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くまがあばれてテラフォーミング!  作者: 遊歩人


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第六十四話 記憶断片058-終焉

2035年7月9日ーー。


戦闘が始まってから、すでに二週間が経過していた。

ケイト達は施設から脱出することが叶わず、引き続き籠城を余儀なくされていた。

レッドロックは、昼夜を問わず続く無人ドローンの波状攻撃に晒されながらも、T2と米軍警備大隊の連携によって、なんとか施設内への突破は許さずに持ちこたえていた。戦いは拮抗していた。


だが――その均衡は、唐突に崩れた。


敵が投入してきたのは、ハッキングしたアークジェネシス5台。

それは、災厄だった。


5台は連携しながら進軍し、障壁を容易に突破。

流れるような攻撃により軍の防衛線は数時間で壊滅してしまった。


壊滅までの時間が余りに速かった為、軍の増援部隊は間に合わず、レッドロック戦術技術試験場は完全に孤立し崩壊の淵に立たされた。


ミハイルは、T2で捨て身の突撃を敢行。

アントンは管制塔からロケットランチャーの砲撃で支援し、2人の連携によって1台を撃破した。


だが、この攻撃によりアントンの位置は他の機体に捕捉されてしまい、管制塔ごと敵の砲撃を受けて爆破。

爆煙の中、彼の姿は確認できず、アントンの消息は不明となってしまった。


彼の名を呼ぶ暇もなかった。

ミハイルは、T2のコックピットからその爆発を目の当たりにする。

拳を握りしめ、歯を食いしばる。


「くっ……アントン……」


彼は、残るアークジェネシスの内の一台に一瞬の隙を見つけ突撃した。

至近距離からコアを狙って何とか破壊に成功したが、それと同時に別の機体から横からの砲撃を受け、大爆発に巻き込まれた結果T2は激しく破損した。


機体から投げだされたミハイルは、瓦礫の中から這い出し、血に染まりながらも立ち上がった。


──ケイトを守らなければ。


施設の奥へと走る。

通路は崩れ、煙が充満していた。

遠くから、残る3台のアークジェネシスが施設内へ侵入してくる音が響く。


ケイトは、部屋の端でYUKIとじっとしていた。


ミハイルが扉を蹴破り入ってくる。

ケイトが振り返った瞬間、奥から来るアークジェネシスが目に入った。


「駄目よミハイル、逃げて、こっちに来てる……」


ミハイルは、何も言わずにケイトに駆け寄り、

その体を抱きしめるように覆い被さった。


その直後、砲撃が、壁を貫き、二人を捉える。


ミハイルの背中に銃弾が貫く。

その瞬間、彼の体が大きく震え、血が噴き出す。


「……守れなくて、ごめん……」


その声は、かすれていた。

でも、確かに届いた。


ケイトもミハイルを貫通した銃弾で腹部を撃ち抜かれ、出血により徐々に意識が遠のいていく。


そのとき――

YUKIが、静かに歩み寄ってきた。


銀色の装置が展開され、内部から注射器のようなものが飛び出す。

YUKIは、ミハイルの首元にそれを刺し、次にケイトにも同じ処置を施した。


薄れゆく意識の中でケイトはそれを見届ける。


ケイトは、最後の力でミハイルの頬に手を添えた。

その顔は、血に濡れていたが、どこか安らかに見えた。


ケイトは、そっと唇を重ねる。


そして、静かに目を閉じた。


---


軍の増援部隊がレッドロックに到着したのは、すでに戦闘が終わった後だった。


彼らが見たのは、瓦礫に埋もれた施設と、破壊されたT2の残骸。

そして、地下施設の奥で重なって横たわる二人の遺体だった。


ケイト・モリスの死によって襲撃は収まり、レッドロックの地での激しい戦いはここに幕を閉じた。


---


2035年7月末、地球環境安定性に関する最新のシミュレーション結果が発表された。

今回の調査によると、新たな変異体ウイルスの大流行が家畜類を中心に確認された。

この変異体は感染力が極めて高く、種を問わず人類含む哺乳類・鳥類・一部爬虫類にまで拡大している事が確認されている。

重症化率は低いが、脳神経および生殖器官に高確率で影響を与える事が判明している。

発症した場合、繁殖能力の低下が顕著な為、今後、個体数の自然回復が困難となる種が多数発生する事が予測されている。

人類においても、この新たな変異ウイルスによる出生率の低下や、食糧供給の崩壊、植生環境の変化などが複合的に作用し、最新の予測モデルでは、200年以内に多くの種と共に絶滅する確率が100%であると結論づけられた。


2035年8月12日ーー


南極の制御用コアが破壊されてから58日後、制御用コアが再起動した後に、AIロボット達が暴走する可能性に備え、各国はそれぞれ軍を配備していたが、結果的にAIロボット達の暴走は起こらなかった。

これはケイト・モリス博士が、命をかけて人類の尊厳を守ってくれた為であるという噂が、米軍を中心に広まり、その噂は世界へと拡散された。



その後の地球と人類について


・2040年代:全世界で出生率の急落。都市機能が縮小。AIによる生活支援が主流化。


• 2080年代:世界人口の半減。若年層の消失。感染獣の再増加による野生生態系の完全崩壊。


• 2130年代:人類の総人口は10万人を下回る。植生の変化により地球の緑地帯の大部分が草原化。


• 2200年頃:最後の人類集団が記録から消える。AIは彼らの死を静かに見届けた。



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