火力は正義だ」


 「弾薬消費は」


 「補給すればいい」


 「維持費は」


 「予算を取る」


 「......分かりました」


 チャイロン少佐は諦めた顔をしていた。


---


 「それと、もう一つ」


 大佐が言った。


 「何ですか」


 「ドアガンとしてM60も付ける。両側に」


 「両方付けるんですか」


 「そうだ。ミニガンは前方、M60は側面。これで全方位をカバーできる」


 「積載量は」


 「人員を減らせば載る」


 「人員を減らす......」


 「突入班は五人だろう。四人でもいい」


 柏木が口を挟んだ。


 「四人では足りません」


 「なら、武装を減らすか」


 「......」


 「冗談だ。両方載せる方法を考える」


---


 会議は終わった。


 結論。


 UH-1にM134ミニガン一門、M60機関銃二門を搭載。


 予算は大佐が何とかする。


 積載量も大佐が何とかする。


 「何とかする」が多すぎる気がしたが、誰も突っ込まなかった。


---


 会議室を出た後、チャイロン少佐が柏木に近づいた。


 「すまない」


 「何がですか」


 「大佐の趣味に付き合わせて」


 「趣味ですか」


 「大佐は、ああ見えて銃器マニアなんだ。特にヘリの武装には詳しい」


 「気づきました」


 「普段は冷静なんだが、この話題になると止まらない」


 「......」


 「まあ、結果的には良い武装になるはずだ。大佐の目は確かだから」


 「そうですか」


 「そうだ。任せておけ」


---


 ニコライが近づいてきた。


 「Yak-Bは却下されたが、ミニガンも悪くない」


 「そうか」


 「毎分六千発だぞ。ロマンがある」


 「お前も趣味の話か」


 「趣味ではない。実務だ」


 「......」


 ジョンソンも来た。


 「GAU-19が載らないのは残念だ」


 「重すぎると言われただろう」


 「重くても威力がある」


 「積載量の問題だ」


 「積載量より威力だ」


 「......」


 ヨナタンも来た。


 「ミニ・タイフーンが却下されたのは理解できない」


 「予算オーバーだと言われただろう」


 「イスラエル製は高いが、性能は最高だ」


 「高すぎる」


 「性能は価格に見合う」


 「......」


---


 柏木は一人で廊下を歩いた。


 全員が武装の話で熱くなっていた。


 大佐も、ニコライも、ジョンソンも、ヨナタンも。


 男というのは、こういう話が好きなのかもしれない。


 柏木は煙草を取り出した。


 火をつけた。


 「俺はベレッタ一丁でいい」


 呟いた。


 誰も聞いていなかった。

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