第4話 追跡
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ラオス。
サワンナケート県。
国道13号線。
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銃声が聞こえた。
遠くではない。数百メートル先だ。
瀧本は窓から身を乗り出した。
道路の先に、煙が上がっている。車が横転しているのが見えた。そして、その周囲で人影が動いている。銃火が瞬く。
「交戦中だ」
瀧本は言った。
「誰と誰が」
ジョンソンが聞いた。
「分からない。だが、柏木の可能性が高い」
「なぜ」
「逃亡中の武装集団が、この道を通るのは当然だ。そして、地元警察がそれを止めようとするのも当然だ」
車列が加速した。
銃声が近づいてくる。
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現場が見えた。
三台のピックアップトラックが、道路を塞いでいた。荷台から、武装した男たちが発砲している。
その先には、ラオス警察の車両が二台。横転した一台から煙が上がっている。もう一台は、道路脇の溝に突っ込んでいた。
警察官たちは、車両を盾にして応戦していた。だが、火力が違いすぎる。
一人、また一人と倒れていく。
「柏木だ」
瀧本は確信した。
先頭のトラックの荷台に、見覚えのある姿があった。
黒いスーツ。オールバック。片目のサングラス。
柏木勇気。
ベレッタM92FSを構え、冷静に警察官を撃っていた。
「あの野郎......」
マルティネスが唸った。
「警察を撃ってやがる」
「止めるぞ」
瀧本は言った。
「車を止めろ」
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車が急停車した。
瀧本が飛び出した。
柏木が、こちらに気づいた。
距離は百メートル。銃声と硝煙の向こうで、二人の目が合った。
柏木の顔に、何かが浮かんだ。驚きか、怒りか、それとも別の何かか。瀧本には分からなかった。
「撤退!」
柏木が叫んだ。
「アルファチームだ! 撤退しろ!」
トラックのエンジンが唸りを上げた。三台が一斉に動き出した。国道を北へ向かって走り出す。
警察官への攻撃は、突然止まった。
柏木たちは、アルファチームとの正面衝突を避けた。
賢明な判断だ。だが、逃がすわけにはいかない。
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瀧本は、現場を見渡した。
警察官が六人、倒れていた。三人は動かない。死んでいる。残りの三人は、負傷して呻いている。
その中の一人が、瀧本を見上げた。若い警察官だった。腹を撃たれて、血を流している。
「タイから......来たのか......」
「ああ」
「あいつらを......追ってくれ......」
「追う。だが、まずお前を助ける」
瀧本は、警察官を抱き起こした。
「スヨン! 医療キットを!」
スヨンが駆け寄ってきた。医療キットを開き、警察官の傷を確認する。
「貫通してる。応急処置すれば、助かるわ」
「頼む」
スヨンが処置を始めた。
瀧本は立ち上がり、周囲を見た。
道路脇に、白いバイクが倒れていた。
警察のバイクだ。BMW製。タイの白バイと同じタイプ。
倒れている警察官の一人が、ヘルメットをかぶっていた。白バイ隊員だったのだろう。
瀧本は、バイクに近づいた。
横倒しになっている。エンジンは止まっている。だが、損傷は軽微だ。走れる。
瀧本はバイクのハンドルを掴んだ。
左肩が痛んだ。傷が開いたかもしれない。無視した。
膝を曲げ、腰を落とし、全身の力を使ってバイクを引き起こした。
マックスターン。
重いバイクが、一気に立ち上がった。
瀧本は跨った。キーは刺さったままだ。イグニッションを回す。エンジンが咆哮を上げた。
「瀧本!」
ジョンソンが叫んだ。
「追う」
瀧本は短く言った。
「一人で行くな!」
「お前らも来い。俺が先行する」
瀧本はサイレンのスイッチを入れた。
赤と青のランプが回転を始めた。サイレンが鳴り響いた。
アクセルを開けた。
白いバイクが、轟音とともに発進した。
国道を北へ。柏木の車列を追って。
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ジョンソンは、瀧本の背中を見送った。
「あの野郎、また一人で......」
「追うぞ」
マルティネスが言った。
「当たり前だ」
ジョンソンは車に戻った。
ハンヴィーの銃座に上がった。GAU-19ガトリングガンのグリップを握る。毎分千発の7.62mm弾を吐き出す怪物だ。
「行け!」
ジョンソンが叫んだ。
ハンヴィーが発進した。
窓からマルティネスが身を乗り出した。M240機関銃を構えている。
後部座席では、ヨナタンがライフルを構えていた。スコープを覗き、前方を見据えている。
「距離は」
ヨナタンが聞いた。
「瀧本が五百メートル先。柏木はさらにその先、約一キロ」
陳志明が双眼鏡で確認しながら言った。
「追いつけるか」
「追いつく。絶対に」
ハンヴィーが加速した。
チェイスが始まった。
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国道13号線。
直線道路が続いている。
両側には田んぼが広がっている。緑の稲穂が風に揺れている。
その中を、白いバイクが疾走していた。
サイレンが鳴り響いている。
瀧本は、前方のトラックを見据えていた。
三台のピックアップトラック。距離は約八百メートル。徐々に縮まっている。
バイクの方が速い。追いつける。
だが、問題がある。
追いついてどうする。
一人で三台のトラックを止めることはできない。中には武装した人間が十人以上いる。正面から突っ込めば、蜂の巣にされる。
だが、関係ない。
瀧本は、アクセルを開けた。
追いつく。それだけだ。後のことは、追いついてから考える。
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柏木のトラック。
後部座席で、川島が後ろを確認していた。
「隊長、追ってきます」
「何が」
「バイクです。一台。白バイみたいな......」
柏木は振り返った。
サイドミラーに、白い点が映っていた。サイレンの光が瞬いている。
「警察か」
「いえ、違います。さっきの......」
川島の声が、途切れた。
双眼鏡で確認していた。そして、息を呑んだ。
「瀧本です」
「何だと」
「瀧本勝幸です。バイクに乗って、追ってきてます」
柏木は、ミラーを睨んだ。
白い点が、徐々に大きくなっている。
「......あいつ」
柏木の声は、低かった。
「一人で追ってくるのか」
「後ろにハンヴィーもいます。アルファチームです」
「瀧本だけ、先行しているのか」
「そうです」
柏木は、小さく笑った。
だが、その笑いには、何の感情もなかった。
「馬鹿が。一人で何ができる」
「撃ちますか」
「撃て。止めろ」
「了解」
川島が、後部座席の窓から身を乗り出した。AK-47を構える。
「全車両、後方の白バイを攻撃しろ!」
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銃声が響いた。
弾丸が瀧本の周囲を飛び交った。
アスファルトに火花が散る。風防に亀裂が入る。
瀧本は身を低くした。バイクの後ろに体を隠すように。だが、完全には隠れられない。
弾丸が左腕を掠めた。
「ぐっ......」
痛みが走った。だが、止まらない。止まれない。
瀧本は、ジグザグに走り始めた。狙いを定めさせないように。左へ、右へ、また左へ。
弾丸が周囲を飛び交う。だが、当たらない。
距離は縮まっている。
六百メートル。
五百メートル。
四百メートル。
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後方のハンヴィー。
ジョンソンが、ガトリングの照準を合わせた。
「距離は」
「柏木のトラックまで千二百メートル。瀧本まで四百メートル」
「瀧本を巻き込むな。慎重に撃て」
「分かってる」
ジョンソンは、トリガーを引いた。
轟音。
GAU-19が火を噴いた。毎分千発の弾丸が、柏木のトラックに向かって飛んでいく。
だが、距離が遠い。精度が落ちる。
弾丸のほとんどは、トラックの周囲のアスファルトを抉った。だが、数発が荷台に命中した。火花が散る。誰かが悲鳴を上げた。
「当たった!」
「続けろ!」
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柏木のトラック。
荷台で、一人が倒れた。胸を撃たれていた。
「くそ! ガトリングだ!」
川島が叫んだ。
「距離を取れ! 加速しろ!」
トラックが加速した。
だが、後ろのバイクも加速している。
距離は縮まり続けている。
三百メートル。
二百メートル。
百五十メートル。
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瀧本は、トラックに近づいていた。
荷台の人影が見える。銃を構えている。こちらに向けて撃っている。
弾丸が飛んでくる。だが、瀧本は止まらない。
百メートル。
五十メートル。
瀧本は、M93Rを抜いた。
片手でハンドルを握り、片手で銃を構える。
三点バースト。
荷台の一人が、肩を押さえて倒れた。
三点バースト。
もう一人が、銃を落とした。
瀧本は、トラックの横に並んだ。
運転席の窓が開いた。
中から、銃口が突き出された。
瀧本は身を捻った。弾丸が、ヘルメットを掠めた。
瀧本は、M93Rを運転席に向けた。
撃った。
運転手の肩に命中。運転手が叫び声を上げた。ハンドルから手が離れる。
トラックが蛇行し始めた。
そして、道路脇の田んぼに突っ込んだ。
一台目、停止。
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残りは二台。
瀧本は加速した。
二台目のトラックに近づく。
荷台から、また銃撃が来た。
瀧本は身を低くして、弾丸を避けた。
だが、一発が太腿を掠めた。
「くそ......」
血が滲む。だが、止まらない。
二台目のトラックの横に並んだ。
荷台に、見覚えのある顔があった。
ナリン。
彼女は、銃を構えていなかった。ただ、瀧本を見つめていた。
目が合った。
ナリンの目には、涙が浮かんでいた。
「瀧本さん......」
その声は、風に消えた。
瀧本は、M93Rを構えた。
だが、撃てなかった。
ナリンは、仲間だ。
敵じゃない。
瀧本は、銃口を運転席に向けた。
撃った。
タイヤを狙った。
前輪に命中。タイヤがバーストした。
トラックがコントロールを失い、道路脇に突っ込んだ。
二台目、停止。
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残りは一台。
柏木のトラックだ。
瀧本は、最後のトラックに近づいた。
荷台には、川島とマリーがいた。
川島がAK-47を構えている。
「来るな、瀧本!」
川島が叫んだ。
「これ以上近づいたら、撃つ!」
瀧本は減速しなかった。
「撃て。俺は止まらない」
川島の指がトリガーにかかった。
だが、撃てなかった。
「川島」
瀧本は言った。
「お前は、俺を撃てない」
「撃てる......撃てるさ......」
「嘘だ。お前の目を見れば分かる」
瀧本は、バイクをトラックの横につけた。
「お前は、柏木を信じてついてきた。だが、今、お前は迷っている」
「......」
「仲間を殺すのは、お前の正義じゃない。違うか」
川島の手が、震えていた。
銃口が、下がった。
「......くそ」
川島は、銃を下ろした。
「俺は......俺は、どうすればいいんだ......」
「戻ってこい。今ならまだ間に合う」
「......」
「お前は、間違ったことをした。だが、それを正すことはできる」
川島は、瀧本を見た。
そして、頷いた。
「分かった......」
その瞬間。
運転席の窓が開いた。
柏木の顔が見えた。
「川島、何をしている」
冷たい声だった。
「銃を下ろすな。撃て」
「隊長......俺は......」
「撃て。命令だ」
川島は、銃を見た。そして、柏木を見た。そして、瀧本を見た。
「......できません」
「何だと」
「俺には、瀧本を撃てません」
柏木の目が、細くなった。
「そうか」
柏木は、ベレッタを構えた。
川島に向けて。
「なら、お前も敵だ」
銃声が響いた。
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川島が、胸を押さえて倒れた。
マリーが悲鳴を上げた。
「柏木! 何をしてるの!」
「裏切り者を処分した。それだけだ」
柏木の声は、感情がなかった。
瀧本は、歯を食いしばった。
「柏木......」
「何だ、瀧本」
柏木が、こちらを見た。
片目のサングラス越しに、冷たい目が瀧本を見つめていた。
「お前は、ここまで落ちたのか」
「落ちた? 違う。俺は、昇ったんだ」
「仲間を撃つことが、昇ることか」
「仲間じゃない。裏切り者だ」
柏木は、ベレッタを瀧本に向けた。
「お前も同じだ、瀧本。俺を止めに来た。つまり、俺の敵だ」
「俺はお前の敵じゃない。仲間だ」
「仲間?」
柏木は、笑った。
だが、その笑いには、狂気が宿っていた。
「仲間なら、なぜ俺を追ってきた。仲間なら、なぜ俺を止めようとする」
「お前が間違っているからだ」
「間違っている? 俺が?」
柏木の声が、高くなった。
「俺は正義のために戦っている! 悪を裁いている! 何が間違っている!」
「お前の正義は、歪んでいる」
瀧本は言った。
「お前は、戦うことだけが目的になっている。守るべきものを、忘れている」
「守るべきもの?」
「ああ。俺たちは、何のために戦っている。正義のためか? 違う。守るためだ」
「何を」
「人を。仲間を。愛する者を」
瀧本は、柏木を見つめた。
「お前は、誰を守っている。誰のために戦っている」
柏木は、答えなかった。
「答えられないだろう。お前は、もう誰も守っていない。ただ、暴力を振るっているだけだ」
「黙れ」
「お前は、壊れている。だから、俺が止める」
「黙れと言った!」
柏木が、トリガーを引いた。
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弾丸が、瀧本の肩を撃ち抜いた。
「ぐあっ......!」
瀧本はバイクのバランスを崩した。
ハンドルが揺れる。タイヤが滑る。
瀧本は、アスファルトに投げ出された。
バイクが横転し、火花を散らしながら滑っていった。
瀧本は、道路の上を転がった。
全身が痛い。肩から血が流れている。
だが、意識は保っていた。
起き上がろうとした。だが、体が言うことを聞かない。
柏木のトラックが、停まった。
柏木が、降りてきた。
ベレッタを構えたまま、瀧本に近づいてくる。
「瀧本」
柏木の声は、静かだった。
「お前は、何度撃たれても死なないらしいな」
「......ああ」
「21発、だったか」
「22発だ。今ので」
柏木は、瀧本の前に立った。
銃口を、瀧本の頭に向けた。
「なら、22発目を撃ってやる」
「......」
「さよならだ、瀧本」
柏木の指が、トリガーにかかった。
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その瞬間。
轟音が響いた。
GAU-19の咆哮だ。
弾丸が、柏木の足元を抉った。アスファルトが砕け散る。
柏木は飛び退いた。
ハンヴィーが、猛スピードで近づいてきていた。
「アルファチーム......」
柏木は、舌打ちした。
「撤退! 全員、撤退だ!」
柏木はトラックに戻った。
エンジンが唸りを上げ、トラックが走り出した。
マリーが、荷台から瀧本を見ていた。
その目には、涙が浮かんでいた。
「瀧本さん......ごめんなさい......」
その声は、エンジン音にかき消された。
トラックは、北へ向かって走り去った。
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ハンヴィーが停まった。
スヨンが飛び出してきた。
「瀧本!」
瀧本は、道路の上に倒れていた。
肩から血が流れている。全身、傷だらけだ。
だが、意識はあった。
「......大丈夫だ」
「大丈夫じゃない! また撃たれて......!」
「かすり傷だ」
「かすり傷じゃない!」
スヨンは、瀧本の傷を確認した。
「貫通してる......でも、骨は無事みたい......」
「なら、大丈夫だ」
「大丈夫じゃないって言ってるでしょ......」
スヨンの目から、涙が流れた。
「なんで......なんでいつも......」
瀧本は、スヨンの頬に手を当てた。
「泣くな」
「泣くわよ......あなたが、馬鹿だから......」
「馬鹿は認める」
瀧本は、小さく笑った。
「だが、俺は死なない。約束しただろう」
「......」
「死ぬ気がない。生きる気満々だ」
スヨンは、瀧本の手を握った。
「......馬鹿」
「ああ。馬鹿だ」
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ジョンソンが近づいてきた。
「瀧本、動けるか」
「動ける」
「嘘だ。担架を持ってこい」
「いらない。自分で歩ける」
瀧本は、起き上がろうとした。
だが、膝が崩れた。
「......くそ」
「言わんこっちゃない」
ジョンソンが、瀧本の腕を取った。
「担架を待て。無理するな」
「柏木は......」
「逃げた。だが、追える」
「追わないと......」
「追う。だが、まずお前を治療する」
ジョンソンは、瀧本を見下ろした。
「お前がいないと、柏木は止められない。分かってるだろう」
「......」
「だから、無理するな。死んだら、元も子もない」
瀧本は、空を見上げた。
青い空が広がっている。雲が流れていく。
「......分かった」
瀧本は、目を閉じた。
「少しだけ、休む」
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マルティネスが、二台目のトラックの方に歩いていった。
荷台で、ナリンが座っていた。
両手を上げている。抵抗する気はないようだ。
「降りろ」
マルティネスが言った。
ナリンは、ゆっくりと荷台から降りた。
「私は......」
「黙れ。後で聞く」
マルティネスは、ナリンの両手を後ろに回し、拘束した。
「他に誰がいる」
「運転手だけ......でも、怪我をしてる......」
マルティネスは、運転席を確認した。運転手は、肩を撃たれて気を失っていた。
「ヨナタン、こっちに医療班を」
「了解」
一台目のトラックでは、数人の負傷者が確認された。
全員、チャーリーチームの隊員だった。
柏木についていった者たち。
そして今、取り残された者たち。
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瀧本は、担架の上で空を見ていた。
柏木は、逃げた。
また、逃げた。
だが、追いつける。必ず追いつく。
「瀧本」
スヨンの声がした。
「何だ」
「川島さんが......」
瀧本は、首を動かした。
担架が二つ、並んでいた。
一つは自分。もう一つは、川島だった。
川島は、胸を撃たれていた。柏木に。
だが、まだ息がある。
「川島......」
瀧本は呼びかけた。
川島の目が、薄く開いた。
「瀧本......さん......」
「喋るな。助けるから」
「いや......俺は......」
川島は、咳き込んだ。血が混じっていた。
「俺は......間違えました......」
「......」
「隊長を......柏木さんを......信じてました......」
「......」
「でも......隊長は......変わってしまった......」
川島の目から、涙が流れた。
「俺は......どうすれば良かったんですか......」
瀧本は、川島の手を握った。
「お前は、悪くない」
「悪い......俺は、仲間を撃った......ブラボーチームを......」
「柏木に従っただけだ」
「それでも......」
「お前は、最後に銃を下ろした。俺を撃たなかった」
瀧本は、川島を見つめた。
「それが、お前の答えだ。お前は、間違いに気づいた。だから、お前は悪くない」
川島は、泣いていた。
「俺は......生きられますか......」
「生きろ。そして、償え」
「......はい......」
川島は、目を閉じた。
担架が運ばれていく。
瀧本は、それを見送った。
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北の空には、雲が広がっていた。
柏木は、その向こうにいる。
まだ、終わっていない。
瀧本は、拳を握りしめた。
「待ってろ、柏木」
その声は、誰にも聞こえなかった。
「俺は、必ずお前を止める」




