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The Man Who Would Not Die: 死んでたまるか  作者: Operator3118
第4章 鋼鉄
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幕間 英雄

瀧本が撃たれた日。


 市場には、大勢の人がいた。


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 そして、スマートフォンを持っている人も、大勢いた。


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 動画が撮られていた。


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 白いバイクの男が、銃声に向かって走っていく姿。


 犯人の前に飛び出す姿。


 子供を抱きしめて、背中で銃弾を受け止める姿。


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 全てが、撮影されていた。


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 動画は、その日のうちにSNSに投稿された。


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 一時間で、百万回再生。


 三時間で、五百万回再生。


 六時間で、二千万回再生。


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 翌日には、一億回を突破した。


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 『白バイの男が子供を守って18発被弾』


 『心肺停止から蘇生』


 『タイの英雄、瀧本勝幸』


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 SNSは、瀧本の話題で溢れた。


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 『この男、マジで何者?』


 『18発撃たれて生きてるとか、人間じゃない』


 『子供を守るために自分の体を盾に......泣いた』


 『これが本物のヒーローだ』


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 『前に見た。バイクでバンに突っ込んでた人だ』


 『あの人か! タイの特殊部隊の!』


 『突撃隊ってやつだよな』


 『ガトリングぶっ放してた部隊の人?』


 『そうそう、あの部隊』


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 『日本人らしいぞ』


 『元日本の警察だって』


 『日本じゃ殺人犯扱いされてたよな』


 『連続殺人犯を止めたのに?』


 『日本の司法おかしいだろ』


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 CNN。


 特集番組。


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 『Real Hero: The Man Who Took 18 Bullets』


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 キャスターが語った。


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 「タイで起きた銃乱射事件。一人の男が、5歳の少女を守るために自らの体を盾にしました」


 「瀧本勝幸、38歳。タイ王室犯罪対策局の隊員です」


 「彼は18発の銃弾を受け、心肺停止に陥りました」


 「しかし、蘇生に成功。現在は回復に向かっています」


---


 動画が流れた。


 瀧本が子供の前に飛び込む瞬間。


---


 「この映像を見てください。彼は一切の躊躇なく、少女の前に飛び込んでいます」


 「考える暇もなかったでしょう。本能的な行動です」


 「これが、真のヒーローです」


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 BBC。


 特集番組。


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 『The Shield: Thai Officer's Heroic Act』


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 記者が現地からレポートした。


---


 「私は今、ウドンターニーの病院の前にいます」


 「瀧本勝幸氏は、この病院で治療を受けています」


 「彼の行動は、世界中で称賛されています」


---


 インタビュー映像。


 助けられた少女の母親。


---


 「あの方がいなければ、娘は死んでいました」


 「命をかけて、娘を守ってくれました」


 「感謝しても、しきれません」


---


 涙を流していた。


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---


 ロサンゼルス。


 Netflix本社。


---


 制作チームが、ニュースを見ていた。


---


 「見たか、これ!」


 プロデューサーが叫んだ。


 「18発だぞ、18発!」


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 「信じられない......」


 「これ、脚本に書いても『嘘くさい』って言われるレベルだぞ」


 「でも、実話だ」


 「実話だから、使える!」


---


 脚本家がメモを取っていた。


---


 「子供を守るために18発......これ、シーズン1のクライマックスにしよう」


 「いいな、それ」


 「瀧本のエピソードを膨らませよう」


 「ライアンに連絡しろ。絶対に喜ぶ」


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---


 同時刻。


 ニューヨーク。


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 ライアン・レイノルズは、スマホでニュースを見ていた。


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 動画を見た。


 瀧本が子供を守る瞬間を見た。


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 「YES!!!」


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 ライアンは歓声を上げた。


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 妻のブレイク・ライブリーが驚いた。


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 「どうしたの?」


 「見ろ、これ! 瀧本だ!」


 「瀧本? あなたが演じる人?」


 「そうだ! 18発撃たれて生きてる!」


 「......18発?」


 「18発だ! 子供を守って! 心肺停止から蘇生した!」


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 ブレイクは動画を見た。


---


 「......すごいわね」


 「すごいなんてもんじゃない! 最高だ!」


 「あなた、興奮しすぎよ」


 「興奮するだろ! 俺が演じる男が、リアルタイムで英雄になってるんだぞ!」


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---


 ライアンはすぐにSNSに投稿した。


---


 『@RyanReynolds


  Katsuyuki Takimoto. The man I'm honored to portray.

  18 bullets. Still alive. Still fighting.

  This is what a REAL hero looks like.

  Get well soon, my friend. 』


---


 このツイートは、瞬く間に拡散された。


 百万いいね。


 三十万リツイート。


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 世界中のメディアが、瀧本を取り上げた。


---


 フランスのLe Monde。


 『Un héros japonais en Thaïlande』(タイの日本人英雄)


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 ドイツのDer Spiegel。


 『Der Mann, der 18 Kugeln überlebte』(18発を生き延びた男)


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 イタリアのCorriere della Sera。


 『L'eroe che ha protetto una bambina』(少女を守った英雄)


---


 オーストラリアのThe Sydney Morning Herald。


 『Thai officer takes 18 bullets to save child』


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---


 そして、日本。


---


---


 日本のメディアは、沈黙していた。


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 前回の教訓があった。


 瀧本を批判すれば、また世界から叩かれる。


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 だが、称賛もしなかった。


 「殺人犯」を称賛すれば、国内から叩かれる。


---


 結果、沈黙。


---


---


 だが、日本のSNSは違った。


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 『瀧本さん、かっこよすぎる』


 『これが日本人だ。誇りに思う』


 『なんで日本のメディアは報道しないの?』


 『報道できないんだよ。前に叩いたから』


 『情けない......』


---


 『瀧本さんを殺人犯扱いした日本、恥ずかしい』


 『今からでも謝罪しろよ』


 『無理だろ。プライドが許さない』


 『そのプライドが一番恥ずかしい』


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---


 ウドンターニー県立病院。


 瀧本の病室。


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 瀧本は、ベッドの上でスマホを見ていた。


---


 自分の名前で検索した。


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 『瀧本勝幸』


 『18発』


 『英雄』


 『タイの英雄』


 『Real Hero』


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---


 CNNの特集を見た。


 BBCの特集を見た。


 ライアン・レイノルズのツイートを見た。


---


---


 瀧本は、スマホを置いた。


---


 天井を見上げた。


---


---


 「......なんでやねん」


---


---


 横で、スヨンが首を傾げた。


---


 「何? なんでやねん、って」


 「関西弁だ。気にするな」


 「意味は?」


 「『なんでだよ』って意味だ」


 「何がなんでなの?」


---


 瀧本はスマホを見せた。


---


 「これだ。俺、英雄になってる」


 「当然でしょ。18発撃たれて子供を守ったんだから」


 「いや、俺はただ......」


 「ただ、何?」


 「考える前に動いただけだ」


 「それが英雄なのよ」


 「お前も局長も、同じこと言うな」


 「事実だからよ」


---


---


 ドアが開いた。


 ジョンソンたちが入ってきた。


---


 「瀧本、見たか」


 「見た」


 「CNN、お前の特集やってたぞ」


 「知ってる」


 「BBC」も」


 「知ってる」


 「ライアン・レイノルズがツイートしてた」


 「知ってる」


---


 マルティネスがニヤニヤしていた。


---


 「お前、世界的な英雄だぞ」


 「なりたくてなったんじゃない」


 「なりたくなくてもなったんだ。諦めろ」


 「諦めたくない」


 「諦めろ」


---


---


 ヨナタンが言った。


---


 「悪いことじゃない」


 「悪いことじゃないけど......」


 「お前の行動が、世界中に知られた。それだけだ」


 「それだけ、か」


 「それだけだ。気にするな」


---


---


 瀧本は溜息をついた。


---


 「俺は、普通に仕事してただけなんだけどな」


 「普通じゃないから、英雄なんだよ」


 「普通だって」


 「普通の人間は、18発撃たれて死ぬ」


 「......」


 「お前は死ななかった。だから、普通じゃない」


 「......」


---


---


 アブドゥルが言った。


---


 「アッラーの加護だな」


 「俺、イスラム教徒じゃないんだけど」


 「関係ない。アッラーは全ての善人を守る」


 「そうなのか」


 「そうだ」


---


 ピーターが言った。


---


 「医学的には、奇跡だ」


 「奇跡か」


 「18発。そのうち5発は致命傷になりうる位置だった」


 「......」


 「なぜ生きているのか、俺にも分からない」


 「......」


 「お前の生命力が、異常なんだ」


 「異常......」


 「褒め言葉だ」


 「褒め言葉なのか、それ」


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---


 スヨンが瀧本の手を握った。


---


 「生きててくれて、ありがとう」


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 瀧本はスヨンを見た。


---


 「......ああ」


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---


 窓の外では、報道陣が集まり始めていた。


 世界中から、記者が来ている。


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---


 瀧本は、また溜息をついた。


---


 「なんでやねん......」


---


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 こうして、瀧本勝幸は、本人の知らぬ間に英雄になった。


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 死ぬ気ゼロ。


 生きる気満々。


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 それだけで、世界を動かした男。

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