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Weirdos―左頬に文字が見えるギフト―  作者: 七星
6.折り紙とダンスを
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6-3.寂しいマティーニ

 Weirdosが開店する時間となり、何人か接客を終えてグラスを拭いていると、カランカランと扉のベルが鳴った。


「いらっしゃいませ」


 お客様に向かって一礼をする俺のすぐ横から、


「あら、社長! いらっしゃーい!」


 ママの明るい声が響いた。ママが社長と呼ぶこちらの男性は松嶋さん。月に二度か三度、一人でWeirdosに立ち寄ってくれる常連さんだ。注文は大体ウイスキーのロックだが、たまにマティーニやギムレット。二杯程軽くカウンター席でお酒を嗜み、颯爽と去っていく姿が格好いい。


 詳しくは知らないが社長はアダ名ではなくて、本当に会社を営む経営者のようだ。彼の特技は“折り紙”であるが花は小さく萎んでいる。


「ママのお酒が飲みたくなってね」


 そう言って松嶋さんは優しく微笑むと、カウンター席に腰掛ける。


「嬉しいわぁ! 飲み物は何にする?」


「今日の一杯目はマティーニで頼むよ」


「かしこまりました!」


 ママはそう言って頷くとドリンクの準備を始めた。その間に俺はおつまみのミックスナッツとチョコレートを小皿に入れて松嶋さんに提供する。


 おつまみをカウンターに置く俺の顔を、松嶋さんはじっと覗き込んだ。


「えっと、何か……?」


 顔を見つめられて少し照れる俺に、松嶋さんは大真面目な顔で、


「君は未成年だったね?」


 と言った。酒類を提供するこの大人の空間に未成年は相応しくないと言いたいのだろうか、と嫌な妄想が過ぎった。


「あ、ハイ、そうです」


 そして俺の答えに松嶋さんはわかりやすく落胆した表情になる。


「そうだよなぁ、一緒に飲めなくて残念だなぁ……!」


 俺がよっぽどぽかんとした顔をしていたのか、松嶋さんは笑いながら喋り出した。


「いや、ウチの会社の若いもんをね、飲みに誘っても断られてしまうんだ。別に説教をしたい訳じゃなくて、ただ美味しいお酒をご馳走したいだけなんだがなぁ。そんなに嫌われてしまったのかねぇ」


 松嶋さんの自虐とも取れる発言に戸惑っていると、ママがマティーニを差し出しながら


「そりゃ、社長と一緒なんて緊張しちゃうわよ」


 と言って笑う。ママのナイスなフォローに感謝だ。


「美味いものの味を知ることも良い経験だと思うんだが、時代なんだろうねぇ」


 松嶋さんはどこか遠い目をしながら、寂しそうに呟いた。


 今日もキッカリ二杯、マティーニとウイスキーのロックを嗜み松嶋さんはWeirdosを後にする。


 彼の悲しそうな目がやけに印象深く残った。


 次お店に来てくれる時は、どうか一人ではありませんように。


 願うことしか出来ない自分がもどかしかった。

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