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くまがあばれてテラフォーミング!  作者: 遊歩人


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第十三話 記憶断片012-砂の境界

2030年3月ーー。


初陣を終えたミハイルは、ノア率いる部隊と共に中東各地での任務をこなしていった。

ヨルダンの国境地帯、イラク北部の山岳地帯、レバノン南部の都市部――いずれも米国の利権と治安維持を目的とした傭兵任務だった。

ミハイルは任務を重ねるごとに、戦場での判断力と仲間との連携を磨いていく。アリーナも通信補佐や医療支援で部隊に貢献し始めていた。


約2年間中東での活動を行った後、部隊は一時的にアメリカ本土へ帰還する。

ノアは政府関係者との面会に呼ばれ、ミハイルたちには短い休養が与えられた。

だがその休息は長くは続かなかった。ノアが持ち帰ったのは、極秘の新任務だった。


「アフリカ・ダダーブ地域。米中の代理戦争が水面下で始まっている。中国が支援する民兵組織が、難民キャンプを拠点に勢力を拡大している。アメリカはそれを阻止したい。だが、正規軍は動けない。だから俺たちが行くことになった。」


任務は非公式。記録にも残らない。

ノアは選抜された少数精鋭を率いて、ケニア北東部へ向かう。

ミハイルとアリーナもその一員として同行する。

彼らが辿り着いたのは、砂塵に覆われた荒野の中に点在する、数万人規模の難民キャンプ。

表向きは人道支援の名目だが、実際には中国系民兵の拠点制圧と情報収集が目的だった。



ケニア北東部・ダダーブ近郊ーー。


乾いた風が、赤土を巻き上げていた。

空は広く、雲は薄く、太陽は容赦なく照りつけていた。

チームデルタの輸送車両が、砂塵を引きながら荒野を進んでいく。


「これがダダーブか……」

マリクが車内から外を見ながら呟いた。

「地図には載ってるけど、実際に来ると、何もないな」


ミハイルは無言だった。

アリーナは隣で端末をいじりながら、時折顔をしかめていた。

通信が不安定だった。衛星は生きているが、地上の中継が妙に途切れる。


ノアは前方車両で無線を確認していた。

彼の顔はいつも通り無表情だったが、眉間の皺が深かった。


---


キャンプ設営は、数時間で完了した。

簡易テント、通信棟、医療ユニット、補給庫。

規模は小さいが、機能は揃っていた。


アリーナは、医療テントの整理を終えてエリザと一緒に戻ってきた。

「現地の人、あんまり話してくれない。なんか、怖がってる感じだった」


ミハイルはその言葉に少しだけ反応した。

「何を?」


「わかんない。....けど、なんかゲリラって声も聞こえた」


アントンは缶詰を開けながら言った。


「この任務、妙に情報が少ない。敵の規模も、位置も、曖昧だ」


マリクが笑った。

「いつものことだろ。俺たちは“公式じゃない”からな」


設営を終えたチームデルタは、簡易テーブルを囲んで食事を取りだした。

缶詰、乾燥パン、栄養バー。味気ないが、戦場では十分なご馳走だった。


「このパン、岩かと思った」

マリクが歯を鳴らしながら笑うと、アリーナが小さく吹き出した。


「それ、昨日の分じゃない?今日のはまだ柔らかい方だよ」


「え、ちょっと待って、この缶詰、賞味期限ギリギリじゃない?」

今度はエリザがラベルを確認しながら言う。


「“推奨期限”って書いてあるだけだ。問題ない」

ミハイルが答えると、ルカが口を挟んだ。


「問題ないって言葉、戦場じゃ一番信用できないんだよな」

彼はパンをかじりながら、空を見上げた。

「でもまあ、味は悪くない。俺の故郷の軍食よりはマシ」


「それ、どこ?」

アリーナが聞くと、ルカは肩をすくめた。

「秘密。言ったら笑われるから」


アントンは端末を操作しながら、周囲の気温と湿度を記録していた。

「この地域、夜間の温度変化が激しい。

明け方には10度近くまで下がるかも。

寝袋、厚めにしておいた方がいい」


「了解」

一同は短く答えた。


ノアは少し離れた場所で、無線機の調整をしていた。

彼は食事には加わらず、風の音に耳を澄ませていた。



その後、食事を終えた隊員たちはそれぞれのテントへ散っていった。


---


夜が明ける前、通信棟に緊急報告が入った。

ノアは無言で端末を操作し、報告文を読み上げた。


「南西80km地点、難民キャンプ・カリフ壊滅。生存者なし。

攻撃は深夜2時頃。武装集団による襲撃と推定。

遺体の損傷が激しく、識別困難。」


テント内に沈黙が落ちた。


アントンが拳を握りしめた。

「........何考えてんだ。生存者なしって……人間のやることじゃねえ。」


マリクは歯を食いしばりながら言った。

「このやり方が、ここらのゲリラのやり方かよ。

ただの殺戮集団だ。


ノアは黙っていた。

ただその表情はいつもと違い、視線も遠くを見つめていた。


「ノア、何か気になるのか?」

ミハイルが言った。


「いや……ただ、ゲリラの戦術にしては、効率が悪すぎる。目的が見えない」


マリクが言った。

「目的なんてないんだろうさ。やつらはただの化け物だ」


ノアはその言葉に、わずかに眉を動かした。

だが、何も言わなかった。





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