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くまがあばれてテラフォーミング!  作者: 遊歩人


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第六十三話 記憶断片057-明けない夜

彼女も佐藤もやるべき事はやった。


ケイトは震える膝を押さえながら立ち上がる。

今は、何よりも佐藤を救わなければならない。


彼女は医療区画へと駆け出した。

通路を走り抜け、ホバーストレッチャーを引き出す。

起動音が静かに響き、機体が浮上する。


部屋に戻ると、ケイトは慎重に佐藤の体を乗せた。

ストレッチャーは自動で体重を検知し、安定姿勢に切り替わる。


そのまま、緊急治療室へと運び込む。

扉が開き、白い光に包まれた多機能バイオベッドが姿を現す。


ケイトは佐藤をベッドに移し、生命維持モードを展開。

モニターが起動し、心拍・呼吸・脳波の安定化処理が始まる。

人工循環、酸素供給、神経保護――

ベッドが静かに佐藤の命を支え始めた。


「ひとまず、これでよし」


ケイトはまた佐藤の部屋に戻り、今度はYUKIに接続されていたケーブルを一つずつ外していく。

端末とのリンク、補助電源、センサーモニター――

最後のケーブルを外すと、ケイトは微笑みながら言った。


「……はい、これでYUKIちゃんも自由だよ」


YUKIは静かに頭を傾けた。


すべてを終えると、ケイトはその場を離れ、ふらふらとした足取りで食堂へ向かった。

通路の照明が、彼女の影を長く引き伸ばしていた。


食堂の扉が開く。

その瞬間、ケイトの目にミハイルの姿が映った。


彼は、静かに座っていた。


ケイトは、何も言わずにその場に座り込んだ。

膝を抱え、顔を伏せる。


そして――

堰を切ったように、泣き始めた。


声を殺すこともできず、涙が次々と溢れ出す。

張り詰めていた心の糸が、音を立てて切れていくように。


ミハイルは、戸惑いながら立ち上がった。

だが、すぐにケイトの傍に膝をつき、そっと腕を回す。


ケイトは、涙の中で言った。


「……私を褒めて……

私やらなきゃいけないこと……やったよ……」


ミハイルは、少しだけ目を伏せてから、静かに言った。


「……頑張ったな」


その言葉は、短くて、優しかった。

ケイトはミハイルの胸に顔を埋め、さらに泣いた。

涙は止まらず、嗚咽が肩を震わせる。

ミハイルは、何も言わずにケイトの背を支えた。


しばらくして、泣き疲れた彼女は言葉もなくミハイルの胸に身を預けた。

ミハイルは、そっと彼女を抱き上げた。

ケイトの部屋まで行き、扉を開け、ベッドに彼女をそっと横たえた。

毛布をかけ、枕元に水を置く。

ケイトは、目を閉じたまま、静かに呼吸をしていた。

ミハイルはケイトの頭を軽く撫で、静かに部屋を後にした。



翌朝ーー。


警報が鳴った。

ケイトは目を覚ました瞬間、昨日の涙の余韻を忘れるほどの緊張に包まれた。


「......嘘!?......もう追っ手が来たの」


施設全体が揺れ、赤い警戒灯が点滅する。


「敵影確認。ドローン群、南西から接近中」

通信が飛び交い、兵士たちが配置に走る。


アントンが通路でケイトを見つけ、声をかけた。

「来たか……。こっちも準備はしてるが、数が多すぎる。ミハイルはT2に乗って迎撃に出た。

敵はお前が狙いだ、奥の部屋に避難しておけ。」


ケイトは頷き、YUKIと共に奥の部屋へと避難する。


その日から、レッドロックは戦場になった。


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