第ニ話 記憶断片003-拡散
2027年4月現在ーー
異常行動を起こすくまの出現が更に各地で加速している。
2025年には16件、主に夜間、人を襲撃して被害者を出したくまの事件が起きている。被害者は20名。
2026年度には更に増加し襲撃の件数28件、被害者が過去最高を更新し45名。
2027年に入ってもすでに13件の襲撃事件が起こり、18名の命が失われている。
その発生頻度は過去の統計を見ても明らかに逸脱してきている。
また、特筆すべき事件として挙げられる事件がある。
2025年7月、道内某所の住宅街で、新聞配達員が夜明け前に襲われた事件だ。
この事件では、防犯カメラに、人間を長時間尾行し続け、障害物を迂回したりなどしながら執拗に追跡をして被害者を捕食したくまの様子が記録されている。
研究者はこのような行動を「追尾型行動」として後に分類した。
K-02も後の調査で「追尾型行動」を行ってから被害者を捕食していた事が判明しているが、この事件は最も顕著な追尾型行動による事件として今現在も記録されている。
しかし、最近では「追尾型行動」を行うくまの数自体が増えてきており、特に珍しい事件でも無くなってきているのが現実でもある。
もう一つ特筆すべき事件がある。
2019年7月に道東の牧場で、牛が何頭も食い殺された事件だ。
この事件は当初は野犬によるものとされていたが、後に全てヒグマによるものだと判明した。
この事件を起こしたくまは、夜間にのみ行動し、罠を避け、牛のロース部位のみを選んで食べていた。この事件は被害対象が人間ではなく、牛だったが、このくまも牛に対して「追尾型行動」を行っていた。
2023年7月にこのヒグマは発見され射殺されているが、その後の調査でK-02のものとよく似たタイプのウイルスを保有していた事が判明した。
最初の牛被害の発生日時などから見ても、K-02ウイルスよりもこちらの方が古くからあるウイルスだと思われる為、現在ではこちらのウイルスが、起源に最も近いものではないかと考えられている。
ただし、このウイルスには感染能力が確認されなかった事が判明し、その事が研究者を悩ます種となっている。
また、感染は、クマだけに留まらなくなってきているようだ。感染を疑われる事例がいくつも上がってきている。
2025年末には、北海道南部の山林で、異常行動を示すキツネの群れが確認された。
通常は単独で行動するはずのキツネだが、集団で人間の居住地に接近。
監視映像には、ゴミ収集車を集団で追いかける姿が記録されている。
2026年3月には、東北地方で狂犬病に酷似した症例の犬が出現。
日本では1957年以降、狂犬病は根絶されたとされている。
唾液中のウイルスは既知の狂犬病ウイルスとは異なる構造のウイルスである事が報告されており、K-02ウイルスとの関連が調べられている最中だ。
また、同年夏、九州北部の畜産地帯で、カラスによる家畜襲撃も報告された。
通常は死肉を漁るはずのカラスだが、生きた子牛の目を狙って集団で襲撃。
農家によれば、「鳴き声がいつもと違った」「一斉に動いた」「人間を恐れていなかった」
などの証言があがっている。
また、感染は野生生物だけではなく人間への伝播についても疑っている研究者がいる。
人間による通り魔事件、無差別殺人事件が2023年頃を界に明らかに増えているというデータを根拠とし、調査が必要だと訴えている。
しかし確証がない為、本格的調査は今のところ行われてはいない。




