表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
くまがあばれてテラフォーミング!  作者: 遊歩人


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/66

第十九話 記憶断片016-帰還

2030年3月17日ーー。


朝の光は、焼けたキャンプの残骸を淡く照らしていた。

ミハイルは、エリザとアリーナの遺体の傍でうずくまっていた。

目は腫れ、声は枯れ、動く気力も残っていなかった。


足音が近づく。

アントンだった。

彼は無言で隣にしゃがみ、しばらく黙っていた。


「……マリクが通信棟を復旧した。

本国と連絡が取れた」

アントンは静かに言った。


「近くのキャンプから仲間が遺体の回収に向かってくれる。

その後、遺体は本国に送られる。

俺たちは迎えのヘリに乗って空港へ。

本国に戻るよう司令から指示が出た」


ミハイルは、しばらく黙っていた。

そして、枯れた声で言った。


「……俺は戻らない」


アントンは眉間に皺を寄せた。


「まだ、ここにやり残したことがある。

ノアを探す。

この辺に潜んでるライオンを、みんな駆除する」


アントンは、しばらく黙っていた。

そして、低く、しかし強い声で言った。


「ミハイル……ダメだ。今は戻らないといけない」


ミハイルは顔を上げた。

その目には、怒りと悲しみが混ざっていた。


「俺は戦う!ノアも連れて帰る!」


アントンは一歩、身を乗り出した。


「ダメだ!俺たち全員が、お前を一人ここに置いて帰る事なんて出来ない!

装備も食料も、何もかも失った。

今ここに残っても、無駄死にだ。

一度立て直す。

来たいならそれから、もう一度来ればいい」


ミハイルは拳を握り、唇を噛んだ。

そして、しばらくの沈黙の後、観念したかのように項垂れた。



2日後ーー。


本国に帰国後もミハイルは、部屋に篭っていた。

窓は閉ざされ、光は遮られていた。

誰とも話さず、何も食べず、ただ時間だけが過ぎていった。


その扉を、ノックする音がした。

アントン、マリク、ルカが立っていた。


「外に出よう。少しだけでも」

アントンが言った。


ミハイルは黙っていたが、やがて立ち上がった。


施設の中庭。

ベンチに座った4人は、誰からともなく話し始めた。


マリクが言った。

「...うん、そうだな、俺は、とりあえず母国に帰ろうと思う。

まぁ、傭兵稼業も……もしかしたら足洗うかもしれない」


ルカは肩をすくめて言った。

「俺は、今更母国に帰るのもな。

かと言って今のチームがこんな形になったから、

とりあえずは別のチームにでも居候するかな。

ま、でも、また集まる時はいつでも呼んでくれ。そん時は飛んでくるから」


アントンは、少し間を置いて言った。


「向こうではおかしな事が多かったから、帰ってから色々調べてみた。

どうやら“凶獣化ウイルス”ってのが、世界で流行してるらしい。

俺は、それについてもっと情報を集めようと思ってる。それについての専門家とも会う約束をしている。」


ミハイルは、ピクッと反応した。

そして小さい声で尋ねた。


「……そのウイルスに感染したやつらが、

アリーナを傷つけたのか?」


アントンは言った。

「はっきりそうとは言えない。

でも……おそらく、そうだろう」


正気を失ったミハイルの目に少しだけ光が灯った。


「俺も、それを手伝いたい。」


アントンは黙って頷いた。



2030年3月23日ーー。軍人基地。


空は澄んでいた。

風は静かで、空気は冷たかった。


エリザとアリーナの遺体は、軍人墓地の一角に並べられていた。

白い布に包まれ、花が添えられていた。


ミハイル、アントン、マリク、ルカの4人は、

静かに立ち尽くしていた。


誰も言葉を発さなかった。

ただ、心の中で、それぞれの別れを告げていた。


ミハイルは、墓の前に膝をついた。

何かをそっと言った。


風が吹いた。

花が揺れた。

そして、空は、静かに見守っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ