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くまがあばれてテラフォーミング!  作者: 遊歩人


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第六十話 記憶断片054-襲撃

2035年6月24日午後ーー


軌道エレベーター建設準備区域・地下制御室ーー


ケイトが2つ目のキーを受け取った直後、制御室の照明が一瞬だけ揺らいだ。

続いて、施設全体に警報が鳴り響く。

低く、断続的な警告音が壁を震わせる。


スティーブンは、音に動じることなく、静かに言った。


「……やはり来ましたね」


彼はコンソールの警告表示を一瞥し、ケイトに向き直る。


「これから先、私かあなたのどちらかが倒れれば、コアの原理は二度と書き換えられなくなります。

彼らは、その事を分かった上で狙っているのかもしれない。

……タイミングが良すぎるので、おそらく、国や軍の上層部にも結社の人間が潜んでいるのでしょう。

情報が漏れている。」


彼は、コンソールの脇にある小型ケースを開け、何かを取り出していた。


金属光沢のある小さな装置――

ケイトに向かって、何かを説明している。

だが、爆音と警報が重なり、ミハイルには言葉の内容が聞き取れなかった。


ケイトは黙って頷き、その装置を受け取ると、胸元のポーチに収めた。


「それをYJ-01に取り付けてください」

スティーブンの声が、爆音の合間にようやく届いた。


ケイトは短く答えた。


「……わかりました」


その瞬間、制御室の外でさらに大きな爆発が起きた。

警告表示が赤に切り替わり、施設の自動防御が起動する。


ケイトは、モジュールを握りしめたまま、わずかに息を呑んだ。


「軍もあなた方を守るよう抗戦します。

YJ-01に追加構文を記入した後、また私に鍵を戻していただければ――

あなたへの攻撃も、いずれは収まるはずです

それまで何とか凌いでください」


スティーブンは、ミハイルに視線を向ける。


「ミハイルさん。

それまで、どうか彼女を守ってあげてください。

あなたの判断全てが、人類の未来を左右します」


ミハイルは短く頷いた。

その表情に、迷いはなかった。


スティーブンは、車椅子の背もたれに身を預けながら、最後に言った。


「私のいるこのエリアは、並大抵の攻撃では破られないよう出来ています。

どうか私のことは気になさらず、急いでこの区域から脱出してください」


「我々はあなた方と佐藤博士に、人類の命運を託します」


その言葉は、静かだったがとても重かった。


ケイトは、暗号キーを展開する為のモジュールと銀色の小さな装置を胸元に収め、ミハイルと目を合わせた。

目が合ったミハイルは軽く頷いた。

そして、二人は急いで制御室を後にした。


地下施設を出た瞬間、空気が変わった。

爆風、通信ノイズ、焼けた金属の匂い――すでに戦闘は始まっていた。

空には無数の無人ドローンが旋回し、地上では米軍の装甲部隊が応戦している。


「ターゲットはケイト・モリス。識別信号、照合済み」

敵側の通信が傍受され、即座に警告が走る。


ミハイルは迷わずT2へ駆け込んだ。

機体が起動し、背部ユニットからOnix素材製のシールドが展開準備に入る。

HUDが戦場の状況を解析し、敵の編隊をマッピングする。


「ケイト博士、乗って!」

米軍兵が防弾車両の後部ドアを開け、ケイトを押し込む。

彼女は受け取った物を胸元に抱えたまま、無言で乗り込んだ。


T2が車両の側面に並び、護衛モードへ移行。

ミハイルの視界には、敵ドローンの編隊がすでに接近していた。


「敵ドローン、距離90。高速接近中」

「迎撃開始」


T2の右腕ユニットが展開し、大口径電磁ライフルがロック解除される。

チャージ音が空気を震わせ、次の瞬間、青白い閃光が空を裂いた。


一発で三機のドローンが爆ぜる。

破片が雨のように降り注ぐ、T2は背部シールドを展開してケイトの車両を守る。


「EMP弾装填。左側面、補給ドローン群」

ミハイルは即座に旋回し、脚部スラスターで滑るように移動。

EMP弾が着弾し、敵のユニットが一斉に機能停止する。


米軍の装甲車両が前方を制圧しながら進路を確保。

通信が飛び交う。


「こちら第3機甲隊。防衛ライン突破された。後方支援を要請」

「T2、右側面をカバー。敵の突撃ドローンが回り込んでいる!」


ミハイルはT2を跳躍させ、空中から電磁ライフルを連射。

地上のドローン群が次々と爆散し、進路が再び開かれる。


ケイトの車両は、爆風の中を縫うように前進する。

車体に衝撃が走るたび、T2が盾となって受け止めた。


何とか敵のドローン群を凌ぎ、軌道エレベーター建設準備区域入口までと到達した一行は、軍の空港に向けて、湿地帯の間を通り南へ向かった。

ケイトを乗せた防弾車両は、米軍の装甲車両とT2に囲まれ、州道41号線の旧区間を走行している。

両脇にはマングローブ林が広がり、遠くには湿原の水面が陽光を反射していた。


「進路、安定。敵ドローンの追尾信号、減衰中」

ミハイルのHUDが状況を更新する。

だが、空気は張り詰めていた。

ドローンの編隊は一度散ったが、完全に撤退したわけではない。


「このあたり、電波の干渉が強い。

湿地帯の下に旧軍通信網が埋まってる。

敵が何か仕掛けてくるなら、ここの可能性が高い」

米軍の通信士が車両内で呟く。


車列は、旧州道から分岐する補給ルートへと入った。

舗装は荒れ、路肩には放棄された通信塔や崩れかけた監視施設が点在している。

遠くに、軍の空港施設が見え始めていた。


そのときだった。

T2のセンサーが異常信号を検知する。


「……非熱源反応。高速接近中。」


ミハイルは即座にT2を前方に展開させ、Onixシールドをケイトの車両を覆うように配置し、電磁ライフルを構える。


「何かが来る。

……これは、ドローンじゃない」

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