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The Man Who Would Not Die: 死んでたまるか  作者: Operator3118
第2章 捜査班
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第12話 掃討

二ヶ月が過ぎた。


 柏木班は止まらなかった。


---


 メーサイ。製造拠点。


 午前四時。ヘリが接近した。


 M134ミニガンが火を噴いた。毎分六千発。監視塔が粉砕された。


 「降下」


 五人が降下。


 三十分で制圧。


 敵八十七人確保。麻薬六十億バーツ相当押収。


---


 チェンライ。密輸拠点。


 午前三時。車両が突入した。


 サイレンを鳴らしながら。パトライトを回しながら。


 正面から。


 敵は逃げようとした。


 裏口にマリーがいた。八百メートル先から。


 三人が倒れた。足を撃たれて。


 「殺すなと言っただろう」


 「殺していない。足だ」


 「......」


 二十分で制圧。


 敵五十三人確保。武器二百丁押収。


---


 メーホンソン。製造拠点。


 午前二時。ヘリが接近した。


 敵がRPGを撃ってきた。


 イーゴリが急旋回。回避。


 「撃ち返せ」


 M60が火を噴いた。RPGの射手が倒れた。


 降下。突入。制圧。


 四十五分。


 敵百二十一人確保。麻薬九十億バーツ相当押収。


---


 二ヶ月で、十二の拠点を制圧した。


 敵の確保者は合計八百人以上。


 押収した麻薬は、末端価格で五百億バーツを超えた。


 死者は敵側で三十七人。味方はゼロ。


 もはや、捜査班ではなかった。


 特殊部隊だった。


---


 チェンマイ。柏木班の拠点。


 ジョンソンがHiluxの前に立っていた。


 荷台に、巨大な銃が据え付けられている。


 GAU-19。.50口径のガトリングガン。


 「......何だ、これは」


 柏木が聞いた。


 「大佐からの贈り物だ」


 「贈り物」


 「そうだ。『ヘリには載らないが、車には載る』と言っていた」


 「......」


 ジョンソンは嬉しそうだった。


 「毎分二千発だぞ。.50口径だぞ。壁も車も貫通する」


 「分かった」


 「分かったか」


 「分かった。だが、使う場面があるのか」


 「作る」


 「......」


---


 ニコライが近づいてきた。


 「俺にも何か来ないのか」


 「何が欲しい」


 「Yak-Bは無理だろうな」


 「無理だ」


 「なら、PKMでいい」


 「PKM?」


 「ソ連製の汎用機関銃だ。7.62ミリ。信頼性が高い」


 「大佐に頼んでみろ」


 「頼む」


 三日後、PKMが届いた。


 大佐からのメモが添えられていた。


 『部品の調達は難しいが、何とかした。壊すな』


---


 ヨナタンにも届いた。


 ネゲヴ。イスラエル製の軽機関銃。


 「頼んでいないが」


 「大佐からだ」


 「なぜ」


 「『イスラエル人にはイスラエル製を』と言っていた」


 「......変な人だな」


 「否定はしない」


---


 マリーには新しいスコープが届いた。


 Schmidt & Bender PM II。最高級品。


 「これは高いぞ」


 「大佐からだ」


 「いくらする」


 「聞くな」


 マリーはスコープを取り付けた。


 「......千メートルでも外さなくなった」


 「八百メートルじゃなかったのか」


 「千メートルになった」


 「......」


---


 大佐は気前が良かった。


 良すぎた。


 チャイロン少佐が頭を抱えていた。


 「予算が......」


 「大佐が何とかすると言っていた」


 「何とかしすぎだ」


 「......」


---


 だが、本当に大変だったのは、王宮警察の専任部隊だった。


 後方支援。五十人規模。


 彼らの仕事は、柏木班が制圧した拠点を引き継ぐことだった。


---


 バンコク。王宮警察本部。


 専任部隊の隊長、ソムチャート中佐が報告書を書いていた。


 目の下に隈がある。三日間、まともに寝ていない。


 「また制圧か」


 部下が入ってきた。


 「メーホンソンです。百二十一人確保」


 「百二十一人」


 「はい」


 「輸送車両は」


 「足りません」


 「足りないのは分かっている。どうする」


 「二往復します」


 「時間は」


 「十二時間」


 「......」


 ソムチャートは頭を抱えた。


---


 専任部隊の仕事は多岐にわたった。


 逮捕者の輸送。取り調べ。証拠の収集。押収品の管理。裁判への引き渡し。


 柏木班が一つの拠点を制圧するたびに、専任部隊は一週間分の仕事を抱え込む。


 柏木班は二ヶ月で十二の拠点を制圧した。


 つまり、十二週間分の仕事が、二ヶ月で降ってきた。


 「追いつかない」


 ソムチャートは呟いた。


 「人員を増やせませんか」


 「申請している。だが、承認が降りない」


 「なぜ」


 「予算が武装に回っているからだ」


 「武装......」


 「大佐がミニガンやら何やら買い込んでいるせいで、人件費が削られた」


 「......」


---


 倉庫も足りなかった。


 押収した麻薬は、証拠として保管する必要がある。


 五百億バーツ相当の麻薬。


 トラック何台分にもなる。


 「倉庫が満杯です」


 「借りろ」


 「どこから」


 「知らん。何とかしろ」


 「......」


---


 取り調べも追いつかなかった。


 八百人以上の逮捕者。


 一人一人に尋問が必要だ。


 通訳も必要だ。タイ語、ミャンマー語、中国語、ラオス語。


 「通訳が足りません」


 「探せ」


 「探しています。だが、犯罪組織の取り調べができる通訳は少ない」


 「金を積め」


 「予算が」


 「また予算か」


 「武装に回っています」


 「......」


---


 ソムチャートは大佐に直訴した。


 「人員を増やしてください」


 「予算がない」


 「武装を減らせば」


 「却下だ」


 「しかし」


 「火力は正義だ」


 「......」


 ソムチャートは諦めた。


---


 だが、大佐も無慈悲ではなかった。


 翌週、二十人の増員が承認された。


 「どこから予算を」


 「別の部署から借りた」


 「借りた......」


 「返す当てはある。押収した現金だ」


 「押収した現金を使っていいんですか」


 「手続きを踏めば使える」


 「......」


 大佐のやり方は強引だった。だが、結果は出ていた。


---


 チェンマイ。柏木班の拠点。


 柏木は報告書を読んでいた。


 「後方支援が追いつかないらしい」


 サラが言った。


 「聞いた」


 「ペースを落とすか」


 「落とさない」


 「なぜ」


 「敵に立て直す時間を与えるからだ」


 「後方が崩壊したら、俺たちも動けなくなる」


 「崩壊させない。大佐が何とかする」


 「また『何とかする』か」


 「そうだ」


 サラは少し笑った。


 「あなた、大佐を信頼しているのね」


 「信頼している」


 「なぜ」


 「俺を怒鳴りつけた人間だからだ」


 「それが理由?」


 「本気で心配してくれた。だから信頼できる」


 「......なるほどね」


---


 夜。


 全員が食堂に集まっていた。


 川島が地図を広げた。


 「次の目標です」


 「どこだ」


 「ターク県。ミャンマー国境沿いの集積拠点です」


 「規模は」


 「過去最大です。構成員は二百人以上と推定されています」


 沈黙が落ちた。


 「二百人か」


 ニコライが呟いた。


 「俺たちは十五人だ」


 「問題あるか」


 柏木が聞いた。


 「ない」


 ニコライは笑った。


 「ミニガンがある。PKMがある。GAU-19がある。火力は十分だ」


 「火力だけで勝てるか」


 「勝てる。火力は正義だ」


 「......大佐に毒されたな」


 「否定はしない」


---


 ジョンソンが言った。


 「GAU-19の出番だな」


 「本当に使うのか」


 「使う。二百人相手なら、必要だ」


 「壁も車も貫通するんだろう」


 「そうだ」


 「建物ごと破壊する気か」


 「必要なら」


 「......」


 マルティネスが口を挟んだ。


 「俺のM240も持っていく」


 「お前も機関銃を持っていたのか」


 「大佐にもらった」


 「いつの間に」


 「先週だ」


 「......大佐は何丁配ったんだ」


 「数えていない」


---


 柏木は全員を見渡した。


 十五人。


 全員が重武装になっていた。


 最初は、スーツにベレッタだった。


 今は、プレートキャリアに自動小銃、機関銃、狙撃銃、ガトリングガン。


 「大佐の趣味に付き合った結果だな」


 「悪くない」


 ニコライが言った。


 「火力があれば、生き残れる」


 「そうだな」


 「だから、大佐に感謝しろ」


 「している」


 柏木は煙草を取り出した。


 「だが、俺はベレッタ一丁でいい」


 「相変わらずだな」


 「相変わらずだ」


---


 翌朝。


 ターク県に向けて出発した。


 UH-1が一機。Hiluxが四台。Fortunerが一台。


 ヘリにはM134とM60。


 Hiluxの一台にはGAU-19。


 残りの車両にも、機関銃が積まれていた。


 「軍隊みたいだな」


 ファリダーが言った。


 「軍隊より強い」


 ニコライが答えた。


 「俺たちは十五人だ。だが、火力は百人分ある」


 「百人分......」


 「大佐のおかげだ」


 「......そうですね」


 ファリダーは少し笑った。


---


 車列が北へ向かう。


 山道を登っていく。


 次の戦いが待っている。


 二百人の敵。


 十五人の味方。


 だが、誰も不安を感じていなかった。


 火力は正義だ。


 大佐の言葉が、全員の心に刻まれていた。

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