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Weirdos―左頬に文字が見えるギフト―  作者: 七星
6.折り紙とダンスを
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6-6.ギムレットには早すぎる夜

 秋も深まり、この一週間で急激に気温の変化が大きくなった。朝晩の寒さが骨身に染みる。渋谷を歩いている人々の服装も段々と冬仕様へ。もうじきハロウィンやクリスマスがやってくる。イベントで活気づく渋谷。バーWeirdosも、本来ならば盛り上がっていくはずだった。


 しかし、現実は大きな壁にぶち当たっている。


「ウダウダしてちゃ駄目よね、覚悟を決めないと」


 ママのその呟きを聞くのは何度目だろうか。


 ついに占い師『Rin』のテレビデビューまで、後一日。ママは未だ詩織に新堂 琉為のことを話せていないようで、それがイベントに合わせて限定のフードやドリンクを考案中のママがアイディアに行き詰まっている原因となっていることは明らかだった。俺はカトラリーやグラスを拭きながら、ママが頭を悩ませている様子を見守っている状況だ。


 どうにか隣で唸っているママの力になれないものかと思考を巡らせていると、カランカランと音を立てて扉が開いた。そこには松嶋さんが立っていた。


「いらっしゃいませ」


 入口に出迎えに行くと、


「やぁ。今日は、二人なんだ」


 そう言って松嶋さんは後ろに立っている若い男性に笑いかける。男性はぎこちない様子で「どうも」と言って頭を少し下げた。彼の顔には“ダンス”と書いてあり、いくつもの花を咲かせていたがそのうち一輪だけ花びらがニ枚ほど欠けている。


 二人をカウンター席に案内すると、椅子に腰掛ける若い男性の右足首に、ちらりとテーピングが見える。


 念願叶い、かねてよりお誘いしていた相手と一緒にお酒を交わす機会を得たようだ。いつもよりニコニコとしている松嶋さんを見ていると、なんだか俺まで心が弾むようだった。


「私はマティーニを頼むよ」


「俺も社長と同じやつで……」


 眉間に皺を寄せながらメニュー表を見ていた男性は、焦ったように松嶋さんに習う。


「それじゃ、マティーニを二つ」


「かしこまりました」


 松嶋さんの注文を受けて俺がおつまみを二人に持って行くと、


「しつこく誘った甲斐があって、やっと私と酒を飲む気になってくれたんだよ」


 松嶋さんは俺にそう言いながらも、時折見せる悪戯っ子のような表情をしていた。


「そうじゃなくて! 社長は怪我を舐め過ぎっす。この前はお誘いを断りましたけど、流石に捻挫してすぐに酒は飲めないっすよ!」


 慌てたように説明する若い男性に、松嶋さんは「そうか、すまない」と言いながらも可笑しそうに笑い声を上げた。


 若い男性は緊張している様子ではあるが、松嶋さんは楽しそうに談笑している。俺はそんな二人を見て満たされる気持ちになった。

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