最終話 世界
Netflixドキュメンタリー『TAKIMOTO II —— 王宮の死闘』が配信された。
配信開始から二十四時間で、視聴回数は三億を超えた。
世界が、反応した。
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Twitter。
「また見てしまった。三回目」
「トゥクトゥクで王宮に突っ込むシーン、何度見ても笑う。いや笑えない。本当にやってる」
「540度回転蹴り、スロー再生で見た。マジで一回転半してる。撃たれた足で」
「ンゴマが心臓三回止まったのに生きてるの、普通に奇跡では」
「ニコライの足、大丈夫なのかな……」
「マルティネスの脇腹の傷、モザイクかかってたけど相当やばかったらしい」
「全員入院してるのに誰も死んでないの、逆に怖い」
「『こんなんで死んでたまるかボケェ』がトレンド入りしてる」
「日本語分からないけど、字幕で見た。最高のセリフ」
「TAKIMOTOのTシャツ、また売り切れてる」
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Reddit。
スレッドタイトル:『TAKIMOTO IIを見た。前作より凄い』
「王宮での戦闘シーン、ドキュメンタリーとは思えない。映画みたいだった」
「映画じゃないんだよ。全部本物」
「カメラマン、よく生きてたな」
「エンドロールで『撮影中に三回撃たれかけた』って出てて笑った」
「笑えないだろ」
「いや、笑うしかない」
「スペツナズの男との戦い、ガチで怖かった。タキモトが何度も投げられてた」
「あの男、本当にスペツナズだったらしい。傭兵として雇われてた」
「サラが足首掴んで隙を作ったシーン、チームワークすぎる」
「540度キック、着地失敗してたけどそれがリアル」
「映画なら着地決めるもんな」
「だから本物なんだよ」
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中国。微博(Weibo)。
「タキモト、また戻ってきた」
「今回は王宮で戦ってる。規模が違う」
「チン・ジーミン(陳志明)、詠春拳使ってた。ドニー・イェンに教わったらしい」
「イップ・マンの再来って言われてた」
「中国人として誇らしい」
「彼は香港系だけどな」
「細かいことはいい」
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韓国。Naver。
「キム・ジュンソとイ・スジン、韓国人だったんだ」
「二人とも寡黙だけど、決める時は決めてた」
「『静かに。抵抗すれば、折る』ってセリフ、かっこよすぎ」
「韓国人キャラがちゃんと活躍してて嬉しい」
「ハリウッド映画だと大体やられ役だからな」
「これ映画じゃないけどな」
「そうだった」
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日本。5ちゃんねる。
スレッドタイトル:『【Netflix】TAKIMOTO II 王宮の死闘【実況】』
「始まった」
「また見るのか」
「見る」
「トゥクトゥクキタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!」
「建物の中まで突っ込んでて草」
「草じゃねえよ」
「黒田って日本人女性、かっこよかった」
「『藤原誠一という名前です。覚えておいてください』ってセリフ、泣いた」
「藤原って前作で死んだ奴か」
「そう。裏切り者に殺された」
「黒田、同郷だったんだな……」
「540度回転蹴りキタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!」
「着地失敗してて草」
「撃たれた足で回ってんだぞ。成功する方がおかしい」
「『こんなんで死んでたまるかボケェ』」
「名言」
「Tシャツ欲しい」
「もう売り切れてる」
「知ってた」
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BBC。ロンドン。
アンカーが原稿を読み上げた。
「Netflixのドキュメンタリー『TAKIMOTO II』が世界的な話題となっています。タイの王室犯罪対策局がテロリストと戦い、汚職政治家を逮捕するまでを追った作品です。配信開始から二十四時間で三億回以上再生されました」
映像が切り替わった。王宮での戦闘シーン。
「特に注目されているのは、王宮での格闘戦です。対策局の隊員たちは重傷を負いながらも、五十人以上のテロリストを制圧しました。九名が入院、一名は心肺停止から蘇生、一名は歩行困難になる可能性があると報じられています」
アンカーが続けた。
「この作品は、現代の法執行機関の在り方について議論を呼んでいます。一部では『英雄的』と称賛される一方、『暴力的すぎる』という批判もあります」
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CNN。アトランタ。
コメンテーターが議論していた。
「これは単なるドキュメンタリーではありません。現実に起きたことです。そして、彼らは本当に命を懸けて戦った」
「しかし、これほどの暴力が必要だったのでしょうか」
「必要だったんです。相手は重武装のテロリストです。銃撃戦を避けるために、格闘戦を選んだ。王宮を守るために」
「結果として、九名が重傷を負いました」
「でも、誰も死ななかった。テロリストも含めて」
「それは奇跡です」
「奇跡じゃない。訓練の成果です」
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Al Jazeera。ドーハ。
「東南アジアの小国で起きた事件が、世界の注目を集めています。タイの王室犯罪対策局は、政治家、軍人、警察幹部を含む二十七名を逮捕しました。一名は逮捕前に自殺しています」
「この事件は、タイの政治に大きな影響を与えると見られています。逮捕された二十七名の中には、現職の警察副長官や元陸軍将軍も含まれています」
「Netflixのドキュメンタリーは、この逮捕劇の全貌を記録しています。世界中で視聴され、タイの汚職問題に国際的な関心が集まっています」
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ロシア。Telegram。
「スペツナズの男が負けた」
「元スペツナズな。傭兵だ」
「それでも負けた」
「相手が悪かった。あの日本人、化け物だ」
「撃たれても立ち上がってた」
「540度蹴り、ヴァンダムに教わったらしい」
「ヴァンダムがSNSで自慢してた」
「あの爺さん、まだ現役なのか」
「現役だ。弟子が実戦で技を使ったって喜んでた」
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ブラジル。WhatsAppグループ。
「見た?」
「見た」
「やばかった」
「マルティネス、ヒスパニック系だよな」
「たぶん」
「脇腹切られても戦ってた。根性ある」
「『こんなんで死んでたまるかボケェ』って言ってた」
「それ日本語だろ」
「字幕で見た」
「感染してるらしい。チーム全員に」
「いい言葉だ」
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インド。Twitter。
「TAKIMOTOがトレンド一位」
「インドでも人気なのか」
「当然だ。アクション映画の国だぞ」
「映画じゃないけどな」
「映画より凄い」
「ボリウッドでリメイクしてほしい」
「歌とダンスが入るぞ」
「それはそれで見たい」
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フランス。Le Monde。
「Netflixのドキュメンタリー『TAKIMOTO II』は、現代のアクション映画を超えた」
「これは映画ではない。現実だ。そして、現実は時として映画よりも過酷で、映画よりも美しい」
「彼らは英雄か、それとも暴力の象徴か。その答えは視聴者に委ねられている」
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ドイツ。Der Spiegel。
「タイの対策局は、半年間にわたって世界的な格闘家から訓練を受けた。その成果が、王宮での戦いで発揮された」
「特筆すべきは、彼らが銃を使わなかったことだ。王宮を守るために、あえて格闘戦を選んだ。その結果、建物への損害は最小限に抑えられた」
「代償は大きかった。九名が重傷を負い、一名は歩行困難になる可能性がある。しかし、死者はいなかった」
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オーストラリア。ABC News。
「タイで起きた『王宮の戦い』は、世界中のメディアで取り上げられています。Netflixのドキュメンタリーは、その全貌を記録しました」
「オーストラリアでも多くの視聴者がこの作品を見ています。SNSでは『TAKIMOTO』がトレンド入りしています」
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メキシコ。Televisa。
「モラレスという男が登場します。元メキシコ連邦警察。麻薬カルテルとの戦いで家族を失った男です」
「彼はタイで、新しい戦いを見つけました。そして、勝ちました」
「メキシコ人として、誇りに思います」
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イスラエル。Ynet。
「コーエンという男が登場する。イスラエル系アメリカ人。元軍事情報部」
「彼の戦い方は効率的だ。無駄がない。我々の訓練の成果が見える」
「しかし、彼は皮肉屋らしい。『正しいことをしてる時に限って撃たれる』と言っていた」
「イスラエル人らしい」
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そして、バンコク。
王宮の前。
レポーターがカメラに向かって立っていた。
背景には、修復中の王宮が見える。壁にはまだ弾痕が残っている。
「私は今、バンコクの王宮の前にいます」
レポーターが話し始めた。
「一週間前、ここで激しい戦闘がありました。五十人以上のテロリストが王宮を襲撃し、対策局の隊員たちがそれを迎え撃ちました」
カメラが王宮を映した。
「彼らは銃を使いませんでした。王宮を守るために。代わりに、拳と足で戦いました。九名が重傷を負いました。一名は心臓が三回止まりました。一名は二度と歩けないかもしれません」
レポーターが続けた。
「でも、誰も死にませんでした。全員が生きています」
風が吹いた。レポーターの髪が揺れた。
「Netflixのドキュメンタリーは、世界中で三億回以上再生されました。タイの小さな対策局が、世界の注目を集めています」
レポーターはカメラを見た。
「彼らは英雄でしょうか。それとも、ただの公務員でしょうか」
少し間を置いた。
「私には分かりません。でも、一つだけ確かなことがあります」
レポーターは王宮を振り返った。そして、また前を向いた。
「彼らは、守りました。この国を。この王宮を。そして、真実を」
「命を懸けて」
風が止んだ。
「バンコクから、お伝えしました」
カメラが引いていく。
王宮が映る。金色の尖塔が、夕日を受けて輝いている。
修復作業が続いている。足場が組まれ、職人たちが働いている。
壁の弾痕は、まだ残っている。
でも、王宮は立っている。
タイは、立っている。




