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くまがあばれてテラフォーミング!  作者: 遊歩人


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第三十七話 記憶断片033-アークジェネシス

2034年4月ーー。



完成が待ち望まれた世界初、全世界共同運用機体

プロトガーディアンαーー通称アークジェネシス。

その機体が姿を現したとき、誰もが息を呑んだ。

犬型――だが、サラブレッドほどの体躯。

滑らかな関節駆動、冷却装甲の重厚な質感、そして胸部に埋め込まれたOnix-9複合装甲。

それは、ただの兵器ではなかった。

**人類の技術史が一つに集約された“意志の器”**だった。


開発にかかった時間は、約1年。

だが、その密度は、10年分の技術と情熱に匹敵した。


機体の開発に深く携わったのは――


まず、日本の技師、牧野誠一だった。

彼はYJ-01の骨格設計を手がけた人物であり、人格模倣AIとの物理同期構造を世界で初めて実用化した技術者でもある。

アークジェネシスでは、中枢駆動系と神経伝達フレームの設計責任者として、機体の“動き”そのものを定義した。


そして、ロシアからはアレクセイ・ミハイロフが参加した。

彼は寒冷地対応型の無人兵器群を多数開発してきた装甲設計のスペシャリスト。

アークジェネシスでは、外装構造・起動安定性・耐久性の最適化を担当した。また、装甲材にOnix-9複合装甲を採用し、機体の“生存力”を決定づけた。


アメリカからは、ケイト・モリスが技術提供者として参加した。

彼女はT2の戦術学習データを持ち込み、さらに無人型T2量産機の稼働部設計データを提供した。

アークジェネシスの動作予測と物理挙動の一致率は、彼女の手によって飛躍的に向上した。


感染体検知モジュールの設計責任者は、中国科学院の李崑だった。

彼は、脳波同期と分泌物反応を統合した予兆検知モデルを構築し、感染体判別速度と精度を従来の3倍に引き上げた。


それ以外にも、アークジェネシスの各所には世界中の技術の断片が散りばめられていた。

ドイツの振動制御機構、イスラエルの境界警戒センサー、韓国の隔離施設用AIプロトコル、カナダの寒冷地電源管理技術――

それぞれが、単なる部品ではなく、“生存の知恵”として組み込まれていた。この機体は、ただの兵器ではない。

それは、人類が積み重ねてきた技術と希望の集積体だった。この機体は、まさに世界の技術の粋を集めた結晶だった。



アークジェネシス初起動テスト当日ーー。


会場には各国首脳と技術責任者が集まっていた。

ロシアのアレクセイ・ミハイロフが、代表として前に立つ。

彼の声は低く、抑制された熱を帯びていた。


「本日は、アークジェネシスの初期動作テストを行います。

この機体は、世界各国の技術を集約したプロトガーディアンであり、

人格模倣AI、戦術学習、感染体検知、そしてコンセンサスコアとの連結機能を備えています」


ミハイロフは、赤いスイッチのついた端末を掲げた。


「緊急停止システムについて説明します。

アークジェネシスは、起動後、コンセンサスコアとのリンクが確立されるまで、自律動作は行いません。

すべての判断は、コア側で処理され、機体はその指示に従う形で動作します。

ただし、万が一リンクが不安定になった場合や、判断が逸脱した場合に備え、

即座に動作を遮断できる緊急停止機構を搭載しています」


彼は赤いスイッチに指を添えた。


「この装置は、機体の遠隔停止とコアとのリンク遮断を同時に行います。

人間の判断が、最後の安全装置です」


「では、まず、感染したラットを3匹、ケージ内に放ちます。」


スタッフが合図を送り、ケージの上部から3匹のラットが順に投下された。

床に落ちたラットたちは、互いに距離を取りながら動き始める。


「これから、アークジェネシスの起動を開始します。起動から数秒後にコンセンサスコアとのリンクが確立し自律行動を始めます。

それでは、始めたいと思います。」


彼は一拍置いて、起動スイッチを押した。


アークジェネシスが静かに立ち上がる。

関節が滑らかに動き、センサーが起動音を発した。

次の瞬間、アークジェネシスが爆発的な加速で感染ラットの駆除動作を開始

走り回るラットを正確に潰していく

動きに迷いはなかった。

判断と実行が、ほぼ同時だった。


そして会場がざわつくよりも前に、次の動きが起きた。


アークジェネシスが、突如ケージの外に向けてライフルを構えた。


「待て――!」

誰かが叫んだ。


だが、発砲はすでに行われていた。

弾丸は、会場の人々の間を正確に抜けて飛び、

50メートル先の植え込みに潜んでいた感染体と思われる猫を射抜いた。


猫は、脳波同期パターンとフェロモン反応が陽性だった。

AIは、“潜伏感染体”として即座に判定していた。


発砲と同時に、ミハイロフは赤いスイッチを押した。

アークジェネシスは、即座に停止した。


沈黙が落ちた。

誰もが、何が起きたのかを理解しようとしていた。


ミハイロフは、静かに言った。


「これは、正常な動作でした。

AIは、50m先の感染体を検知し、最短経路で排除しました。

人間への危害はゼロ。

判断精度は、設計通りです」


数秒後、会場に感嘆の声が広がった。

各国首脳は頷き、技術者たちは記録を取り始めた。


ーーこのテスト結果を受け、世界では本格的にアークジェネシスの量産が開始され。各国での配備が始まった。

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