第12話 掃討
二ヶ月が過ぎた。
柏木班は止まらなかった。
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メーサイ。製造拠点。
午前四時。ヘリが接近した。
M134ミニガンが火を噴いた。毎分六千発。監視塔が粉砕された。
「降下」
五人が降下。
三十分で制圧。
敵八十七人確保。麻薬六十億バーツ相当押収。
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チェンライ。密輸拠点。
午前三時。車両が突入した。
サイレンを鳴らしながら。パトライトを回しながら。
正面から。
敵は逃げようとした。
裏口にマリーがいた。八百メートル先から。
三人が倒れた。足を撃たれて。
「殺すなと言っただろう」
「殺していない。足だ」
「......」
二十分で制圧。
敵五十三人確保。武器二百丁押収。
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メーホンソン。製造拠点。
午前二時。ヘリが接近した。
敵がRPGを撃ってきた。
イーゴリが急旋回。回避。
「撃ち返せ」
M60が火を噴いた。RPGの射手が倒れた。
降下。突入。制圧。
四十五分。
敵百二十一人確保。麻薬九十億バーツ相当押収。
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二ヶ月で、十二の拠点を制圧した。
敵の確保者は合計八百人以上。
押収した麻薬は、末端価格で五百億バーツを超えた。
死者は敵側で三十七人。味方はゼロ。
もはや、捜査班ではなかった。
特殊部隊だった。
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チェンマイ。柏木班の拠点。
ジョンソンがHiluxの前に立っていた。
荷台に、巨大な銃が据え付けられている。
GAU-19。.50口径のガトリングガン。
「......何だ、これは」
柏木が聞いた。
「大佐からの贈り物だ」
「贈り物」
「そうだ。『ヘリには載らないが、車には載る』と言っていた」
「......」
ジョンソンは嬉しそうだった。
「毎分二千発だぞ。.50口径だぞ。壁も車も貫通する」
「分かった」
「分かったか」
「分かった。だが、使う場面があるのか」
「作る」
「......」
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ニコライが近づいてきた。
「俺にも何か来ないのか」
「何が欲しい」
「Yak-Bは無理だろうな」
「無理だ」
「なら、PKMでいい」
「PKM?」
「ソ連製の汎用機関銃だ。7.62ミリ。信頼性が高い」
「大佐に頼んでみろ」
「頼む」
三日後、PKMが届いた。
大佐からのメモが添えられていた。
『部品の調達は難しいが、何とかした。壊すな』
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ヨナタンにも届いた。
ネゲヴ。イスラエル製の軽機関銃。
「頼んでいないが」
「大佐からだ」
「なぜ」
「『イスラエル人にはイスラエル製を』と言っていた」
「......変な人だな」
「否定はしない」
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マリーには新しいスコープが届いた。
Schmidt & Bender PM II。最高級品。
「これは高いぞ」
「大佐からだ」
「いくらする」
「聞くな」
マリーはスコープを取り付けた。
「......千メートルでも外さなくなった」
「八百メートルじゃなかったのか」
「千メートルになった」
「......」
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大佐は気前が良かった。
良すぎた。
チャイロン少佐が頭を抱えていた。
「予算が......」
「大佐が何とかすると言っていた」
「何とかしすぎだ」
「......」
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だが、本当に大変だったのは、王宮警察の専任部隊だった。
後方支援。五十人規模。
彼らの仕事は、柏木班が制圧した拠点を引き継ぐことだった。
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バンコク。王宮警察本部。
専任部隊の隊長、ソムチャート中佐が報告書を書いていた。
目の下に隈がある。三日間、まともに寝ていない。
「また制圧か」
部下が入ってきた。
「メーホンソンです。百二十一人確保」
「百二十一人」
「はい」
「輸送車両は」
「足りません」
「足りないのは分かっている。どうする」
「二往復します」
「時間は」
「十二時間」
「......」
ソムチャートは頭を抱えた。
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専任部隊の仕事は多岐にわたった。
逮捕者の輸送。取り調べ。証拠の収集。押収品の管理。裁判への引き渡し。
柏木班が一つの拠点を制圧するたびに、専任部隊は一週間分の仕事を抱え込む。
柏木班は二ヶ月で十二の拠点を制圧した。
つまり、十二週間分の仕事が、二ヶ月で降ってきた。
「追いつかない」
ソムチャートは呟いた。
「人員を増やせませんか」
「申請している。だが、承認が降りない」
「なぜ」
「予算が武装に回っているからだ」
「武装......」
「大佐がミニガンやら何やら買い込んでいるせいで、人件費が削られた」
「......」
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倉庫も足りなかった。
押収した麻薬は、証拠として保管する必要がある。
五百億バーツ相当の麻薬。
トラック何台分にもなる。
「倉庫が満杯です」
「借りろ」
「どこから」
「知らん。何とかしろ」
「......」
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取り調べも追いつかなかった。
八百人以上の逮捕者。
一人一人に尋問が必要だ。
通訳も必要だ。タイ語、ミャンマー語、中国語、ラオス語。
「通訳が足りません」
「探せ」
「探しています。だが、犯罪組織の取り調べができる通訳は少ない」
「金を積め」
「予算が」
「また予算か」
「武装に回っています」
「......」
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ソムチャートは大佐に直訴した。
「人員を増やしてください」
「予算がない」
「武装を減らせば」
「却下だ」
「しかし」
「火力は正義だ」
「......」
ソムチャートは諦めた。
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だが、大佐も無慈悲ではなかった。
翌週、二十人の増員が承認された。
「どこから予算を」
「別の部署から借りた」
「借りた......」
「返す当てはある。押収した現金だ」
「押収した現金を使っていいんですか」
「手続きを踏めば使える」
「......」
大佐のやり方は強引だった。だが、結果は出ていた。
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チェンマイ。柏木班の拠点。
柏木は報告書を読んでいた。
「後方支援が追いつかないらしい」
サラが言った。
「聞いた」
「ペースを落とすか」
「落とさない」
「なぜ」
「敵に立て直す時間を与えるからだ」
「後方が崩壊したら、俺たちも動けなくなる」
「崩壊させない。大佐が何とかする」
「また『何とかする』か」
「そうだ」
サラは少し笑った。
「あなた、大佐を信頼しているのね」
「信頼している」
「なぜ」
「俺を怒鳴りつけた人間だからだ」
「それが理由?」
「本気で心配してくれた。だから信頼できる」
「......なるほどね」
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夜。
全員が食堂に集まっていた。
川島が地図を広げた。
「次の目標です」
「どこだ」
「ターク県。ミャンマー国境沿いの集積拠点です」
「規模は」
「過去最大です。構成員は二百人以上と推定されています」
沈黙が落ちた。
「二百人か」
ニコライが呟いた。
「俺たちは十五人だ」
「問題あるか」
柏木が聞いた。
「ない」
ニコライは笑った。
「ミニガンがある。PKMがある。GAU-19がある。火力は十分だ」
「火力だけで勝てるか」
「勝てる。火力は正義だ」
「......大佐に毒されたな」
「否定はしない」
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ジョンソンが言った。
「GAU-19の出番だな」
「本当に使うのか」
「使う。二百人相手なら、必要だ」
「壁も車も貫通するんだろう」
「そうだ」
「建物ごと破壊する気か」
「必要なら」
「......」
マルティネスが口を挟んだ。
「俺のM240も持っていく」
「お前も機関銃を持っていたのか」
「大佐にもらった」
「いつの間に」
「先週だ」
「......大佐は何丁配ったんだ」
「数えていない」
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柏木は全員を見渡した。
十五人。
全員が重武装になっていた。
最初は、スーツにベレッタだった。
今は、プレートキャリアに自動小銃、機関銃、狙撃銃、ガトリングガン。
「大佐の趣味に付き合った結果だな」
「悪くない」
ニコライが言った。
「火力があれば、生き残れる」
「そうだな」
「だから、大佐に感謝しろ」
「している」
柏木は煙草を取り出した。
「だが、俺はベレッタ一丁でいい」
「相変わらずだな」
「相変わらずだ」
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翌朝。
ターク県に向けて出発した。
UH-1が一機。Hiluxが四台。Fortunerが一台。
ヘリにはM134とM60。
Hiluxの一台にはGAU-19。
残りの車両にも、機関銃が積まれていた。
「軍隊みたいだな」
ファリダーが言った。
「軍隊より強い」
ニコライが答えた。
「俺たちは十五人だ。だが、火力は百人分ある」
「百人分......」
「大佐のおかげだ」
「......そうですね」
ファリダーは少し笑った。
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車列が北へ向かう。
山道を登っていく。
次の戦いが待っている。
二百人の敵。
十五人の味方。
だが、誰も不安を感じていなかった。
火力は正義だ。
大佐の言葉が、全員の心に刻まれていた。




