AIの分際
お昼になると召使いが豪華な食事を運んでくる。アーサってほんとに下級のAI?と疑問が生じる。AIなんだから死ぬこともないし、生活も保障されているのだろう。どこの組織に直属しているかは知らないが、こんな立派な宮殿に住んでいるのだから、たぶん上級のAIに違いない。
宮殿は見るからに豪華で全体が大理石でできている。まるで中世の建物みたいだ。火星についてもリサーチ不足で、地球との違いが分からない。酸素はある。太陽の光も届いている。高層ビル、車、街ゆく人々は地球人と大差ない。しかし肝心のアーサーに興味がないから、私はアーサーのお后には到底なれっこない。
アーサーが上座に座ると昼の準備が始まる。次々と食事が運ばれてくる。
「里緒奈さんあなたも私の隣に来てご飯を食べるんです。それが夫婦のしきたりです」
「そう言っても、私はお后を受け入れたわけでないから、あなたの傲慢で私をドタバタに巻き込まないでちょうだい」
私は冷たい声でアーサーに言った。アーサーは思案したのちおもむろに言った。
「でも僕とあなたは契りを結んだんです、これからは運命共同体なんです」
アーサーはやたらとそれを強調するが、私には契りを結んだ記憶がない。
「いい加減なこと言ってるんじゃないの。それに生身の人間とAIが交わるってそんな訳わけないじゃん。そら見なさい、図星でしょ」
私は少し天狗になって言った。
「それだけ言うのなら証拠のビデオをご覧になりますか?」
そこにはアーサーと私が交わっている映像が静かに淡々と流れた。これ何かの冗談でしょ?アーサーが作ったニセの動画かなんかじゃない?最近のAIは有能だから何でもできちゃうんだ。そう思う私をよそにアーサーは真剣に動画を食い入るように見ている。
時々漏れる自分の声が妙にリアルに聞こえる。一瞬場が静まり返った。私ってこんな風に感じるんだ。そこにはアーサーと私が交わっている映像が静かに淡々と流れた。
それは矛盾だらけの自分のように見えた、それにしてもアーサーは卑怯者だと思った。こんな奴殺してしまうにこしたことはない。そう思った次の瞬間に隣にいたアーサーの首を絞めていた。もちろん効果がないことは知っている。それでも私はひたすらアーサーの首を絞めたのだった。




