第十四話 記憶断片013-中継地
惨劇の連絡から一夜が明けた。
結局、その後誰も眠る事はできなかった。
それでも、政府からの通信は容赦なく届く。
ノアは政府からの暗号通信を受け取り、隊員たちを集めた。
「ラフ・エル・アミン。昨日の衛星画像で、武装集団の集結が確認された。
中国系技術者と現地民兵の混成部隊。規模は不明。
我々は、今夜そこへ向かう」
ミハイルは地図を見つめながら言った。
「エル・ウェークの手前か。補給線の中継地かもしれない」
ルカが笑った。
「中継地って言葉、戦場じゃ“死体が増える場所”って意味だぜ」
アントンは端末を操作しながら、冷静に言った。
「気温は夜間で12度前後。風速は安定。
ドローンの飛行には問題ないけど、赤外線は砂塵で乱れる可能性あり」
ノアは頷いた。
「ミハイル、ルカ。地上偵察はお前たちだ。
接近は夜間。発見されるな。
アリーナ、通信傍受と医療支援待機だ。」
アリーナは少しだけ緊張した顔で頷いた。
「……了解」
ケニア北東部・ラフ・エル・アミン近郊ーー。
夜の風は、昼間よりも冷たく、鋭かった。
砂の粒が頬を打ち、視界はぼんやりと揺れていた。
チームデルタは、静かに装備を整えていた。
ミハイルは熱感知スコープを調整し、ルカは音響センサーの感度を上げていた。
アリーナは通信傍受装置を確認している。
ノアは地図を見つめながら、出発のタイミングを見計らっていた。
「目標地点まで約70キロ。移動は車両で。接近は徒歩。
交戦は避ける。確認だけでいい」
ノアの声はいつも通りだったが、どこか硬かった。
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深夜1時。
ラフ・エル・アミン近郊に到着したチームデルタは、車両を岩陰に隠し、徒歩で接近を開始した。
地形は開けていたが、月明かりが弱く、赤外線スコープが頼りだった。
「……ここだ。報告では、この廃施設に集結してるはずだ。」
ミハイルがスコープを覗きながら言った。
だが、そこにあったのは、沈黙と死体だった。
「……遺体がある。多数」
ルカが低く呟いた。
ミハイルがスコープを切り替える。
「20体以上。武装していた形跡あり。
損傷が激しい。爆発か……?」
アリーナが通信を受けて衛星画像を確認する。
「周囲に爆破痕はないよ。火器の使用痕も限定的っぽい。」
ノアは双眼鏡を下ろし、周囲を見渡した。
「敵の集団は、少し離れた位置に移動している。
8人程度。警戒態勢は低い。
……何があった?」
ミハイルが通信アンテナらしき構造物を発見した。
「通信装置。....停止中かも。周波数は……特定できない。解析不能」
ルカが言った。
「仲間割れか?
内部で何かあって、殺し合いになったとか」
ノアはしばらく沈黙した。
「……可能性はある。だが、ここまでするだろうか....」
アントンが無線越しに静かに言った。
「でも、今の時点ではそれしか言えない。
“異常な仲間割れ”ってことで、報告するしかないんじゃないか。」
ノアは頷いた。
「撤収する。これ以上の接近は危険だ。
情報は十分だ。戻るぞ」
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帰路の車内、誰も口を開かなかった。
全員が何か違和感を感じている。
でもそれが何なのか、答えを持っていなかった。




