5-2.占い開始
いつも通りに占うだけ、もう一週間前から何度も自分に言い聞かせている。
「『Rin』さん、リラックスしてくださいね」
そうカメラマンの人に言われて、大きく深呼吸をした。
新堂 琉為が占いの館の待合室でまず撮影を行い、その後移動して来るまで海鈴はいつもの個室で待機している。
緊張でソワソワしていると、こちらに向かってくる複数の足音が聞こえてきた。
「失礼します」
扉がガチャリと開き、笑顔の新堂 琉為と彼を追いかけるカメラマンが入ってくる。
「はイッ」
緊張して声が上擦る海鈴を気にすることもなく、新堂 琉為はカメラに向かって流暢に喋っている。
「こちらが今大人気の占い師『Rin』先生です! 『Rin』先生の占いは心を見透かされるようだと聞いているので、僕もちょっと緊張してます。それでは早速、宜しくお願いします!」
そして海鈴に向かって一礼。海鈴はそんな彼の動作を美しいと思った。明らかに年下の女子と分かっていても軽んじることなく、丁寧に対応をしてくれている。
――しっかりしないと。
海鈴にも気合が入る。
「本日はお越し下さり、ありがとうございます。それではこちらにお掛けになって、私に両方の手のひらを見せてください」
いつも通り海鈴も笑顔を作った。海鈴の要求通り、新堂 琉為は素直に両方の手のひらを見せる。
「両方の手のひら? これで良いですか?」
【この後は移動してもう一本ロケ、その後は雑誌の撮影とインタビューだったな。帰宅は二十ニ時くらいか。帰ってから台本読みをしたいけど時間あるかなー。少し時間が巻ければ良いけど】
純粋な瞳でワクワクとした表情をしている新堂 琉為が、頭では仕事のことばかり考えていることに驚く。
「『Rin』先生どうでしょう? 何か見えますか?」
【時間が惜しいし、夜ご飯にはまたマネージャーに牛丼を買ってきて貰おうかな。昨日はチーズトッピングしたっけ。まぁ今日も同じでいいか……。明日も早いしサッと済まそう】
この短時間で良く頭が回るなと感心する。おかげで情報はかなり手に入った。
「新堂さんは本当にお忙しいんですね。最近はジャンクフード、例えば牛丼で夜ご飯を済ませるような生活をされていますね」
海鈴の言葉に新堂 琉為は目を丸くし、
「えぇ! そんな細かいことまでわかるんですか!? 恥ずかしい!」
と叫ぶと、周りにいたテレビ局のスタッフもどよめいた声を上げた。
「そうなんです、昨日も夜ご飯は牛丼でした! 大袈裟じゃなくて本当に週三日は牛丼を食べてますね」
【なんで知ってる? もしかして丸山さんが提供した? そんなことする人じゃないんだけどな】
海鈴は新堂 琉為の反応に手応えを感じた。
「それに新堂さんは常に仕事のことばかり考えている、仕事人間みたいな方ですね。どちからと言うと効率重視のようですね」
その言葉に新堂 琉為が
「待って待って、マネージャーさんがすっごい頷いてる!」
と言い、現場ではどっと笑いが起きた。
新堂 琉為のコメント力もあり、占いのロケは時折笑いに包まれながら順調に進んでいった。




