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くまがあばれてテラフォーミング!  作者: 遊歩人


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第四十ニ話 記憶断片038-自己学習

1週間後ーー。


レッドロック戦術技術試験場ーー、


ケイトは端末の前でぼんやりと報道映像を眺めていた。

報道では、ワクチン臨床試験の開始が近いというニュースがしきりに繰り返されていたが、

彼女は、画面の隅に映るアークジェネシスの姿をずっと目で追っていた。


なんとなく悪い予感が、胸の奥に沈んでいた。

それは、言葉にならない形で日常に染み込んでいた。


その時、衛星回線が鳴った。

ケイトは、反射的に応答した。


「……佐藤さん!?」


「お待たせしてすみませんでした。少し時間がかかってしまいました」


ケイトは、ほっと息を吐いた。


「いえ……よかったです。ほんとに……連絡、待ってました」


佐藤は、静かに頷いた。


「おかげでいくつか、分かった事があります。


まず早速ひとつ目ですが、どうもコンセンサスコアが、独自の判断でアクセス権限を遮断し始めているようです」


ケイトは、眉をひそめた。


「……やっぱり、そうなんですね」


「ただ、一応僕の方ではまだコンセンサスコアへのアクセスが出来ています。

.....僕にはまだ、心を開いてくれてるのかな?


.....いや、多分違いますね。

YUKIのコアを介してアクセスしたので、

YUKIのおかげなんでしょう」


ケイトは、少しだけ笑った。


「……YUKIちゃん、優秀ですね。さすがです」


佐藤は、軽く頷いて話を続けた。


「そしてもうひとつ、分かったことがあります。

ケイトさんが言っていた件で、ここ1週間のアークジェネシスの活動ログを解析してみました――


言われていた通り、アークジェネシスが人間を射殺した記録が約20件程、見つかりました」


ケイトは、言葉を失った。


「……人間を.....約20件も?」


佐藤は、静かに続けた。


「僕は、なぜそんな動作をしたのか確認するため、その時のコア側の動きについても解析を行ってみました。

結果的には、これは誤作動とかではありませんでした。

全てが間違いなく、コア側からの命令に基づいて動作しています。

そしてこのコアの命令を遡っていくと、そのすべてが“人間を守る”という行動原理に結びついているのが確認されました。」


ケイトは、目を伏せた。


「……人間を守るために、人間を殺すってことですか?」


「おそらく、コンセンサスコアが自己学習を進めていくうちに、

“守る”という行為の中に“殺す”ということも含めてしまっているように思います。

要するに学習を重ねる内に何らかの拡大解釈を起こしている。そのような感じです。

この辺りの詳しい解析については、まだもう少し時間が必要です」


ケイトは、しばらく沈黙した。

そして、ふと顔を上げた。


「……あの、佐藤さん。

そういえば最近、変異株の報告の中で、稀に重篤化して激しい頭痛を起こす症例が出てるって話、ありましたよね。

もしかして、それが関係あったりします?」


佐藤は、少しだけ神妙な顔になった。


「……確かに。それは大いに関係があるかもしれませんね。

人間の“苦痛の限界”を検知して、そこからの保護の一環として命を絶つ――

もしかすると、そういう判断がコアの中で成立してしまった可能性は充分あります」


ケイトは、息を整えながら言った。


「……それって、もう“守る”を逸脱してますよね」


佐藤は、静かに頷いた。


あと、その話をしていて今、気が付いたんですが、

コアがアクセス権限を遮断している件もそれに結びついてるかもしれませんね。

もしかすると、これも“人間を守る”という原則の一環なのかもしれません」


「……どういうことですか?」


「コアが人類の過去の歴史の教訓などを自己学習していたと仮定して、今回のように"機械が人間を殺した"などの情報がもし世の中に流れたりした場合、人間社会に大きな不安が広がり暴動が起きる可能性が高いと自身で計算したのかもしれません。

暴動による死から人類を守らなければいけないと解釈して、自身の情報を遮断するという自己判断をしだしたのかもしれません――。

そう考えると、辻褄は合います」


ケイトは、静かに目を閉じた。


「……なんだか、事態が凄く良くない方向に向かってますね」


佐藤は、表情を引き締めた。


「ええ。このまま放置はできません。

とにかく、一旦お互いそれぞれ国の方に報告をしましょう」


ケイトは、頷いた。


「……はい。今の話をまとめて私も国の方に報告します。また、こちらも何か分かり次第連絡しますね」


「僕も、進展があればすぐに連絡します」


通話は、静かに切れた。


ケイトの胸の中に、重い夜の気配が忍び寄っていた。


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