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くまがあばれてテラフォーミング!  作者: 遊歩人


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第二十三話 記憶断片020-魂のゆりかご

「いや問題ない。俺は協力する。」

ミハイルは迷いなく即答したーー。


「うんうん、そりゃそうだよねー。

頭に電極なんて、普通は無理だし……

私だってそんなの嫌だし....」


彼女は言いながら、グラスに手を伸ばしかけ――

そこで、ふと動きを止めた。


「え!? えっ!? 今、するって言った!?」


ケイトは口を開けたまま、しばらく固まった。


「……ちょっと待って、早すぎない!?

え、ほんとに? 今の、冗談じゃなくて?」


「冗談じゃない。」

ミハイルは言う。


ケイトの目がぱっと輝いた。


「男に二言はない!? ……って、ほんとに!? ほんとにほんとに!?」


その瞬間、アントンが椅子を引いて立ち上がった。


「おいおい、ちょっと待て」


彼の声は低く、だが鋭かった。


「ミハイル、お前本当に分かってるのか?

頭に電極を埋め込むんだぞ。

もしかすると麻痺とか、記憶障害とか、最悪の場合は……」


ケイトが慌てて手を振った。


「大丈夫大丈夫!

お姉さんに、まかせとき!

電極も最新型だし、シミュレーションもしてる。

ちゃんとリスク管理してるから!」


アントンはケイトを睨みつけ、そしてミハイルに向き直った。


「……危ないから、俺がやる。」


ミハイルはその言葉を遮るように、静かに立ち上がった。


「いや、俺がやる。

……やらないと、絶対に後悔するから」


その声は低く、揺るぎなかった。

アントンはしばらく黙っていた、

その目には、複雑な感情が揺れていた。


ケイトが手をひらひらと振って割った。


「はいはい、どっちがやるんでもいいけど――とりあえず、一人でいいからね」


二人が同時に彼女を見た。

アントンが眉をひそめて言う。


「どうして?

二人でやった方が、データも多くなるだろ」


ケイトは首を振りながら、ホワイトボードの図を指した。


「脳波が二つ以上あると、AIが混乱するの。

最初のうちは、協力者の脳波をトレースして、動作の“先読み”をする。

でもね、AIはそれだけじゃなくて――**“見たものに対して、どう動いたか”**も全部記録して覚えていくの」


彼女は図の中の「視覚入力→判断→動作」の流れをなぞった。


「つまり、AIはその人の“判断の癖”や“反応のタイミング”を学習していく。

最終的には、無人でもAIだけで、本人と同じような動作ができるようになる。

だから、見たものに対してどう動くかを教え込むのは、一人で充分なの」


アントンはしばらく黙っていた。

ミハイルは、ケイトの言葉を静かに受け止めていた。


「だから、どっちがやるかは……んー、ま、できたら戦闘が得意な方がいいのかもねーー。」


ケイトはそう軽く言った後、こう続けた。

「とりあえず、うちの“子”を先に見てもらおうか」


彼女は手を叩きながら、ラボの奥へと歩き出す。


「可愛いんだよ、

設計から試作まで、全部私が手掛けたからね。

もう、ちょっとした“自分の子”みたいなもん」


ミハイルとアントンが後を追う。

ラボの照明が切り替わり、奥の格納エリアがゆっくりと開いた。


そこに立っていたのは、無骨でありながら洗練されたフォルムのスーツ。

黒とグレーを基調に、関節部には微細なアクチュエーターが埋め込まれていた。


ケイトは胸を張って言った。


「こっちの初号機の名前は“T1”。

TALOSの“ T”と、初号機の“1”を合わせて――“T1”ってわけ」


アントンが眉を上げた。


「……ペットみたいに言ってたわりに、名前はずいぶんシンプルだな」


ケイトは特にその言葉には反応せず奥に進みながら言った。


「で――今回の本命はこっち」


彼女が指差した先、格納エリアの奥にもう一体のスーツが立っていた。

T1よりもやや細身で、関節部には新型の神経接続モジュールが埋め込まれている。


TALOSの2号機、名前は“T2”


ケイトは誇らしげに胸を張った。


「TALOSの“ T”と、2号機の“2”を合わせて――“T2”ってわけ」


そのフォルムは、機能美を極限まで研ぎ澄ましたような静謐さを纏っていた。

関節部の曲線は滑らかで、装甲の継ぎ目はまるで彫刻のように整っている。

胸部に走る淡い青のラインは、冷たいはずの金属に命の気配を宿していた。


ミハイルは一歩、前に出た。

その足取りは、無意識のうちに引き寄せられるようだった。


ケイトが横から声をかけてきた。

「どうどう??乗りたくなってきたでしょう?」


「あぁ...」

ミハイルは少し間をおいて囁くように言った。



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