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The Man Who Would Not Die: 死んでたまるか  作者: Operator3118
第2章 捜査班
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第6話 衝突

二週間で、六つの組織を潰した。


 麻薬。人身売買。武器密輸。賭博。恐喝。売春。


 バンコクの裏社会は震え上がっていた。


 だが、別の場所でも怒りが渦巻いていた。


---


 朝。十時。


 捜査本部のビル。


 柏木はオフィスでコーヒーを飲んでいた。紅色のベストにシャツ。ネクタイはまだ締めている。作戦は夜だ。


 ニコライが向かいに座っている。チャコールグレーのスーツに黒のタートルネック。無精髭が少し伸びていた。モスクワの冬を思わせる重厚なスタイルだ。


 アレクセイはソファで医療器具の点検をしていた。ダークオリーブのジャケットにポケットの多いベスト。白いシャツの袖を捲り上げている。義足は隠していない。実用性重視。戦場の軍医がそのまま民間に来たような格好だった。


 ファリダーはデスクで書類を整理していた。ネイビーのパンツスーツに、タイシルクのブラウス。深い紫に金の刺繍が入っている。髪は後ろで束ねている。唯一のタイ人として、誇りを見せていた。


 ジョンソンとマルティネスは会議室で地図を広げていた。


 ジョンソンは黒のスリーピーススーツ。白いシャツに黒のネクタイ。左手に金の腕時計が光っている。アメリカの刑事ドラマに出てきそうな正統派スタイルだ。白い顎髭が貫禄を添えていた。


 マルティネスはブラウンの革ジャケットに黒のスラックス。中はヘンリーネックのシャツ。首にシルバーのクロスネックレスが揺れている。チームで一番ラフな格好だが、動きやすさを重視している。


 サラは窓際で電話をしていた。黒のパンツスーツ。シャープなシルエット。白いシャツの第一ボタンを開けている。金髪は肩で切り揃えられていた。チェンマイにいた頃より手入れされている。


 二週間で、全員に個性が出てきた。


 柏木の紅色のベストに引っ張られて、最初は全員が黒いスーツだった。だが慣れてきた。自分のスタイルを見つけ始めた。


 それでいい。


 柏木はそう思っていた。


---


 外で車の音がした。


 複数。エンジンを切る音。扉を閉める音。


 足音が近づいてくる。複数の足音。


 柏木はコーヒーカップを置いた。


 玄関のドアが蹴り開けられた。


---


 男たちが入ってきた。


 十人以上いた。全員が警察の制服を着ている。バンコク警察だ。


 先頭に立っていたのは、五十代の男だった。大佐の階級章をつけている。顔が赤い。怒っている。


 「お前たちか!」


 男が叫んだ。


 柏木は立ち上がった。


 「誰だ」


 「バンコク警察のソムチャイ大佐だ!」


 「用件は」


 「用件だと? ふざけるな!」


 ソムチャイは柏木に詰め寄った。


 「お前たちは何者だ! バンコクで何をしている!」


 柏木は動かなかった。


 「答えろ!」


 「対犯罪組織捜査班だ」


 「聞いたことがない!」


 「聞いたことがないのは、お前の問題だ」


 ソムチャイの顔がさらに赤くなった。


---


 ニコライが立ち上がった。ジョンソンとマルティネスも会議室から出てきた。


 警察官たちが銃に手をかけた。


 「動くな!」


 ソムチャイが叫んだ。


 柏木は片手を上げた。仲間を止める合図だ。


 「落ち着け」


 「落ち着けだと? お前たちが我々の管轄で勝手に動き回っているんだ! 六つの組織を潰した! 逮捕者は百人以上! 我々には何の連絡もなかった!」


 「連絡する義務はない」


 「何だと」


 「俺たちは独立した部隊だ。バンコク警察の指揮下にはない」


 「嘘をつくな! そんな部隊は存在しない!」


 ソムチャイは一歩近づいた。


 「お前たち、汚職政治家の回し者だろう! ライバル組織を潰して、自分たちの縄張りを広げているんだ!」


 「違う」


 「違わない! 証拠がある!」


 「証拠」


 「お前たちが潰した組織のボスは、全員が政敵だった! ソムサックはパイブーン派だ! チャイヨンはスラチャイ派だ! 全員が同じ派閥だ!」


 柏木は黙った。


 「答えられないだろう! お前たちは別の派閥に雇われた傭兵だ! 政治の道具だ!」


---


 サラが前に出た。


 「待って」


 「何だ、お前は」


 「元米軍CIDよ。犯罪捜査のプロ」


 「アメリカ人が何の関係がある」


 「関係がある。あなたの言っていることは、論理的に成り立たない」


 「何だと」


 サラは腕を組んだ。


 「もし私たちが特定の派閥の回し者なら、なぜ六つも組織を潰す必要があるの? 一つか二つ潰せば十分でしょう。縄張りを広げるなら、全部潰す必要はない」


 「それは——」


 「それに、私たちは押収した麻薬や金を一銭も持っていない。全部王宮警察に引き渡している。傭兵なら、報酬を受け取るはず」


 ソムチャイは言葉に詰まった。


 サラが続けた。


 「あなたが怒っている本当の理由は、別にあるんじゃない?」


 「何が言いたい」


 「あなたの部下の中に、潰された組織から金をもらっていた人間がいる。その収入が絶たれた。だから怒っている」


 ソムチャイの顔が引きつった。


 「侮辱か」


 「事実よ」


---


 緊張が高まった。


 警察官たちが銃を抜こうとした。


 その時、玄関に別の車が停まる音がした。


 足音。


 ナロンが入ってきた。後ろにウィチャイ大佐がいた。


 全員が動きを止めた。


---


 ウィチャイ大佐は、ソムチャイを見た。


 表情がない。だが、目は冷たかった。


 「ソムチャイ大佐」


 「ウィチャイ大佐......」


 ソムチャイの声が小さくなった。


 「何をしている」


 「この者たちは——」


 「この者たちは、私の部下だ」


 沈黙が落ちた。


 「私の指揮下で動いている。王宮警察の正式な部隊だ」


 「王宮警察......」


 「そうだ。お前に報告する義務はない」


 ソムチャイの顔から血の気が引いた。


 王宮警察。その意味を理解した。


 御方の意思だ。


 逆らえない。


---


 「し、しかし——」


 「しかしも何もない」


 ウィチャイは一歩前に出た。


 「お前は今、王宮警察の施設に無断で侵入した。扉を蹴り破った。武器を構えた。これは重大な違反だ」


 「私は——」


 「言い訳は聞かない」


 ウィチャイはソムチャイの目を見た。


 「お前の部下の中に、犯罪組織から金を受け取っている者がいる。リストは既に作成されている」


 ソムチャイの顔が青ざめた。


 「今すぐ帰れ。そして、二度とここに来るな。次に来たら、お前も逮捕する」


 「......」


 「聞こえなかったか」


 「......聞こえました」


 ソムチャイは部下を見た。


 「撤収だ」


 警察官たちが動き始めた。銃を収めて、外に出ていく。


 ソムチャイは最後に柏木を見た。


 「覚えておけ」


 柏木は答えなかった。


 ソムチャイは出ていった。


---


 静かになった。


 ウィチャイ大佐が柏木を見た。


 「怪我は」


 「ない」


 「そうか」


 「......助かった」


 「助けたわけではない。来る予定だった。ソムチャイが先に来ただけだ」


 「何の用だ」


 「新しい指令がある」


 ウィチャイは封筒を差し出した。


 柏木は受け取った。


 「バンコクの掃討は順調だ。だが、予定を変更する」


 「変更」


 「チェンマイに行け」


 柏木は封筒を見た。


 「チェンマイで何がある」


 「麻薬の製造拠点だ。ゴールデン・トライアングルからの流通ルートがある。そこを潰せ」


 「バンコクはどうする」


 「残りの組織は、王宮警察が処理する。お前たちは、より大きな標的に向かえ」


 柏木は頷いた。


 「分かった」


---


 ウィチャイとナロンが去った後、全員が集まった。


 「チェンマイか」


 ジョンソンが言った。


 「ゴールデン・トライアングルの入り口だ」


 サラが付け加えた。


 「規模が違う。バンコクの組織とは比べ物にならない」


 マルティネスが腕を組んだ。


 「面白くなってきた」


 ニコライが言った。


 「面白いかどうかは分からない。危険なのは確かだ」


 アレクセイが言った。


 ファリダーが聞いた。


 「私たちだけで対処できるんですか」


 「できる」


 柏木が答えた。


 「根拠は」


 「俺たちは二週間で六つの組織を潰した。誰も死んでいない。チームとして機能している」


 「それは——」


 「自信を持て。お前たちは強い」


 柏木は全員を見渡した。


 「チェンマイに行く。準備しろ。二日後に出発だ」


 「了解」


 全員が答えた。


---


 夜。


 柏木は屋上で煙草を吸っていた。


 サラが来た。


 「考え事?」


 「少し」


 「ソムチャイのこと?」


 「違う。あいつはどうでもいい」


 「じゃあ何?」


 柏木は煙を吐いた。


 「俺たちは目立ちすぎている」


 「仕方ないでしょう。派手にやれと言われたんだから」


 「派手にやった結果、敵が増えた」


 「敵?」


 「犯罪組織だけじゃない。警察の中にも敵がいる。政治家の中にも」


 サラは頷いた。


 「汚職ネットワークね」


 「そうだ。俺たちが組織を潰すたびに、誰かの収入が消える。それを恨む人間がいる」


 「気にするの?」


 「気にしない。だが、警戒はする」


 柏木は煙草を灰皿に押し付けた。


 「チェンマイでは、もっと大きな敵と戦うことになる。バンコクの比じゃない」


 「分かっている」


 「分かっているなら、いい」


 サラは空を見上げた。


 「私、ここに来てよかった」


 「なぜだ」


 「やっと、正しいことをしている気がするから」


 柏木はサラを見た。


 「お前は最初から正しいことをしていた」


 「そうかしら」


 「そうだ。CIDを辞めさせられたのは、お前が正しかったからだ。間違っていたのは、上の連中だ」


 サラは少し笑った。


 「あなたに言われると、信じられる気がする」


 「信じろ」


 「信じるわ」


 二人は黙って、バンコクの夜景を見た。


 二日後、チェンマイに向かう。


 新しい戦いが始まる。


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