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The Man Who Would Not Die: 死んでたまるか  作者: Operator3118
第2章 捜査班
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第10話 錬成

チェンマイ郊外。


 王宮警察が用意した訓練施設。元は陸軍の演習場だった場所だ。


 十五人が集まっていた。


 一ヶ月の訓練が始まる。


---


 初日。


 柏木は全員を射撃場に集めた。


 「まず、武装を決める」


 テーブルの上に、様々な銃が並んでいた。予算が下りた。各自に合った武器を選べるようになった。


 「基本装備はHK416。タイ軍の制式小銃だ。だが、強制はしない。使い慣れた銃があるなら、それを使え」


---


 一人ずつ、武器を選んでいった。


 ニコライはAK-103を手に取った。


 「これがいい」


 「ロシア製か」


 「慣れている。二十年使ってきた」


 「弾薬の互換性は」


 「7.62ミリ。敵もAKを使っている。弾は現地調達できる」


 柏木は頷いた。


 「いいだろう」


---


 ジョンソンはHK416を選んだ。


 「これで十分だ」


 サイドアームを見た。


 「SIG P226はあるか」


 「ある」


 「これにする。米軍で使い慣れた」


---


 マルティネスもHK416。


 「俺も同じだ」


 サイドアームはグロック19。


 「コンパクトで使いやすい」


---


 サラはHK416のコンパクトモデルを選んだ。


 「私は体が小さいから、これがいい」


 サイドアームはグロック19。


 「同じ理由で」


---


 ファリダーはHK416。


 「タイ軍と同じ銃なら、訓練も受けやすい」


 サイドアームはSIG P320。


 「警察学校で使っていました」


---


 川島はHK416を手に取った。


 「自衛隊では89式でしたが、これも悪くない」


 サイドアームはグロック17。


 「シンプルなのが好きです」


---


 ヨナタンは別の銃を見ていた。


 「タボールはあるか」


 「イスラエル製か。ある」


 IWI Tavorを手に取った。ブルパップ式のアサルトライフル。


 「これがいい。モサドで使っていた」


 サイドアームはJericho 941。


 「これもイスラエル製だ」


 ニコライが言った。


 「お前、イスラエルが嫌いなんじゃなかったのか」


 「国は嫌いだ。銃は好きだ」


---


 マリーはテーブルの端を見た。


 「狙撃銃は」


 柏木は別のケースを開けた。


 Accuracy International AXMC。.338ラプアマグナム弾。


 マリーは銃を手に取った。スコープを覗いた。


 「いい銃だ」


 「八百メートルで外さないと言ったな」


 「言った」


 「証明しろ」


 マリーは少し笑った。


 「いいだろう」


---


 支援要員にも武器を配った。


 イーゴリとダニエルにはグロック19。パイロットと整備士は自衛用で十分だ。


 エイブラハムにはMP5とグロック17。運転手は車内での戦闘もあり得る。サブマシンガンが適切だ。


 カルロスにはグロック19。通信士は両手が塞がることが多い。軽い拳銃がいい。


 ナターシャとラッタナーには、グロック26。コンパクトな拳銃。使う機会はないかもしれないが、念のため。


---


 アレクセイはグロック19を受け取った。


 「俺は医者だ。撃つより治す方が得意だ」


 「それでも持っておけ」


 「分かっている」


---


 柏木はベレッタM92FSをホルスターから抜いた。


 「俺はこれだけだ」


 「ライフルは持たないのか」


 ジョンソンが聞いた。


 「持たない」


 「なぜだ」


 「必要ない。近距離で戦う。敵の武器を奪う。それが俺のやり方だ」


 マリーが言った。


 「狂っているな」


 「よく言われる」


---


 射撃訓練が始まった。


 まず、全員が基本的な射撃能力を確認された。


 ジョンソン、マルティネス、川島は正確だった。軍人としての訓練が生きている。


 ニコライは速かった。照準は少し荒いが、連射の速度が異常だ。


 サラは安定していた。一発一発が正確に中心を捉える。


 ファリダーは少し緊張していた。警察学校以来の実弾射撃だ。だが、基礎はできている。


 ヨナタンは無表情で撃った。全弾が中心に集まっていた。元モサドは伊達じゃない。


 マリーの番が来た。


 八百メートル先の標的。


 一発。


 命中。


 二発目。


 命中。


 三発目。


 命中。


 ジョンソンが口笛を吹いた。


 「本物だな」


 「言っただろう」


---


 支援要員も射撃訓練を受けた。


 イーゴリは意外と上手かった。


 「パイロットも射撃訓練はあるんだ」


 ダニエルは普通だった。


 「整備士だからな。撃つより直す方が得意だ」


 エイブラハムは荒かった。


 「トラックの運転手だぞ。銃は専門外だ」


 「だから訓練する」


 柏木が言った。


 カルロスは正確だった。


 「メキシコ軍でも撃っていたからな」


 ナターシャとラッタナーは、基礎から教える必要があった。


 「握り方はこうだ」


 サラが二人に教えた。


 「引き金は、ゆっくり引く。一気に引かない」


---


 二日目。


 近接戦闘訓練。


 柏木が教官になった。


 「CARシステムを教える」


 全員が集まった。


 「これは近接戦闘向けの射撃スタイルだ。銃を体の中心に引き付ける。腕を伸ばして狙うんじゃない。体ごと目標に向ける」


 柏木は実演した。


 構える。体の軸を標的に向ける。撃つ。


 五メートル先の標的に命中。


 「遠距離には向かない。だが、五メートル以内なら、これが最速だ」


 ジョンソンが試した。


 「難しいな」


 「慣れだ。体に染み込ませろ」


---


 午後。


 模擬戦闘訓練。


 二チームに分かれて、建物の中で戦う。


 Aチーム:柏木、ニコライ、ジョンソン、川島。


 Bチーム:マルティネス、サラ、ヨナタン、ファリダー。


 ペイント弾を使う。


 結果。


 Aチームの勝利。だが、僅差だった。


 「Bチームも悪くない」


 柏木が言った。


 「ヨナタンの動きが読めなかった」


 ニコライが認めた。


 「モサドの訓練は、お前たちとは違う」


 ヨナタンが答えた。


 「どう違う」


 「教えない」


 「......」


---


 三日目。


 通信訓練。


 川島とカルロスが中心になった。


 「無線の使い方を教える」


 全員にイヤピースとマイクが配られた。


 「戦闘中は、短く話せ。『敵、三人、右側』。それだけでいい。長い説明は要らない」


 「了解」


 「コールサインを決める。柏木さんは『リーダー』。ニコライは『ベア』。ジョンソンは『イーグル』......」


 ニコライが口を挟んだ。


 「なぜ俺がベアなんだ」


 「ロシア人だから」


 「安直だな」


 「分かりやすい方がいい」


---


 一週間が過ぎた。


 チームは少しずつまとまり始めていた。


 だが、問題もあった。


---


 夜。


 食堂でトラブルが起きた。


 ニコライとヨナタンが睨み合っていた。


 「お前、何を言った」


 ニコライの声が低い。


 「事実を言っただけだ。ロシア軍はウクライナで虐殺をした」


 「俺はその軍を抜けた」


 「抜けても、過去は消えない」


 「お前に何が分かる」


 「分かる。俺もイスラエルを出た。同じだ」


 「同じじゃない」


 二人の間に緊張が走った。


 柏木が間に入った。


 「やめろ」


 「柏木——」


 「やめろと言った」


 柏木は二人を見た。


 「お前たちの過去は、俺には関係ない。ここでは、全員が同じチームだ。過去の国籍も、過去の所属も、関係ない」


 「......」


 「それが嫌なら、出ていけ。二人とも」


 沈黙があった。


 ニコライが先に引いた。


 「......分かった」


 ヨナタンも頷いた。


 「分かった」


 「握手しろ」


 二人は渋々、手を握った。


 「これで終わりだ。二度と蒸し返すな」


---


 別の夜。


 マリーが一人で射撃場にいた。


 夜間射撃の練習をしている。


 柏木が近づいた。


 「眠れないのか」


 「眠れない」


 「理由は」


 「ない。いつもそうだ」


 柏木は隣に立った。


 「外人部隊では、何があった」


 「......色々だ」


 「話したくないか」


 「話したくない」


 「分かった」


 柏木は煙草を取り出した。


 「お前は、なぜここに来た」


 「言っただろう。面白そうだったから」


 「それだけか」


 「......」


 マリーは銃を下ろした。


 「外人部隊を辞めてから、居場所がなかった」


 「......」


 「フランスには戻れない。家族とは縁を切った。友人もいない」


 「ここには」


 「分からない。でも、お前たちは......悪くない」


 柏木は煙草を吸った。


 「俺も同じだった」


 「何が」


 「日本を出た時、どこにも居場所がなかった。ここに来て、初めて見つけた」


 マリーは柏木を見た。


 「お前は、いい指揮官だな」


 「そうか」


 「そうだ。部下のことを見ている」


 「当然だ」


 「当然じゃない。外人部隊の指揮官は、部下を駒としか見ていなかった」


 「俺は違う」


 「分かっている。だから、ここにいる」


---


 二週間が過ぎた。


 チームはまとまってきた。


 模擬戦闘の結果が良くなった。通信のミスが減った。連携がスムーズになった。


 ニコライとヨナタンは、まだぎこちないが、戦闘中は完璧に連携した。


 「個人的な感情と、仕事は別だ」


 ヨナタンが言った。


 「同感だ」


 ニコライが答えた。


---


 三週間目。


 ヘリとの連携訓練。


 イーゴリがUH-1を操縦した。


 「久しぶりだな、この感覚」


 「大丈夫か」


 ダニエルが聞いた。


 「大丈夫だ。体が覚えている」


 ヘリが離陸した。


 戦闘要員が乗り込んで、降下訓練を行った。


 ロープを使って、素早く地上に降りる。


 「速度を上げろ。敵に狙われる時間を減らせ」


 柏木が指示した。


 何度も繰り返した。


 夕方には、全員が十秒以内に降下できるようになった。


---


 四週間目。


 総合演習。


 模擬的な麻薬製造拠点を作り、全員で突入訓練を行った。


 ヘリで接近。降下。突入。制圧。撤収。


 すべてを通しで行う。


 結果。


 成功。


 死者役はゼロ。負傷者役は二人。許容範囲内だ。


 「よくやった」


 柏木が言った。


 「これで実戦に出られるか」


 ジョンソンが聞いた。


 「出られる」


 「次の標的は」


 「決まっている。ゴールデン・トライアングルの中心部。ミャンマー国境近くの製造拠点だ」


 「規模は」


 「今までで最大。構成員は百人以上」


 沈黙があった。


 「百人か」


 ニコライが呟いた。


 「俺たちは十五人だ」


 「問題あるか」


 「ない」


 ニコライは笑った。


 「面白くなってきた」


---


 訓練最終日の夜。


 全員が食堂に集まった。


 酒が出た。訓練中は禁止されていたが、今日だけは特別だ。


 「乾杯しよう」


 ジョンソンが言った。


 「何に」


 「チームに。俺たちに」


 十五人がグラスを掲げた。


 「チームに」


 声が重なった。


 柏木は少し離れた場所で、水を飲んでいた。酒は飲まない。


 サラが近づいてきた。


 「一人で何をしているの」


 「見ている」


 「何を」


 「チームを」


 サラは全員を見た。


 日本人。ロシア人。アメリカ人。イスラエル人。フランス人。メキシコ人。タイ人。


 バラバラの過去を持つ人間たちが、笑い合っている。


 「一ヶ月前は、他人だったのにね」


 「今は違う」


 「違うわね」


 柏木は煙草に火をつけた。


 「明日から、本番だ」


 「怖い?」


 「怖くない」


 「嘘でしょう」


 「嘘じゃない。このチームなら、やれる」


 サラは柏木を見た。


 「あなた、変わったわね」


 「また言うのか」


 「何度でも言うわ。最初に会った時より、ずっと人間らしくなった」


 「......」


 「いいことよ」


 サラは微笑んで、全員の輪に戻っていった。


 柏木は一人で、煙草を吸った。


 明日から、本番だ。


 ゴールデン・トライアングル。


 百人以上の敵。


 十五人で挑む。


 勝てる。


 そう確信していた。

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