1-3.Bar Weirdos
彼女の豹変ぶりについていけずに口ごもっていると、
「もう! こっちはインセンティブかかってるんだから、邪魔しないでよね! せっかく午前授業だったから平日午後からシフト入れてるのに、この時間無駄になっちゃったじゃない」
さらに怒りの追撃。
「はぁ……、すみません……」
なんでゴスロリで占い師の女子高生に怒られているんだ。
いきなり人の顔に文字と花の絵が見えるようになって、心細くて。彼女が唯一の希望だと信じてここまでやってきたのに。
落ち込んでいる俺を無視して彼女はブツブツと文句を言いながら手元のメモ帳を一枚破り、サラサラと何か書いた。
「はい、これ。私は営業中だし、とりあえずこれ持って上の店でママに話を聞いて。この時間なら絶対ママいるから」
溜息をつきながらもメモ用紙を一枚突きつけてきたので、反射的に受け取った。
メモには『この人の話を聞いてやって 海鈴』と書いてある。そして、俺のことを手でしっしっと追い払うような仕草をした。
俺は困惑しながらも、ゴスロリ占い師に言われた通りにしようと考え占いの館を後にした。
一階上がるだけなので、階段を使う。
四階に上がると、ビル案内板で確認した通り【Bar Weirdos】と書かれた看板があり、重たそうな扉のドアノブには『Close』の札が掛かっている。
バーなので、昼間は店は閉まっているらしい。
営業時間外の店に入って良いものなのだろうか。大学生になったとはいえ未成年なので、バーに入るのは初めてだ。
「……ママがいるって言ってたもんな」
独り言を吐いて覚悟を決め、思いっきりドアを引くと、ドアの内側にベルが取り付けてあったようで、カランカランと威勢の良い音が鳴る。
ドアを開けて店内を見渡すと、カウンターの向こうで大きなダンボールを持った男性と目が合った。
びっくりすることに、ゴスロリ占い師に続いて男性の顔にも文字が書かれていなかった。相手も営業時間外にも関わらず突然入店してきた俺に、驚いた表情をしている。
そりゃそうだ。
「えっと……営業時間じゃないのにすみません、この店のママと言う方に用があって!」
慌てて弁解をする。
男性はダンボールをカウンターの上に置きながらも、俺からじっと目を離さない。
男性は二十代後半くらいだろうか。小麦色の腕は筋肉で盛り上がり逞しく、胸板も厚くガタイが良い。明るい茶色の髪の毛を、後ろで一つに結んでいる。男性の雰囲気に思わず一歩下がってしまう。
「……この店のママはアタシだけど」
「えっ!?」
思わず相手を二度見した。
ま、ママってこの人?アタシって言ったよな…オカマ?脳内がパニックだ。
ママと名乗った男性は訝しげな表情でこちらを見ているが、驚いたのはこちらの方である。ママと言われたから、てっきり女性かと思っていたのに。




