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The Man Who Would Not Die: 死んでたまるか  作者: Operator3118
第6章 灰
112/131

幕間 脚本会議

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 ロサンゼルス。


 Netflix本社。


 会議室。


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 脚本家たちが、頭を抱えていた。


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 「......どうするんだ、これ」


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 テーブルの上には、資料が散乱していた。


 タイから送られてきた報告書。


 記者会見の映像。


 ニュース記事のコピー。


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 『元総隊長・柏木勇気、反逆罪で死亡』


 『瀧本勝幸、仲間を射殺』


 『突撃隊、内部分裂の全容を公表』


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 プロデューサーが、天井を見上げた。


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 「俺たちは、何を作ろうとしてるんだ......」


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 脚本家Aが、資料を読み上げた。


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 「整理しましょう」


 「整理できるのか、これを」


 「やるしかないでしょう」


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 彼は、ホワイトボードに書き始めた。


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 『瀧本勝幸の被弾歴』


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 ・銃乱射事件:18発


 ・叙任式テロ:2発


 ・強盗事件:1発


 ・ラオス追跡戦:1発(ベスト外)


 ・柏木との戦闘:1発(腹部)


 ・マリーの狙撃:1発(首)


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 『合計:24発』


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 「24発だ」


 「24発......」


 「しかも、首を撃たれて生きてる」


 「心肺停止から蘇生した」


 「『こんなんで死んでたまるかボケェ』って叫んで起き上がった」


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 沈黙。


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 「......脚本に書いても、誰も信じないぞ」


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 脚本家Bが、別の資料を取り上げた。


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 「柏木の件も整理しましょう」


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 『柏木勇気の転落』


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 ・瀧本が騎士に叙される


 ・柏木、ウドンターニーに派遣(本人は左遷と認識)


 ・セックスと暴力に溺れる


 ・女性隊員三人と関係を持つ


 ・部隊運営を放棄


 ・バンコクからの連絡を無視


 ・帰還命令を拒否


 ・ブラボーチームのヘリを撃墜


 ・従わない隊員を射殺


 ・ラオスへ逃亡


 ・瀧本に追いつかれる


 ・瀧本を撃つ


 ・瀧本に射殺される


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 「これ、一人の人間の話か?」


 「一人の話だ」


 「三ヶ月くらいの出来事か?」


 「二週間だ」


 「二週間!?」


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 プロデューサーが、頭を抱えた。


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 「二週間で、ここまで堕ちるのか」


 「堕ちた」


 「なぜだ」


 「瀧本が騎士になったからだ」


 「それだけで?」


 「それだけで、だ」


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 沈黙。


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 「......人間って、脆いな」


 「脆い。特に、強い人間ほど」


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 脚本家Cが、手を挙げた。


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 「一つ、提案があります」


 「何だ」


 「柏木編を、独立したシーズンにしましょう」


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 「独立?」


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 「はい。シーズン1は、瀧本の英雄譚。シーズン2は、柏木の悲劇」


 「悲劇?」


 「そうです。柏木は、悪役じゃない。壊れた英雄です」


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 脚本家Cは、立ち上がった。


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 「柏木は、正義のためにタイに来た。全てを捨てて、戦い続けた」


 「......」


 「だが、認められなかった。騎士になれなかった」


 「......」


 「そして、壊れた。暴力とセックスに溺れた」


 「......」


 「最後は、かつての仲間に殺された」


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 脚本家Cは、窓の外を見た。


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 「これは、悪役の物語じゃない。英雄が堕ちる物語だ」


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 プロデューサーが、考え込んだ。


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 「......面白いかもしれない」


 「面白いです。絶対に」


 「だが、問題がある」


 「何ですか」


 「柏木を演じる俳優だ」


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 沈黙。


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 「誰が演じるんだ、これを」


 「英雄から堕ちていく男を」


 「セックスと暴力に溺れる男を」


 「最後は、仲間に殺される男を」


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 脚本家Aが言った。


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 「相当な演技力が必要ですね」


 「必要だ」


 「日本人俳優で、できる人はいますか」


 「......」


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 プロデューサーが、資料をめくった。


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 「候補は何人かいる。だが......」


 「だが?」


 「この役を引き受けてくれるかどうか」


 「なぜ」


 「役が重すぎる」


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 脚本家Bが、別の問題を提起した。


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 「マリーの扱いも、考えないといけません」


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 『マリー・デュボアの行動』


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 ・柏木を愛していた


 ・柏木に体を許した


 ・柏木についてラオスへ逃亡


 ・瀧本を狙撃(首に命中)


 ・現在、逃亡中


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 「彼女は、まだ捕まっていない」


 「捕まっていない」


 「ということは、続編で登場する可能性がある」


 「ある」


 「どう描くんだ」


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 プロデューサーが、溜息をついた。


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 「愛した男を殺された女が、復讐のために主人公を撃つ」


 「......」


 「しかも、主人公は彼女を許している」


 「許してるんですか?」


 「ああ。瀧本は、恨んでいないと言った」


 「なぜ」


 「『俺がマリーの立場でも、同じことをした』と」


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---


 沈黙。


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 「......瀧本って、本当に人間か?」


 「分からない。もう分からない」


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 脚本家Dが、最大の問題を提起した。


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 「一番の問題は、これです」


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 彼は、資料を掲げた。


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 『瀧本とマルティネス、同時に蘇生』


 『同じ言葉を叫ぶ:「こんなんで死んでたまるかボケェ!」』


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 「これ、どう撮るんですか」


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 沈黙。


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 「二人が、心肺停止から、同時に起き上がる」


 「同じ言葉を叫ぶ」


 「医者が呆然とする」


 「......」


 「これ、コメディですか?」


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 プロデューサーが、頭を抱えた。


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 「シリアスなシーンのはずなんだ」


 「はずなんですけど」


 「どう考えてもコメディだ」


 「コメディですよね」


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 脚本家Aが言った。


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 「いっそ、そのまま撮りましょう」


 「そのまま?」


 「はい。シリアスとコメディの境界線を、ぶち壊す」


 「......」


 「『こんなんで死んでたまるかボケェ』って、真顔で叫ばせる」


 「真顔で」


 「真顔で。そして、周りは呆然とする」


 「......」


 「それが、瀧本とマルティネスなんだ、と」


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 プロデューサーが、考え込んだ。


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 「......それしかないか」


 「それしかないです」


 「現実がぶっ飛んでるんだから、脚本もぶっ飛ばすしかない」


 「そういうことです」


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 会議は、六時間に及んだ。


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 結論。


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 『シーズン1:瀧本の英雄譚(銃乱射事件~騎士叙任)』


 『シーズン2:柏木の悲劇(裏切り~死亡)』


 『シーズン3:マリーの復讐(予定)』


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 脚本は、また一から書き直し。


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 撮影は、また延期。


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 プロデューサーが、呟いた。


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 「瀧本が生きてる限り、脚本は永遠に完成しない」


 「しませんね」


 「あいつ、また何かやるぞ」


 「やるでしょうね」


 「また撃たれるぞ」


 「撃たれるでしょうね」


 「また死にかけるぞ」


 「死にかけるでしょうね」


 「そして、また生き返るぞ」


 「生き返るでしょうね」


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 沈黙。


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 「......もう、ドキュメンタリーでいいんじゃないか」


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 全員が、その言葉に頷いた。


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 後日。


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 Netflix本社から、突撃隊本部に連絡が入った。


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 『ドラマ制作と並行して、ドキュメンタリーシリーズの制作を正式に決定しました』


 『タイトル:「TAKIMOTO ─ 死なない男」』


 『ライアン・レイノルズが、ナレーションを担当します』


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 瀧本は、その報告を聞いて、一言だけ言った。


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 「......なんでやねん」

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