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くまがあばれてテラフォーミング!  作者: 遊歩人


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第三十五話 国際技術会議

2033年2月ーー。



凶獣化ウイルスの拡散は、もはや局地的な災害ではなかった。

各国は対策を講じていた。日本ではYJ-02型守護ロボットの実戦投入が進みだし、凶獣の対処のみならず感染者制止などでも活躍していた。

アメリカではT2をベースとした無人AI搭載兵器の軍事転用がアメリカ政府により行われ、凶獣の駆除目的以外にも都市部の暴動鎮圧などの利用目的で投入され始めていた。


各国、凶獣の対処にそれぞれ奮闘していたが、しかし獣の暴走は減るどころか、増え続けていた。対処も困難を極めていた。

凶獣達は群れを作り、役割を分担し、戦術的に人間を襲ってくる。

それはもはや偶然の出来事ではなくなっていた。


また、それと同時に、人類の間でも異常行動は日増しに急増していた。

通り魔事件、集団暴行、無差別破壊。あらゆる暴力行為。

都市の監視網は、感染獣と同様の脳波同期パターンを示す人間を検出していた。


感染は、誰の目からみても、明らかにズーノーシスいわゆる人獣共通感染症のパンデミックへと移行していた。

空気感染。変異株。潜伏。

人間から人間への感染。



この状況を受け、国連、WHO、各国政府、そして世界中の研究者、AI設計者・軍事技術者・倫理学者たちが一堂に会する凶獣化ウイルス対策会議が、国際技術会議という名目を隠れ蓑に極秘裏で開催された。

その議題はただ一つーー。

人類は、どう生き延びるか。


冒頭、中国代表団が凶獣化ウイルスの解析結果を発表した。

潜伏期間は約3週間。

潜伏期間中の感染力高。

ラット実験では、5m四方に感染個体がいた場合、1時間後の別個体への感染率は約50%。

哺乳類および鳥類に広く感染が確認され、感染形態としては空気感染が主流。

感染後は主に脳神経系に影響を与え、凶暴性と知性の活性化が同時に発生する。

知能が高い生物ほど感染率は低下する傾向があり、人間の感染率は同条件下で5%以下と推定。

変異株の中には発症後数週間で死に至る症例もあった。変異し致死率が今後上がる可能性も考えられる。

ウイルスの特性状、このままの状況を放置すれば、ペット・家畜・小動物・鳥類・コウモリなどの爆発的感染を通じて世界中の動植物の生態系が崩壊。

植物の受粉・種子拡散・土壌循環などにも多大な影響が出はじめ、近い未来に世界全体で危機的な食糧難が発生することをシミュレーションが示していると発表した。


中国政府は続けて、

「よって現時点においては、あらゆる哺乳類・鳥類のすべての感染発症個体を早期発見し駆除する事が最重要課題であり、今後の人類存続の為に必要な最低条件でもある。」

と説明した。


各国首脳陣は、これを受けこの状況に単独では太刀打ちができないことを悟り、世界的な技術連携を模索し始めた。


日本政府は、YJ-01の技術を世界に全面的に提供する方針を発表した。


また、この流れの中で、感染源に対抗するロボットの技術は規格を統一すべきだとの声が上がる。

その結果、YJ-01型をベースとした統一規格――

プロトガーディアンの名称が正式に採択された。


そして、技術スピードを早める為、対凶獣用AIを統合した集合知ネットワークの必要性も議論された。その結果、Consensus Coreコンセンサス・コアの構築も決定された。

以降、各国の全戦術AIはこの中枢ネットワークの管理下に置かれることになる。



会議の途中、アメリカ代表団が火星移住計画を正式に議題として提出した。

アメリカ研究チームのシミュレーションによると、このままの状態が継続すると、2100年代には全人類とほぼ全ての動物は絶滅、地球における種の大半は昆虫が占める原始的な世界に変わる事がシミュレーションの結果として予測され、そうなる確率も現時点で90%以上という事を報告。


その為、今後の世界規模の対策が上手くいかなかった場合の事も考え、すでに米国の民間企業が進めている火星へのテラフォーミング事業を人類存続のバックアップ手段として評価し、世界規模でこの事業に協力し取り組むべきだという案が浮上。


この議案も採択され、感染体の駆除と並行し、

地球が居住不可能となった場合のテラフォーミング先として、火星環境の改造と移住インフラの整備を行って行く事を国際的に正式決定した。


 

会議の終盤、感染体の駆除の話の中で最大の議論の的となったのは、「感染源に人間も含めるか」だった。

倫理学者と軍事技術者の間で激しい応酬が続いたが、

最終的に、人間の場合は感染発症者を隔離する方針とすることで合意がなされた。



WHOは、この決定を受け世界各国の保険機関に向け機密事項を含む正式な通達を発行した。


「ウイルスは、人から人へ感染する。

発症者は、速やかに隔離されなければならない」


しかし、この通達は、すぐにメディアに漏れてしまった。

SNSは炎上し、各国でパニックが起きはじめる。


人々は、隣人を疑い始めた。

家族を隔離し、学校を閉鎖し、都市は沈黙した。

人々の中で、人類滅亡という言葉が具体化し始めた。


世界は静かに確実に崩壊に向けて加速しはじめたーー。

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