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Weirdos―左頬に文字が見えるギフト―  作者: 七星
6.折り紙とダンスを
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6-3.寂しいマティーニ

 次の日もWeirdosでバイトの予定だった。


 バイトの時間までは他に予定もないが、バイトが始まる時間よりも随分早く渋谷へやってきた。近くに気になるラーメン屋があるので、これから行ってみるつもりだ。


 ラーメン屋へ向かいがてら、ぷらぷらと散歩をしていると公園でブランコに乗って遊んでいる二人組の女の子が目に入った。


 ブランコが振れる度に大きく揺れる、首から下げたホワイトボードに見覚えがあった。


「おーい、しーちゃん!」


「あっ! ひかるちゃんっ……!」


 声を掛けると、詩織はふにゃっとした笑顔を見せた。そしてブランコから飛び降りて駆け寄ってくる。詩織の歩幅に合わせるように「めがねが大切」と書かれたホワイトボードが左右に大きく揺れ、決して速くはないその走りに途中で転んでしまわないかヒヤヒヤする。


 もう一人の女の子も慌てて詩織の後を追ってくる。彼女は足が速いようで、あっという間に詩織に追いついた。


「そっちの子はお友達?」


 そう聞くと息を切らしたまま詩織は大きく頷く。


「おともだちの、かりんちゃん……!」


 以前は蚊の鳴くような声で細々と喋り、家で一人で過ごしていた詩織が、友達と元気よく外で遊べる日が来るなんて。友達を堂々と紹介する姿に、なんだか嬉しくてジーンとしてしまう。


「はじめまして、間鍋 香凜ですッ!」


 紹介された女の子が礼儀正しく頭をぴょこんと下げ、ツインテールが勢いよく跳ねる。特技は“跳び箱”なので運動神経が良い子なのだろう。初めて聞く名前だが、この子はどこかで見かけたような気がする。以前詩織を小学校へ迎えに行った時だろうか。そう言えば、詩織のことを心配そうに見ていた女の子が一人いたような。あの時の子が、しーちゃんと友達になったのか。


「君が香凜ちゃんか。はじめまして、谷崎 光です。これからも、しーちゃんと仲良くしてね」


 親兄弟のような気持ちになり、ついついそんなことを言ってしまう。そんな俺の服の裾をくいくい引っ張りながら、


「あのね、しおりは、大きくなったらひかるちゃんとけっこんしたいの……」


 と詩織は言い放った。もじもじとしながらもしっかりと俺の目を見ている。


「えぇ!?」


 詩織の誕生日会でも同様のことを言われていたが、どうせ忘れているだろうと高をくくっていた俺は驚いて声を上げる。しかし、そんな俺の声を遮るように香凜が目を輝かせながら叫んだ。


「すっごおぉい!! ふぃあんせね! すてきっ!! けっこんしきしなくちゃっ!」


 おいおい、フィアンセって。今どきの小学生はおませさんにも程がある。二人は結婚式にはお花が必要だ、なんて言いながら公園の花壇の方へ駆け出して行った。その無邪気さはやっぱり小学一年生だ。


 そしていつの間にか追いかけっこを始めている二人に別れを告げて、俺はラーメン屋へ向かった。

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