1-2.女子高生を追って
個室のドアの前に立つと、一層と自分の心臓がバクバクと脈を打つのがわかる。
どうやって入ればいいのだろう?
少し悩んで、コンコンとノックをしてみると、中から「どうぞ」と声が聞こえた。
いざ、ご対面。
そろりとドアを開けて、ぎょっとする。
待合室と同じように濃い紫色の壁に真紅の絨毯が敷かれたその部屋の中央には、白いテーブルクロスが掛かった丸テーブル。
そしてその奥には、フリルの付いたヘッドドレスに首にはチョーカー、白いリボンとフリルがたっぷりと付いた、何故かゴスロリ姿の女の子。
この占いの館に来てから、何かと情報量が多過ぎて目眩がしそうだ。
あたふたとしていると、ゴスロリ占い師に椅子に座るよう促される。
「整理券を見せてもらえますか?」
言われるまま、握りしめてシワシワになっていた整理券を渡す。ゴスロリ占い師は
「はい、確かに。当占いの館にお越しくださり、ありがとうございます」
とにっこり笑った。その笑顔が可愛いくて思わずときめいてしまう。
制服とゴスロリ姿とのギャップで衝撃を受けたが、印象的な泣きぼくろとサラサラのロングヘア。やはり駅ですれ違ったあの女子高生だ。顔に文字も書いてない。
「私の占いに来てくださる方は女性の方が多いので……男性お一人のお客様って珍しいからびっくりしました! 本格的な占いをするのは初めてですか?」
「ええ……まぁ……、初めてです」
ドキドキして曖昧な返答をしてしまう。顔に書いてある文字のことを聞きに、ここまで来たのに。
よし、ここは思い切って。
「あの!」
「あ、大丈夫ですよ」
思い切って切り出したが、遮られてしまった。
「私、これでも占い師ですから……。占って欲しいことを考えながら、私に両方の手のひらを見せてください」
出鼻を挫かれた気分になったが、彼女の微笑みにつられ、テーブルの上に両方の手のひらを差し出した。
その瞬間。
あんなににこやかであったゴスロリ占い師『Rin』の表情が苦々しく崩れた。口角が下がり、眉が釣り上がる。
「は? アンタ、客じゃないじゃん」
そう言い放つ彼女は、心底迷惑そうな顔をしていた。
例えるならば、高校生の時に持ち物検査でエロ本が見つかってしまい、先生に怒られている俺をクラスの女子が冷めた目で見ていた時のあれ、のような。
エロ本は俺の持ち物ではなく、クラスメイトの奴に嵌められたのだけれども。誤解が解けるまで、しばらく女子の視線が痛かったっけ……。
エロ本との悲しい過去はともかく、今回の俺はこんなに眉間にしわを寄せられるようなことをしたのだろうか。
いや、実際に駅で見かけてから後をずっとつけて占いの館まで来たのだから、気持ち悪がられるのも仕方ないのかもしれない。いや、彼女は俺が付けてきたことなんて知らないはず。
手のひらを見せただけで、この態度の変わりようは一体なぜだ?




