表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
The Man Who Would Not Die: 死んでたまるか  作者: Operator3118
第6章 灰
113/130

第2話 募集

---


 瀧本勝幸が、復帰した。


 首に包帯。腹にも包帯。顔色は悪い。


 だが、立っていた。


---


 「瀧本、本当に大丈夫なのか」


 「大丈夫だ」


 「首を撃たれて一週間だぞ」


 「一週間経った」


 「普通、動けない」


 「普通じゃないんだろう」


---


 局長は諦めた。この男に常識は通じない。


---


---


 会議室。


 ホワイトボードには問題が並んでいた。


---


 『人員不足』


 『現在:20名』


 『必要:40名』


 『募集方法:???』


---


 参謀たちが頭を抱えている。


 瀧本はホワイトボードを見て、一言。


---


 「全世界に募集かければいいんじゃないか」


---


 全員が固まった。


---


 「MI6もCIAも公募してる。こっちから探すより、来たい奴に来させた方が早い」


---


 五秒。


 十秒。


---


 「それだ!」


---


 局長が叫んだ。会議室が一気に動き出した。


---


---


---


 三日後。


 公式サイトに募集ページが公開された。


---


 『王室犯罪対策局・特殊強襲部隊 隊員募集』


---


 『応募資格』


 ・外国籍であること(タイ人は応募不可)


 ・タイ国籍を取得する意思があること


 ・健康であること


---


---


 ハーパーが首を傾げた。


---


 「タイの部隊なのに、タイ人が入れない?」


---


 「しがらみだ」


---


 局長が答えた。


---


 「タイ人は国内にコネがある。家族がいる。汚職警官から圧力がかかる。政治家から脅される。外国人なら、そういうしがらみがない」


---


---


 ルノーが気づいた。


---


 「犯罪歴の条件がありませんね」


---


 「あったら俺がアウトだ」


---


 瀧本が言った。


---


 「俺は日本から身柄引き渡しを要求されてる。殺人でな」


---


 新人スタッフの顔が引きつった。


---


 「連続強姦殺人犯を射殺した。日本の法律じゃ、それも殺人だ」


---


---


 局長が続けた。


---


 「この部隊には、母国に帰れない人間が多い。法的には犯罪者でも、道義的には正しいことをした奴らだ」


---


---


---


 一週間後。


 応募、三百八十七件。


---


 ハーパーが分析結果を報告した。


---


 「応募者の約25%が、母国で刑事訴追されているか指名手配中です」


---


 「四分の一が追われてる奴か」


---


 瀧本が言った。


---


 「いい傾向だ」


 「いい傾向?」


 「そういう奴は、守ることの意味を知ってる。正義なんか振りかざさない。ただ、目の前の人間を守ろうとして、結果的に法を犯した」


---


 瀧本は窓の外を見た。


---


 「俺と同じだ」


---


---


---


 選考。


 書類で百二十件。体力テストで五十件。実技で二十五件。


 最終面接で、十五件に絞った。


---


---


 面接室。


---


---


 一人目。アメリカ人。元海兵隊。


---


 「なぜ除隊した」


 「命令を拒否した」


 「どんな命令だ」


 「村を焼けと言われた。民間人がいるのに」


---


 男は淡々と続けた。


---


 「俺は拒否した。上官を殴った。軍法会議で不名誉除隊」


 「後悔は」


 「ない。あの村を焼いてたら、俺は自分を許せなかった」


---


 瀧本は頷いた。


---


 「合格だ」


---


---


---


 二人目。日本人。元警視庁SAT。


---


 「なぜ辞めた」


 「瀧本さんと同じです」


---


 男は瀧本を見た。


---


 「人質を取った犯人を射殺した。投降の意思を示してたのに。人質の少女が今にも殺されそうだったから」


 「それで」


 「殺人罪で起訴。執行猶予。警察にはいられなくなった」


 「後悔は」


 「ない。あの少女は今年、大学に入った。手紙をもらった。『ありがとう』と」


---


 瀧本は、小さく笑った。


---


 「合格だ」


---


---


---


 三人目。イギリス人女性。元陸軍衛生兵。


---


 「なぜ除隊した」


 「上官を撃った」


---


 会議室が静まった。


---


 「捕虜を拷問しろと命令された。俺は拒否した。上官が自分でやろうとした。止めるには、撃つしかなかった」


 「殺したのか」


 「足を撃った。殺してない。でも、軍法会議で有罪。不名誉除隊」


 「後悔は」


 「ない。あの捕虜は、ただの農民だった。ゲリラじゃなかった」


---


 瀧本は頷いた。


---


 「合格だ」


---


---


---


 十五人が、新たに加わった。


---


 母国で刑事訴追された者、六人。


 不名誉除隊の者、五人。


 その他、四人。


---


 全員が、何かを守ろうとして、居場所を失った人間だった。


---


---


---


 本部。ブリーフィングルーム。


 新隊員たちが整列していた。


---


 瀧本が前に立った。


---


---


 「俺は瀧本勝幸だ」


---


 新隊員たちが瀧本を見た。


 24発撃たれても死なない男。日本から殺人罪で追われている男。


---


 「お前たちの多くは、母国に帰れない。正しいことをして、罰せられた。俺も同じだ」


---


 沈黙。


---


 「俺たちは、どこにも居場所がない。だから、ここにいる」


---


---


 瀧本は、一度言葉を切った。


---


---


 「一つだけ言っておく」


---


---


 「俺は、正義のために戦ってない」


---


 新隊員たちがざわめいた。


---


 「正義なんか分からない。誰が正しいか、俺には分からない」


---


 「だが、目の前で誰かが傷つけられてたら、止める。それだけだ」


---


---


 「柏木は、正義のために戦ってた。悪を裁くために戦ってた。だから壊れた」


---


 「お前たちは違う。守ろうとして、ここに来た」


---


 「それでいい。それだけでいい」


---


---


 瀧本は、新隊員たちを見渡した。


---


 「ここでは、守ることが許される。法が邪魔しない。上官が邪魔しない」


---


 「目の前で誰かが傷つけられてたら、止めていい」


---


 「それが、この部隊のルールだ」


---


---


 新隊員たちの目が変わった。


---


---


 「あと、死ぬな」


---


 瀧本は付け加えた。


---


 「俺は24発撃たれても死ななかった。来月結婚するからだ」


---


 新隊員たちが、呆気に取られた。


---


 「守りたいものがあるなら、死んでたまるかと思え。以上」


---


---


 隣でスヨンが小さく笑っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ