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The Man Who Would Not Die: 死んでたまるか!  作者: Operator3118
最終章
142/142

終話 The Man Who Would Not Die!


 一週間前、瀧本勝幸が死んだ。

 任務中の事故。詳細は非公開。それだけが発表された。

 世界中のメディアが報じた。BBC、CNN、Al Jazeera、NHK。すべてが同じニュースを流した。

 「18発の男」が死んだ、と。

      ◆

 バンコク。王室墓地。

 外国人がここに埋葬されるのは、タイの歴史上初めてのことだった。

 石畳の道に黒い車列が並んでいる。各国の大使館車両。報道各社の中継車。カメラが墓地を囲み、レポーターたちがマイクを握っている。

 墓地の中央に、白い花で埋め尽くされた祭壇。その中央に、黒い棺。

 蓋は閉じられたままだった。

 最前列に、国王陛下が立っていた。

 白い礼服。胸には勲章。表情は厳粛で、微動だにしない。

 隣には王妃陛下。白い喪服を纏い、静かに目を伏せている。

 参列者の中に、見覚えのある顔がいくつもあった。

 ジャン=クロード・ヴァンダム。黒いスーツ。顔は硬い。目は乾いている。

 トニー・ジャー。石像のように動かない。涙は流れていない。

 イコ・ウワイス。腕を組んで立っている。

 サモ・ハン・キンポー。静かに棺を見つめている。泣いてはいない。

 ドニー・イェン。サングラスをかけている。

 スコット・アドキンス。直立不動。

 マイケル・ジェイ・ホワイト。腕を組んでいる。

 全員、泣いていない。

 その隣に、ライアン・レイノルズがいた。

 彼は泣いていた。

 声を殺して、肩を震わせて、涙を流していた。ハンカチで何度も目元を拭っている。

 隣のブレイク・ライブリーが背中をさすっている。

 ドウェイン・ジョンソンも目を潤ませていた。唇を噛んでいる。

 突撃隊のメンバーもいた。

 サラ・コールマン。黒いドレス。泣いてはいない。

 アレクセイ。黒いスーツ。表情は読めない。

 ファリダー・チャンチャイ。時折、腕時計を見ている。

 ヨナタン。陳志明。ナリン。

 全員、泣いてはいない。

 ジョンソンがいない。

 ニコライがいない。

 マルティネスがいない。

 ンゴマがいない。アブドゥルがいない。ジェームズがいない。

 局長がいない。

 報道陣は全社来ている。BBC、CNN、NHK、Al Jazeera。

 Netflixだけがいない。

 葬儀が進む。

 僧侶が経を唱える。

 参列者たちが順番に花を捧げる。

 国王陛下が最初に進み出た。白い花を棺の上に置く。深く一礼する。

 格闘スターたちが続く。

 ヴァンダムは花を置いた。何も言わなかった。棺を見つめて、小さく頷いただけだった。

 トニー・ジャーは合掌した。その目は棺ではなく、どこか遠くを見ていた。

 ライアン・レイノルズは花を置く時、また涙を流した。棺に手を置いて、何かを呟いた。

 全員が花を捧げ終わった。

 僧侶の経が終わった。

 静寂が訪れた。

 その時だった。

 側近の一人が、国王陛下に近づいた。

 手にスマートフォンを持っていた。

 何かを囁く。国王陛下が小さく頷く。

 スマートフォンが、国王の手に渡された。

 国王陛下が耳に当てた。

 「……」

 「……そうか」

 「……」

 「……よくやった」

 「……」

 「……待っている」

 国王陛下の唇が動いた。

 「——我が騎士よ」

 通話が終わった。

 国王陛下はスマートフォンを返した。

 そして——微かに、笑った。








The Man Who Would Not Die: 死んでたまるか!


The END

















 同時刻。

 どこかの山岳地帯。

 岩と砂と、乾いた風。

 空は青かった。

 男が立っていた。

 白いBDU、プレートキャリア、そして白いマフラー。

 四十代半ば。髪は短い。目つきは鋭い。

 彼の周囲に、突撃隊のメンバーが散開していた。


 ジョンソン

 ニコライ

 マルティネス

 ンゴマ

 アブドゥル

 ジェームズ


 そして、局長が双眼鏡を構えている。


 空から音が聞こえた。

 ローター音。

 一機ではない。

 十機。二十機。それ以上。

 UH-60ブラックホーク。CH-47チヌーク。MH-6リトルバード。

 星条旗が描かれている。

 米軍だった。

 次々とヘリが降下してくる。

 ロープが投げられ、兵士たちが滑り降りてくる。完全武装。最新鋭の装備。

 デルタフォース。

 別の方向からも音が聞こえた。

 ユニオンジャック。イギリス軍。

 SASの隊員たちが展開していく。

 さらに別の方向から。

 トリコロール。フランス軍。

 GIGNの文字が見えた。

 ドイツ。GSG-9。

 イスラエル。サイェレット・マトカル。

 オーストラリア。SASR。

 各国の特殊部隊が、次々と降下してくる。

 百人。二百人。それ以上。

 山岳地帯が、黒い影で埋まっていく。


 男の隣に、カメラを担いだ男が立っていた。

 Netflixのマイクだ。

 「……撮っていいか」

 前を向いたまま答えた。

 「好きにしろ」

 デルタフォースの指揮官が近づいてきた。

 敬礼。

 「騎士殿。お待ちしておりました。後始末は我らにお任せを」

 男は敬礼を返しながら言った。

 「敬語はいらん」

 「了解」

 「展開完了は?」

 「二時間後。全部隊の包囲を以て完了します」

 「了解、後始末は頼む」


 男は空を見上げた。

 ヘリが次々と旋回している。

 青い空を、黒い影が横切っていく。

 バンコクの空と、同じ色だった。



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