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The Man Who Would Not Die: 死んでたまるか  作者: Operator3118
第6章 灰
111/130

第1話 公表

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 記者会見場。


 フラッシュが瞬いた。


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 局長ウィチャイは、壇上に立っていた。


 マイクの前。


 百人以上の記者が、彼を見つめていた。


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 「本日、皆様にお伝えしなければならないことがあります」


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 局長の声は、静かだった。


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 「王室犯罪対策局・特殊強襲部隊において、重大な事案が発生しました」


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 記者たちがざわめいた。


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 「元総隊長、柏木勇気が――」


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 局長は、一度言葉を切った。


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 「――反逆罪により、死亡しました」


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 会場が、凍りついた。


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 三十分後。


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 記者会見は、修羅場と化していた。


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 「柏木が裏切ったというのは本当ですか!」


 「何人の隊員が死亡したんですか!」


 「瀧本さんの容態は!」


 「なぜ今まで隠していたんですか!」


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 質問が飛び交う。


 フラッシュが止まない。


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 局長は、一つ一つに答えた。


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 「柏木元総隊長は、部隊から離反しました」


 「理由は、調査中です」


 「死亡者は八名。負傷者は六名」


 「瀧本隊員は、重傷ですが、命に別状はありません」


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 記者が叫んだ。


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 「なぜ公表したんですか! 隠蔽もできたはずだ!」


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 局長は、記者を見た。


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 「国民に嘘はつけません」


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 「それは――」


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 「それが、王家だからです」


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 局長の声は、揺らがなかった。


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 「我々は、国王陛下の剣です。陛下は、国民に嘘をつきません。だから、我々も嘘をつきません」


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 会場が、静まり返った。


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 「柏木勇気は、かつて英雄でした」


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 局長は続けた。


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 「彼は、タイのために戦いました。多くの犯罪者を倒しました。多くの命を救いました」


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 「だが、彼は道を誤りました」


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 「その結果、仲間を殺し、国に弓を引きました」


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 「彼は、瀧本勝幸隊員によって射殺されました」


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 記者が手を挙げた。


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 「瀧本さんは、どう思っているんですか」


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 局長は、少し黙った。


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 「彼は、こう言いました」


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 『柏木は英雄だった。だから、英雄のまま殺した』


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 会場が、またざわめいた。


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 翌日。


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 ニュースは、この話題で持ちきりだった。


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 『突撃隊、元総隊長の裏切りを公表』


 『柏木勇気、反逆罪で死亡』


 『瀧本勝幸、仲間を射殺した英雄』


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 SNSでは、様々な意見が飛び交っていた。


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 『柏木って、あの最強の男だろ? 信じられない』


 『瀧本が殺したのか......辛かっただろうな』


 『正直に公表した局長、カッコいい』


 『隠蔽しなかったのは立派だ』


 『でも、なんで裏切ったんだ?』


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 答えは、誰にも分からなかった。


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 バンコク。


 突撃隊本部。


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 局長は、面談を始めていた。


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 一人一人。


 全隊員と。


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 最初は、ジョンソンだった。


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 「ジョンソン、お前に聞く」


 「はい」


 「お前は、残るか」


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 ジョンソンは、即答した。


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 「残ります」


 「理由は」


 「俺の居場所は、ここだからです」


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 局長は、頷いた。


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 「総隊長代理を任せる」


 「了解」


 「重いぞ」


 「分かってます」


 「それでも、やるか」


 「やります」


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 局長は、小さく笑った。


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 「頼むぞ」


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 次は、ヨナタンだった。


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 「ヨナタン、お前に聞く」


 「はい」


 「残るか」


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 ヨナタンは、少し黙った。


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 「......残ります」


 「迷ったか」


 「少しだけ」


 「なぜ」


 「仲間が仲間を撃った。それが、少し堪えました」


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---


 局長は、頷いた。


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 「だが、残るんだな」


 「はい」


 「なぜだ」


 「瀧本がいるからです」


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---


 「瀧本?」


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 「あいつは、仲間を殺しても、前を向いている」


 「......」


 「俺が逃げるわけにはいきません」


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 局長は、また頷いた。


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 「分かった。よろしく頼む」


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---


 面談は、三日間続いた。


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 残った者。


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 ジョンソン。


 ヨナタン。


 アブドゥル。


 ピーター。


 陳志明。


 スヨン。


 ンゴマ。


 ジェームズ。


 パク。


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---


 そして、重傷から回復中の者たち。


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 瀧本。


 マルティネス。


 ニコライ。


 サラ。


 アレクセイ。


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 全員が、残ることを選んだ。


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 だが、去る者もいた。


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 デイヴィッド・ウィルソン。


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 元SAS。


 ブラボーチームの隊員。


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 「局長、俺は去ります」


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 局長は、彼を見た。


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 「理由を聞いてもいいか」


 「家族です」


 「家族?」


 「妻が妊娠しました。子供が生まれます」


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 局長は、目を細めた。


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 「おめでとう」


 「ありがとうございます」


 「だが、それが理由か」


 「はい。今回の件で、考えました」


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 デイヴィッドは、窓の外を見た。


---


 「俺は、死ぬかもしれない仕事をしています」


 「ああ」


 「今までは、それでも良かった。独り身でしたから」


 「......」


 「だが、子供ができる。父親になる」


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---


 デイヴィッドは、局長を見た。


---


 「子供に、父親の顔を見せてやりたいんです」


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---


 局長は、立ち上がった。


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 デイヴィッドの手を、握った。


---


 「分かった。お前の決断を尊重する」


 「ありがとうございます」


 「いい父親になれよ」


 「なります」


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 デイヴィッドは、敬礼した。


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 そして、部屋を出た。


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---


 他にも、去る者がいた。


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 カルロス・ガルシア。


 通信担当。


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 「俺には、もう無理です。仲間が仲間を撃つところを、見てしまった」


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 トム・ハリソン。


 支援班。


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 「家族が心配しています。これ以上は、迷惑をかけられません」


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 三人が、去った。


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 結果。


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 稼働可能な隊員数。


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 二十名。


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 元の半分以下。


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 局長は、報告書を見つめていた。


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 「二十人か......」


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 ハーパーが言った。


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 「去った三人を除いても、拘束中の八人は裁判待ちです」


 「分かっている」


 「ナリンとファリダは、どうしますか」


 「......」


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---


 局長は、考えた。


---


 「瀧本に聞く」


 「瀧本に?」


 「ああ。あいつなら、答えを持っているかもしれない」


---


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---


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 病院。


 瀧本の病室。


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---


 局長が訪ねてきた。


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---


 「瀧本、相談がある」


 「何だ」


 「ナリンとファリダのことだ」


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 瀧本は、窓の外を見た。


---


 「あいつらは、柏木に従った」


 「ああ」


 「だが、戦闘には参加していない」


 「そうだ」


 「銃を撃っていない」


 「確認した」


---


---


 瀧本は、局長を見た。


---


 「俺は、あいつらを許したい」


 「許す?」


 「ああ。あいつらは、柏木を愛していた。だから、従った」


 「それは、理由になるか」


 「ならないかもしれない。だが、俺はそう思う」


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 局長は、腕を組んだ。


---


 「お前が許しても、法が許すかは分からない」


 「分かってる」


 「裁判になれば、有罪になる可能性が高い」


 「それでも、俺は許したい」


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---


 瀧本は、天井を見上げた。


---


 「柏木は死んだ。マリーは逃げた。もう十分だろう」


 「......」


 「これ以上、誰かを罰しても、何も戻らない」


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 局長は、溜息をついた。


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 「お前は、甘いな」


 「甘いかもしれない」


 「だが、お前らしい」


 「そうか」


 「ああ」


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 局長は、立ち上がった。


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 「陛下に相談してみる」


 「陛下に?」


 「ああ。恩赦が出れば、裁判を回避できるかもしれない」


 「......ありがとう」


 「礼はまだ早い。上手くいくかは分からん」


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 局長は、ドアに向かった。


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 そして、振り返った。


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 「瀧本」


 「何だ」


 「早く治れ。お前がいないと、本当にどうにもならん」


 「分かってる」


 「分かってるなら、ベッドで大人しくしてろ」


 「......善処する」


 「善処じゃなくて、約束しろ」


 「約束する」


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 局長は、小さく笑って、部屋を出た。


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 王宮。


 謁見の間。


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 局長は、国王の前に跪いていた。


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 「ウィチャイ、記者会見は見た」


 「恐れ入ります」


 「正直に話したな」


 「はい。国民に嘘はつけません」


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 国王は、頷いた。


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 「それでいい。余も、そうありたいと思っている」


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 「陛下、お願いがございます」


 「何だ」


 「ナリンとファリダについて、恩赦をいただきたく」


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 国王は、少し黙った。


---


 「彼女たちは、柏木に従った」


 「はい」


 「だが、戦闘には参加していない」


 「そうです」


 「瀧本は、どう言っている」


 「許したい、と」


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---


 国王は、小さく笑った。


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 「あの男らしいな」


 「はい」


 「甘いが、嫌いではない」


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 国王は、立ち上がった。


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 「恩赦を出す」


 「ありがとうございます」


 「ただし、条件がある」


 「条件?」


 「彼女たちが、もう一度突撃隊で働くことだ」


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 局長は、顔を上げた。


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 「陛下......」


 「彼女たちは、罪を犯した。だが、償う機会を与えたい」


 「......」


 「突撃隊で働き、国のために尽くす。それが、彼女たちの償いだ」


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 局長は、深く頭を下げた。


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 「陛下の御慈悲に、感謝いたします」


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 一週間後。


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 ナリンとファリダは、釈放された。


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 恩赦により、罪は問われなかった。


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 代わりに、突撃隊への復帰が条件とされた。


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 二人は、本部に戻ってきた。


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 出迎えたのは、瀧本だった。


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 まだ包帯を巻いている。


 まだ完全には治っていない。


 だが、立っていた。


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 「お帰り」


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 ナリンは、泣いた。


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 「瀧本さん......私は......」


 「いい。何も言うな」


 「でも、私は柏木さんについていって......」


 「知ってる」


 「あなたを裏切って......」


 「裏切ってない」


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 瀧本は、ナリンの肩に手を置いた。


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 「お前は、愛した男についていっただけだ」


 「......」


 「それは、裏切りじゃない」


 「......」


 「だから、お帰り」


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 ナリンは、声を上げて泣いた。


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 ファリダも、泣いていた。


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 「私も......私も、許されるんですか」


 「許すも何もない」


 「でも......」


 「お前たちは、仲間だ。それだけだ」


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 瀧本は、二人を見渡した。


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 「さあ、仕事だ。サボってた分、働いてもらうぞ」


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 ナリンとファリダは、涙を拭いた。


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 「はい......」


 「了解です......」


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 突撃隊は、少しずつ再生を始めていた。

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