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The Man Who Would Not Die: 死んでたまるか  作者: Operator3118
第5章 氷
107/129

第4話 追跡

---


 ラオス。


 サワンナケート県。


 国道13号線。


---


 銃声が聞こえた。


 遠くではない。数百メートル先だ。


 瀧本は窓から身を乗り出した。


 道路の先に、煙が上がっている。車が横転しているのが見えた。そして、その周囲で人影が動いている。銃火が瞬く。


 「交戦中だ」


 瀧本は言った。


 「誰と誰が」


 ジョンソンが聞いた。


 「分からない。だが、柏木の可能性が高い」


 「なぜ」


 「逃亡中の武装集団が、この道を通るのは当然だ。そして、地元警察がそれを止めようとするのも当然だ」


 車列が加速した。


 銃声が近づいてくる。


---


---


 現場が見えた。


 三台のピックアップトラックが、道路を塞いでいた。荷台から、武装した男たちが発砲している。


 その先には、ラオス警察の車両が二台。横転した一台から煙が上がっている。もう一台は、道路脇の溝に突っ込んでいた。


 警察官たちは、車両を盾にして応戦していた。だが、火力が違いすぎる。


 一人、また一人と倒れていく。


 「柏木だ」


 瀧本は確信した。


 先頭のトラックの荷台に、見覚えのある姿があった。


 黒いスーツ。オールバック。片目のサングラス。


 柏木勇気。


 ベレッタM92FSを構え、冷静に警察官を撃っていた。


 「あの野郎......」


 マルティネスが唸った。


 「警察を撃ってやがる」


 「止めるぞ」


 瀧本は言った。


 「車を止めろ」


---


---


 車が急停車した。


 瀧本が飛び出した。


 柏木が、こちらに気づいた。


 距離は百メートル。銃声と硝煙の向こうで、二人の目が合った。


 柏木の顔に、何かが浮かんだ。驚きか、怒りか、それとも別の何かか。瀧本には分からなかった。


 「撤退!」


 柏木が叫んだ。


 「アルファチームだ! 撤退しろ!」


 トラックのエンジンが唸りを上げた。三台が一斉に動き出した。国道を北へ向かって走り出す。


 警察官への攻撃は、突然止まった。


 柏木たちは、アルファチームとの正面衝突を避けた。


 賢明な判断だ。だが、逃がすわけにはいかない。


---


---


 瀧本は、現場を見渡した。


 警察官が六人、倒れていた。三人は動かない。死んでいる。残りの三人は、負傷して呻いている。


 その中の一人が、瀧本を見上げた。若い警察官だった。腹を撃たれて、血を流している。


 「タイから......来たのか......」


 「ああ」


 「あいつらを......追ってくれ......」


 「追う。だが、まずお前を助ける」


 瀧本は、警察官を抱き起こした。


 「スヨン! 医療キットを!」


 スヨンが駆け寄ってきた。医療キットを開き、警察官の傷を確認する。


 「貫通してる。応急処置すれば、助かるわ」


 「頼む」


 スヨンが処置を始めた。


 瀧本は立ち上がり、周囲を見た。


 道路脇に、白いバイクが倒れていた。


 警察のバイクだ。BMW製。タイの白バイと同じタイプ。


 倒れている警察官の一人が、ヘルメットをかぶっていた。白バイ隊員だったのだろう。


 瀧本は、バイクに近づいた。


 横倒しになっている。エンジンは止まっている。だが、損傷は軽微だ。走れる。


 瀧本はバイクのハンドルを掴んだ。


 左肩が痛んだ。傷が開いたかもしれない。無視した。


 膝を曲げ、腰を落とし、全身の力を使ってバイクを引き起こした。


 マックスターン。


 重いバイクが、一気に立ち上がった。


 瀧本は跨った。キーは刺さったままだ。イグニッションを回す。エンジンが咆哮を上げた。


 「瀧本!」


 ジョンソンが叫んだ。


 「追う」


 瀧本は短く言った。


 「一人で行くな!」


 「お前らも来い。俺が先行する」


 瀧本はサイレンのスイッチを入れた。


 赤と青のランプが回転を始めた。サイレンが鳴り響いた。


 アクセルを開けた。


 白いバイクが、轟音とともに発進した。


 国道を北へ。柏木の車列を追って。


---


---


 ジョンソンは、瀧本の背中を見送った。


 「あの野郎、また一人で......」


 「追うぞ」


 マルティネスが言った。


 「当たり前だ」


 ジョンソンは車に戻った。


 ハンヴィーの銃座に上がった。GAU-19ガトリングガンのグリップを握る。毎分千発の7.62mm弾を吐き出す怪物だ。


 「行け!」


 ジョンソンが叫んだ。


 ハンヴィーが発進した。


 窓からマルティネスが身を乗り出した。M240機関銃を構えている。


 後部座席では、ヨナタンがライフルを構えていた。スコープを覗き、前方を見据えている。


 「距離は」


 ヨナタンが聞いた。


 「瀧本が五百メートル先。柏木はさらにその先、約一キロ」


 陳志明が双眼鏡で確認しながら言った。


 「追いつけるか」


 「追いつく。絶対に」


 ハンヴィーが加速した。


 チェイスが始まった。


---


---


 国道13号線。


 直線道路が続いている。


 両側には田んぼが広がっている。緑の稲穂が風に揺れている。


 その中を、白いバイクが疾走していた。


 サイレンが鳴り響いている。


 瀧本は、前方のトラックを見据えていた。


 三台のピックアップトラック。距離は約八百メートル。徐々に縮まっている。


 バイクの方が速い。追いつける。


 だが、問題がある。


 追いついてどうする。


 一人で三台のトラックを止めることはできない。中には武装した人間が十人以上いる。正面から突っ込めば、蜂の巣にされる。


 だが、関係ない。


 瀧本は、アクセルを開けた。


 追いつく。それだけだ。後のことは、追いついてから考える。


---


---


 柏木のトラック。


 後部座席で、川島が後ろを確認していた。


 「隊長、追ってきます」


 「何が」


 「バイクです。一台。白バイみたいな......」


 柏木は振り返った。


 サイドミラーに、白い点が映っていた。サイレンの光が瞬いている。


 「警察か」


 「いえ、違います。さっきの......」


 川島の声が、途切れた。


 双眼鏡で確認していた。そして、息を呑んだ。


 「瀧本です」


 「何だと」


 「瀧本勝幸です。バイクに乗って、追ってきてます」


 柏木は、ミラーを睨んだ。


 白い点が、徐々に大きくなっている。


 「......あいつ」


 柏木の声は、低かった。


 「一人で追ってくるのか」


 「後ろにハンヴィーもいます。アルファチームです」


 「瀧本だけ、先行しているのか」


 「そうです」


 柏木は、小さく笑った。


 だが、その笑いには、何の感情もなかった。


 「馬鹿が。一人で何ができる」


 「撃ちますか」


 「撃て。止めろ」


 「了解」


 川島が、後部座席の窓から身を乗り出した。AK-47を構える。


 「全車両、後方の白バイを攻撃しろ!」


---


---


 銃声が響いた。


 弾丸が瀧本の周囲を飛び交った。


 アスファルトに火花が散る。風防に亀裂が入る。


 瀧本は身を低くした。バイクの後ろに体を隠すように。だが、完全には隠れられない。


 弾丸が左腕を掠めた。


 「ぐっ......」


 痛みが走った。だが、止まらない。止まれない。


 瀧本は、ジグザグに走り始めた。狙いを定めさせないように。左へ、右へ、また左へ。


 弾丸が周囲を飛び交う。だが、当たらない。


 距離は縮まっている。


 六百メートル。


 五百メートル。


 四百メートル。


---


---


 後方のハンヴィー。


 ジョンソンが、ガトリングの照準を合わせた。


 「距離は」


 「柏木のトラックまで千二百メートル。瀧本まで四百メートル」


 「瀧本を巻き込むな。慎重に撃て」


 「分かってる」


 ジョンソンは、トリガーを引いた。


 轟音。


 GAU-19が火を噴いた。毎分千発の弾丸が、柏木のトラックに向かって飛んでいく。


 だが、距離が遠い。精度が落ちる。


 弾丸のほとんどは、トラックの周囲のアスファルトを抉った。だが、数発が荷台に命中した。火花が散る。誰かが悲鳴を上げた。


 「当たった!」


 「続けろ!」


---


---


 柏木のトラック。


 荷台で、一人が倒れた。胸を撃たれていた。


 「くそ! ガトリングだ!」


 川島が叫んだ。


 「距離を取れ! 加速しろ!」


 トラックが加速した。


 だが、後ろのバイクも加速している。


 距離は縮まり続けている。


 三百メートル。


 二百メートル。


 百五十メートル。


---


---


 瀧本は、トラックに近づいていた。


 荷台の人影が見える。銃を構えている。こちらに向けて撃っている。


 弾丸が飛んでくる。だが、瀧本は止まらない。


 百メートル。


 五十メートル。


 瀧本は、M93Rを抜いた。


 片手でハンドルを握り、片手で銃を構える。


 三点バースト。


 荷台の一人が、肩を押さえて倒れた。


 三点バースト。


 もう一人が、銃を落とした。


 瀧本は、トラックの横に並んだ。


 運転席の窓が開いた。


 中から、銃口が突き出された。


 瀧本は身を捻った。弾丸が、ヘルメットを掠めた。


 瀧本は、M93Rを運転席に向けた。


 撃った。


 運転手の肩に命中。運転手が叫び声を上げた。ハンドルから手が離れる。


 トラックが蛇行し始めた。


 そして、道路脇の田んぼに突っ込んだ。


 一台目、停止。


---


---


 残りは二台。


 瀧本は加速した。


 二台目のトラックに近づく。


 荷台から、また銃撃が来た。


 瀧本は身を低くして、弾丸を避けた。


 だが、一発が太腿を掠めた。


 「くそ......」


 血が滲む。だが、止まらない。


 二台目のトラックの横に並んだ。


 荷台に、見覚えのある顔があった。


 ナリン。


 彼女は、銃を構えていなかった。ただ、瀧本を見つめていた。


 目が合った。


 ナリンの目には、涙が浮かんでいた。


 「瀧本さん......」


 その声は、風に消えた。


 瀧本は、M93Rを構えた。


 だが、撃てなかった。


 ナリンは、仲間だ。


 敵じゃない。


 瀧本は、銃口を運転席に向けた。


 撃った。


 タイヤを狙った。


 前輪に命中。タイヤがバーストした。


 トラックがコントロールを失い、道路脇に突っ込んだ。


 二台目、停止。


---


---


 残りは一台。


 柏木のトラックだ。


 瀧本は、最後のトラックに近づいた。


 荷台には、川島とマリーがいた。


 川島がAK-47を構えている。


 「来るな、瀧本!」


 川島が叫んだ。


 「これ以上近づいたら、撃つ!」


 瀧本は減速しなかった。


 「撃て。俺は止まらない」


 川島の指がトリガーにかかった。


 だが、撃てなかった。


 「川島」


 瀧本は言った。


 「お前は、俺を撃てない」


 「撃てる......撃てるさ......」


 「嘘だ。お前の目を見れば分かる」


 瀧本は、バイクをトラックの横につけた。


 「お前は、柏木を信じてついてきた。だが、今、お前は迷っている」


 「......」


 「仲間を殺すのは、お前の正義じゃない。違うか」


 川島の手が、震えていた。


 銃口が、下がった。


 「......くそ」


 川島は、銃を下ろした。


 「俺は......俺は、どうすればいいんだ......」


 「戻ってこい。今ならまだ間に合う」


 「......」


 「お前は、間違ったことをした。だが、それを正すことはできる」


 川島は、瀧本を見た。


 そして、頷いた。


 「分かった......」


 その瞬間。


 運転席の窓が開いた。


 柏木の顔が見えた。


 「川島、何をしている」


 冷たい声だった。


 「銃を下ろすな。撃て」


 「隊長......俺は......」


 「撃て。命令だ」


 川島は、銃を見た。そして、柏木を見た。そして、瀧本を見た。


 「......できません」


 「何だと」


 「俺には、瀧本を撃てません」


 柏木の目が、細くなった。


 「そうか」


 柏木は、ベレッタを構えた。


 川島に向けて。


 「なら、お前も敵だ」


 銃声が響いた。


---


---


 川島が、胸を押さえて倒れた。


 マリーが悲鳴を上げた。


 「柏木! 何をしてるの!」


 「裏切り者を処分した。それだけだ」


 柏木の声は、感情がなかった。


 瀧本は、歯を食いしばった。


 「柏木......」


 「何だ、瀧本」


 柏木が、こちらを見た。


 片目のサングラス越しに、冷たい目が瀧本を見つめていた。


 「お前は、ここまで落ちたのか」


 「落ちた? 違う。俺は、昇ったんだ」


 「仲間を撃つことが、昇ることか」


 「仲間じゃない。裏切り者だ」


 柏木は、ベレッタを瀧本に向けた。


 「お前も同じだ、瀧本。俺を止めに来た。つまり、俺の敵だ」


 「俺はお前の敵じゃない。仲間だ」


 「仲間?」


 柏木は、笑った。


 だが、その笑いには、狂気が宿っていた。


 「仲間なら、なぜ俺を追ってきた。仲間なら、なぜ俺を止めようとする」


 「お前が間違っているからだ」


 「間違っている? 俺が?」


 柏木の声が、高くなった。


 「俺は正義のために戦っている! 悪を裁いている! 何が間違っている!」


 「お前の正義は、歪んでいる」


 瀧本は言った。


 「お前は、戦うことだけが目的になっている。守るべきものを、忘れている」


 「守るべきもの?」


 「ああ。俺たちは、何のために戦っている。正義のためか? 違う。守るためだ」


 「何を」


 「人を。仲間を。愛する者を」


 瀧本は、柏木を見つめた。


 「お前は、誰を守っている。誰のために戦っている」


 柏木は、答えなかった。


 「答えられないだろう。お前は、もう誰も守っていない。ただ、暴力を振るっているだけだ」


 「黙れ」


 「お前は、壊れている。だから、俺が止める」


 「黙れと言った!」


 柏木が、トリガーを引いた。


---


---


 弾丸が、瀧本の肩を撃ち抜いた。


 「ぐあっ......!」


 瀧本はバイクのバランスを崩した。


 ハンドルが揺れる。タイヤが滑る。


 瀧本は、アスファルトに投げ出された。


 バイクが横転し、火花を散らしながら滑っていった。


 瀧本は、道路の上を転がった。


 全身が痛い。肩から血が流れている。


 だが、意識は保っていた。


 起き上がろうとした。だが、体が言うことを聞かない。


 柏木のトラックが、停まった。


 柏木が、降りてきた。


 ベレッタを構えたまま、瀧本に近づいてくる。


 「瀧本」


 柏木の声は、静かだった。


 「お前は、何度撃たれても死なないらしいな」


 「......ああ」


 「21発、だったか」


 「22発だ。今ので」


 柏木は、瀧本の前に立った。


 銃口を、瀧本の頭に向けた。


 「なら、22発目を撃ってやる」


 「......」


 「さよならだ、瀧本」


 柏木の指が、トリガーにかかった。


---


---


 その瞬間。


 轟音が響いた。


 GAU-19の咆哮だ。


 弾丸が、柏木の足元を抉った。アスファルトが砕け散る。


 柏木は飛び退いた。


 ハンヴィーが、猛スピードで近づいてきていた。


 「アルファチーム......」


 柏木は、舌打ちした。


 「撤退! 全員、撤退だ!」


 柏木はトラックに戻った。


 エンジンが唸りを上げ、トラックが走り出した。


 マリーが、荷台から瀧本を見ていた。


 その目には、涙が浮かんでいた。


 「瀧本さん......ごめんなさい......」


 その声は、エンジン音にかき消された。


 トラックは、北へ向かって走り去った。


---


---


 ハンヴィーが停まった。


 スヨンが飛び出してきた。


 「瀧本!」


 瀧本は、道路の上に倒れていた。


 肩から血が流れている。全身、傷だらけだ。


 だが、意識はあった。


 「......大丈夫だ」


 「大丈夫じゃない! また撃たれて......!」


 「かすり傷だ」


 「かすり傷じゃない!」


 スヨンは、瀧本の傷を確認した。


 「貫通してる......でも、骨は無事みたい......」


 「なら、大丈夫だ」


 「大丈夫じゃないって言ってるでしょ......」


 スヨンの目から、涙が流れた。


 「なんで......なんでいつも......」


 瀧本は、スヨンの頬に手を当てた。


 「泣くな」


 「泣くわよ......あなたが、馬鹿だから......」


 「馬鹿は認める」


 瀧本は、小さく笑った。


 「だが、俺は死なない。約束しただろう」


 「......」


 「死ぬ気がない。生きる気満々だ」


 スヨンは、瀧本の手を握った。


 「......馬鹿」


 「ああ。馬鹿だ」


---


---


 ジョンソンが近づいてきた。


 「瀧本、動けるか」


 「動ける」


 「嘘だ。担架を持ってこい」


 「いらない。自分で歩ける」


 瀧本は、起き上がろうとした。


 だが、膝が崩れた。


 「......くそ」


 「言わんこっちゃない」


 ジョンソンが、瀧本の腕を取った。


 「担架を待て。無理するな」


 「柏木は......」


 「逃げた。だが、追える」


 「追わないと......」


 「追う。だが、まずお前を治療する」


 ジョンソンは、瀧本を見下ろした。


 「お前がいないと、柏木は止められない。分かってるだろう」


 「......」


 「だから、無理するな。死んだら、元も子もない」


 瀧本は、空を見上げた。


 青い空が広がっている。雲が流れていく。


 「......分かった」


 瀧本は、目を閉じた。


 「少しだけ、休む」


---


---


 マルティネスが、二台目のトラックの方に歩いていった。


 荷台で、ナリンが座っていた。


 両手を上げている。抵抗する気はないようだ。


 「降りろ」


 マルティネスが言った。


 ナリンは、ゆっくりと荷台から降りた。


 「私は......」


 「黙れ。後で聞く」


 マルティネスは、ナリンの両手を後ろに回し、拘束した。


 「他に誰がいる」


 「運転手だけ......でも、怪我をしてる......」


 マルティネスは、運転席を確認した。運転手は、肩を撃たれて気を失っていた。


 「ヨナタン、こっちに医療班を」


 「了解」


 一台目のトラックでは、数人の負傷者が確認された。


 全員、チャーリーチームの隊員だった。


 柏木についていった者たち。


 そして今、取り残された者たち。


---


---


 瀧本は、担架の上で空を見ていた。


 柏木は、逃げた。


 また、逃げた。


 だが、追いつける。必ず追いつく。


 「瀧本」


 スヨンの声がした。


 「何だ」


 「川島さんが......」


 瀧本は、首を動かした。


 担架が二つ、並んでいた。


 一つは自分。もう一つは、川島だった。


 川島は、胸を撃たれていた。柏木に。


 だが、まだ息がある。


 「川島......」


 瀧本は呼びかけた。


 川島の目が、薄く開いた。


 「瀧本......さん......」


 「喋るな。助けるから」


 「いや......俺は......」


 川島は、咳き込んだ。血が混じっていた。


 「俺は......間違えました......」


 「......」


 「隊長を......柏木さんを......信じてました......」


 「......」


 「でも......隊長は......変わってしまった......」


 川島の目から、涙が流れた。


 「俺は......どうすれば良かったんですか......」


 瀧本は、川島の手を握った。


 「お前は、悪くない」


 「悪い......俺は、仲間を撃った......ブラボーチームを......」


 「柏木に従っただけだ」


 「それでも......」


 「お前は、最後に銃を下ろした。俺を撃たなかった」


 瀧本は、川島を見つめた。


 「それが、お前の答えだ。お前は、間違いに気づいた。だから、お前は悪くない」


 川島は、泣いていた。


 「俺は......生きられますか......」


 「生きろ。そして、償え」


 「......はい......」


 川島は、目を閉じた。


 担架が運ばれていく。


 瀧本は、それを見送った。


---


---


 北の空には、雲が広がっていた。


 柏木は、その向こうにいる。


 まだ、終わっていない。


 瀧本は、拳を握りしめた。


 「待ってろ、柏木」


 その声は、誰にも聞こえなかった。


 「俺は、必ずお前を止める」

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