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The Man Who Would Not Die: 死んでたまるか  作者: Operator3118
第4章 鋼鉄
101/132

幕間 休息

ある休日。


---


 瀧本は、スヨンとデートしていた。


---


---


 ウドンターニーの街を歩いた。


 市場で買い物をした。


 屋台でパッタイを食べた。


---


 「美味いな」


 「美味しいわね」


---


 二人は並んで歩いた。


---


---


 「瀧本」


 「何だ」


 「今日、楽しい?」


 「......まあ、悪くない」


 「素直じゃないわね」


 「素直だ」


 「素直じゃない」


---


 瀧本は溜息をついた。


---


 「......楽しいよ」


 「本当?」


 「本当だ」


---


 スヨンは嬉しそうに笑った。


---


---


---


 夕方。


 二人は、小さなレストランで食事をした。


---


 タイ料理。


 ワイン。


---


 「瀧本、お酒強いのね」


 「強くない。普通だ」


 「私、もう酔ってきた」


 「弱いな」


 「弱いわよ。女の子だもの」


 「女の子......」


---


 瀧本は、スヨンを見た。


---


 今日のスヨンは、アイドル化していなかった。


 いつものポニーテール。


 ナチュラルメイク。


 シンプルなワンピース。


---


 「お前、今日はアイドルじゃないな」


 「だって、あなたが前の方が好きって言ったから」


 「覚えてたのか」


 「覚えてるわよ」


---


 スヨンは少し照れていた。


---


 「こっちの方が、私らしい?」


 「ああ。こっちの方がいい」


 「......」


---


 スヨンの顔が、赤くなった。


 酒のせいだけではなかった。


---


---


---


 夜。


 瀧本の部屋。


---


 二人は、一緒にいた。


---


---


 「瀧本」


 「何だ」


 「私のこと、どう思ってる?」


---


 瀧本は天井を見ていた。


---


 「......高飛車女だと思ってる」


 「それだけ?」


 「......」


 「それだけ?」


---


 瀧本は、スヨンを見た。


---


 「......それだけじゃない」


 「じゃあ、何?」


 「......」


---


 瀧本は、言葉を探した。


---


 「俺が撃たれた時、お前は泣いてた」


 「泣いてたわよ」


 「病院で、ずっと手を握ってた」


 「握ってたわよ」


 「退院しても、毎日心配してた」


 「心配してたわよ」


---


 瀧本は、スヨンの頬に手を当てた。


---


 「そういう女だと、思ってる」


 「そういう女......?」


 「俺のことを、本気で心配してくれる女」


 「......」


 「俺のことを、本気で好きでいてくれる女」


---


 スヨンの目が、潤んだ。


---


 「瀧本......」


---


---


 瀧本は、スヨンを抱き寄せた。


---


---


 「俺は、資格がないとか言わない」


 「......」


 「資格がないなら、作る」


 「......」


 「お前を幸せにする自信がないなら、自信がつくまでやる」


 「......」


 「逃げない。俺は、逃げない」


---


---


 スヨンは、瀧本の胸に顔を埋めた。


---


 「馬鹿......」


 「馬鹿で悪かったな」


 「馬鹿じゃない......褒めてるの......」


 「褒めてるのか」


 「褒めてるのよ......」


---


---


---


 その夜。


---


 二人は、一緒だった。


---


---


---


---


---


 翌朝。


---


 瀧本は、隣で眠っているスヨンを見た。


---


 「......」


---


 穏やかな寝顔だった。


---


 「......悪くないな」


---


 瀧本は、メンソールに火をつけた。


 窓を開けて、煙を吐いた。


---


 「俺も、現世に繋ぎ止められたか」


---


 少し笑った。


---


---


---


---


---


 数日後。


 休日。


---


 瀧本は、ヨナタンとマルティネスと飲みに行った。


---


---


 最初は、普通のバーだった。


---


 「乾杯!」


 「乾杯!」


 「乾杯」


---


 ビール。


 テキーラ。


 ウォッカ。


---


 「瀧本、スヨンとはどうなんだ」


 マルティネスが聞いた。


 「どうって何だ」


 「とぼけるな。お前ら、付き合ってるだろ」


 「......」


 「否定しないのか」


 「......否定しない」


---


 マルティネスが歓声を上げた。


---


 「やっと認めた!」


 「うるさい」


 「いいじゃないか! めでたい!」


 「めでたくない」


 「めでたい! 乾杯だ!」


---


---


 ヨナタンが言った。


---


 「良かったな」


 「良かったのか」


 「良かった。お前には、ああいう女が必要だ」


 「どういう意味だ」


 「お前は無茶をする。止める奴が必要だ」


 「止まらないけど」


 「止まらなくても、止める奴は必要だ」


 「......そうか」


---


---


---


 三杯目。


 四杯目。


 五杯目。


---


 三人とも、かなり酔ってきた。


---


---


 「なあ、もう一軒行こうぜ」


 マルティネスが言った。


 「もう一軒?」


 「ああ。面白い店がある」


 「面白い店?」


 「ゴーゴーバーだ」


---


 瀧本は眉をひそめた。


---


 「俺、彼女できたばかりなんだけど」


 「見るだけだ。見るだけ」


 「見るだけか」


 「見るだけだ」


---


 ヨナタンが言った。


---


 「俺は行ったことがない」


 「モサドにゴーゴーバーはないからな」


 「ない」


 「じゃあ、行ってみろ。人生経験だ」


 「......人生経験か」


 「人生経験だ」


---


---


---


 三人は、ゴーゴーバーに向かった。


---


---


---


 ウドンターニーのゴーゴーバー。


 ネオンが輝いている。


 大音量の音楽。


---


 「おお......」


---


 ヨナタンが、珍しく声を上げた。


---


 「これが、ゴーゴーバーか」


 「これがゴーゴーバーだ」


 「......派手だな」


 「派手だろ」


---


---


 三人は、席についた。


---


 ビール。


 テキーラ。


 ウォッカ。


---


 踊り子たちが、ステージで踊っていた。


---


---


 「なあ、瀧本」


 マルティネスが言った。


 「何だ」


 「お前、18発撃たれても生きてるんだよな」


 「生きてる」


 「すげえよな」


 「すごくない」


 「すごいって!」


---


 マルティネスは、完全に酔っ払っていた。


---


 「俺、お前を尊敬してるよ!」


 「酔ってるな」


 「酔ってない!」


 「酔ってる」


 「酔ってるけど、本心だ!」


---


---


 ヨナタンも、かなり酔っていた。


---


 「瀧本、お前は......良い奴だ」


 「お前も良い奴だ」


 「俺は良い奴じゃない」


 「良い奴だ」


 「良い奴じゃない......俺は、モサドで......色々......」


 「色々あったんだな」


 「あった......」


---


 ヨナタンの目が、少し潤んでいた。


---


 「でも、ここは良い......お前らは、良い奴だ......」


 「泣いてるのか」


 「泣いてない」


 「泣いてる」


 「泣いてるかもしれない」


---


---


 瀧本も、かなり酔っていた。


---


 「俺たち、最高のチームだよな!」


 「最高だ!」


 「最高だ......」


---


 三人は肩を組んだ。


---


 「アルファチーム、最高!」


 「最高!」


 「最高......」


---


---


---


 そして、大騒ぎが始まった。


---


---


 マルティネスが、ステージに上がった。


---


 「俺も踊る!」


 「おい、マルティネス!」


 「踊るんだ!」


---


 マルティネスは、踊り子たちと一緒に踊り始めた。


 メチャクチャだった。


 だが、本人は楽しそうだった。


---


---


 ヨナタンが、バーテンダーと腕相撲を始めた。


---


 「俺は、モサドだ......」


 「モサドって何ですか」


 「イスラエルの......諜報機関だ......」


 「すごいですね」


 「すごいだろ......だから、腕相撲も強い......」


---


 ヨナタンは、バーテンダーに勝った。


 次の相手にも勝った。


 その次も勝った。


---


 「俺は、負けない......」


---


---


 瀧本は、カウンターで叫んでいた。


---


 「俺は、死なない!」


 「お客さん、声が大きいですよ」


 「死なないんだ! 18発撃たれても!」


 「はいはい」


 「信じてないだろ!」


 「信じてますよ」


 「嘘だ!」


---


 瀧本は服をまくった。


 傷跡を見せた。


---


 「見ろ! これが18発の証拠だ!」


 「......本当だ......」


 「本当だろ!」


---


 周囲の客が集まってきた。


---


 「すげえ......」


 「本当に18発の人だ......」


 「英雄じゃん......」


---


---


---


 三人の大騒ぎは、深夜まで続いた。


---


---


---


---


---


 翌朝。


---


 アルファチームの拠点。


---


 ジョンソンが、三人を見下ろしていた。


---


---


 瀧本は、床で寝ていた。


 マルティネスは、ソファで寝ていた。


 ヨナタンは、椅子に座ったまま寝ていた。


---


 三人とも、酒臭かった。


---


---


 「起きろ」


---


 ジョンソンの声が響いた。


---


 「......うるさい......」


 「起きろ。大問題だ」


 「大問題......?」


---


---


 瀧本は、目を開けた。


 頭が割れそうに痛かった。


---


 「何があった......」


 「お前らが大騒ぎしたせいで、SNSで拡散されてる」


 「......は?」


---


---


 ジョンソンはスマホを見せた。


---


 『18発の英雄、ゴーゴーバーで大暴れ』


 『モサドの男、腕相撲10連勝』


 『突撃隊、飲みすぎて店で爆睡』


---


 動画も投稿されていた。


---


 マルティネスが踊り子と踊っている動画。


 ヨナタンが腕相撲で連勝している動画。


 瀧本が傷跡を見せて叫んでいる動画。


---


---


 瀧本は、頭を抱えた。


---


 「......終わった」


---


---


 マルティネスが起き上がった。


---


 「何だ......何があった......」


 「お前が踊り子と踊ってる動画が拡散されてる」


 「......え?」


---


---


 ヨナタンが目を開けた。


---


 「......腕相撲?」


 「10連勝だ」


 「......そうか」


 「そうかじゃない。動画が拡散されてる」


 「......」


---


---


---


 その日の午後。


 局長から連絡が来た。


---


 『お前ら、何やってるんだ』


---


---


 瀧本は電話に出た。


---


 「局長、すみません......」


 『すみませんじゃない。CNNがまた取り上げてるぞ』


 「CNNが......?」


 『「英雄の休日」とかいうタイトルで』


 「......」


 『まあ、好意的な報道だから、いいけどな』


 「好意的......?」


 『「英雄も人間だ。たまには羽目を外す」とか言ってる』


 「......」


 『ライアン・レイノルズが、また喜んでツイートしてるぞ』


 「......」


---


---


 瀧本は電話を切った。


---


 「どうだった」


 マルティネスが聞いた。


 「好意的な報道らしい」


 「良かったじゃないか」


 「良くない。恥ずかしい」


 「恥ずかしがるな」


 「恥ずかしい」


---


---


 スヨンが入ってきた。


---


 「瀧本」


 「......何だ」


 「ゴーゴーバー、楽しかった?」


---


 瀧本は固まった。


---


 「......見たのか」


 「見たわよ。SNSで」


 「......」


 「傷跡見せて叫んでたわね」


 「......」


 「楽しそうだったわね」


 「......」


---


 スヨンの目が、冷たかった。


---


 「今夜、話があるから」


 「......はい」


---


---


 瀧本は、また頭を抱えた。


---


 「終わった......」


---


---


---


---


---


 一週間後。


---


 アルファチームに、帰投命令が出た。


---


---


 「バンコクに戻るのか」


 瀧本が聞いた。


 「ああ。三ヶ月の予定だったが、前倒しだ」


 ジョンソンが答えた。


 「なんでだ」


 「お前の叙任式がある。王宮で」


 「ああ、騎士のやつか」


 「そうだ。来月だろ。バンコクにいないとまずい」


---


 瀧本は頷いた。


---


 「で、ウドンターニーは」


 「チャーリーチームと交代だ。柏木がこっちに来る」


 「柏木さんが?」


 「ああ。ウドンターニーを空白にするわけにはいかないからな」


---


 マルティネスが言った。


---


 「局長の狙いは、それだけじゃないだろうな」


 「どういう意味だ」


 「柏木を成長させたいんだよ。ここで」


 「成長?」


 「ああ。俺たちがいない環境で、自分で考えさせる」


---


 ヨナタンが言った。


---


 「マリーも一緒だ」


 「マリーが?」


 「ああ。チャーリーチームだからな」


 「......」


 「局長は、その辺も計算してるだろう」


---


 瀧本は少し笑った。


---


 「局長、策士だな」


 「策士だ。だから局長なんだ」


---


---


 瀧本は眉をひそめた。


---


 「柏木さんが?」


 「ああ。スッティンに会いに行くらしい」


 「スッティン......あのNGOの人か」


 「そうだ。柏木をタイに呼んだ人だ」


 「なんで会いに行くんだ」


 「知らん。でも、局長が許可した」


---


---


---


 数日後。


 ウドンターニー。


---


 アルファチームとチャーリーチームが、交代した。


---


---


 「久しぶりだな、瀧本」


 柏木が言った。


 「久しぶりです、柏木さん」


---


 二人は向かい合った。


---


 「騎士になるらしいな」


 「なるらしいです」


 「おめでとう」


 「ありがとうございます」


---


 沈黙。


---


 「柏木さん」


 「何だ」


 「スッティンに、何を聞きに行くんですか」


---


 柏木は少し黙った。


---


 「......分からないことがある」


 「分からないこと?」


 「ああ。俺には、分からないことが多すぎる」


 「......」


 「スッティンなら、何か分かるかもしれない」


---


---


 瀧本は、柏木を見た。


---


 「俺が言ったこと、覚えてますか」


 「覚えてる」


 「資格がないなら、作る」


 「ああ」


 「逃げないでください。柏木さん」


---


 柏木は頷いた。


---


 「逃げない。今度は」


---


---


---


 アルファチームは、バンコクに向かった。


 チャーリーチームは、ウドンターニーに残った。


---


---


---


 その夜。


 ウドンターニー郊外。


 スッティン・パイブーンのNGO事務所。


---


 柏木は、一人で訪れていた。


---


---


 「久しぶりだな、柏木」


 スッティンが迎えた。


 「久しぶりです」


---


 二人は、事務所の中で向かい合った。


---


 「何の用だ」


 「聞きたいことがあります」


 「何だ」


---


 柏木は、少し黙った。


---


 「俺を......タイに呼んだ理由を、もう一度聞かせてください」


---


 スッティンは、柏木を見た。


---


 「もう一度?」


 「はい。俺は、何も分かっていなかった」


 「......」


 「戦うことしか考えていなかった」


 「......」


 「でも、それだけじゃ、ダメだと気づいた」


---


---


 スッティンは、椅子に座った。


---


 「お前は、変わったな」


 「変わりましたか」


 「ああ。前より、迷っている」


 「迷っています」


 「それでいい」


---


 スッティンは続けた。


---


 「迷わない人間は、成長しない」


 「......」


 「お前が迷っているなら、お前は成長している」


 「......」


 「俺がお前をタイに呼んだ理由......もう一度、話そう」


---


---


 柏木は、スッティンの話を聞いた。


---


 長い夜が、始まった。

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