第3章 近現代の視点――シミュレーション仮説と情報理論
3-1. シミュレーション仮説
ニック・ボストロムの論文(2003年)で広く知れ渡ったシミュレーション仮説は、「非常に高度な文明が過去の歴史や別の可能世界をコンピュータ上でシミュレートすることができるなら、我々の世界がオリジナルの現実である確率は低い」という主張を含んでいる。すなわち、仮に上位文明が無数のシミュレーションを走らせるなら、私たちがオリジナルよりもシミュレーションの一つに該当する可能性が高いというわけだ。
3-2. 情報理論と量子コンピュータ
量子力学の諸現象を情報理論的に解釈する動きが近年活発化している。観測や波動関数の収縮が“情報の更新”であるとか、宇宙全体を計算機的なプロセスとして見るアイデアが台頭している。もし本当にこの世界が情報構造を本質としているなら、“コンピュータのストレージ上”の存在だと捉えるのも極端な妄想とは言えなくなってくる。
3-3. 創造主の遊びという解釈
こうしたシミュレーション仮説をさらに一歩踏み込んで擬人化すれば、“創造主”が自身のパソコン(あるいは高次元のコンピュータ)を使い、膨大なストレージを確保して宇宙シミュレーションを走らせていると想定できる。その目的は遊興なのか研究なのかは不明だが、“神の娯楽”という解釈も可能になる。これは、古代の神話が語った「神の戯れ」の現代版とも言えるだろう。




