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Weirdos―左頬に文字が見えるギフト―  作者: 七星
4.思ったことは手のひらの上
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4-7.文化祭一日目

「――さん、笠井さんってば!」


 クラスメイトに呼ばれる声で我に返った。


 今日は高校の文化祭の初日だ。海鈴の高校は文化祭は二日間の開催で、二日目の片付けが終わった後は任意参加の後夜祭が行われる。


 谷崎の前で泣いてしまったあの日からは数日が経っていた。あれから谷崎とはシフトがまだ被っていない。


 蓋をしていた感情を晒したこと、泣き顔を見せてしまったこと、抱きしめられたこと、どれをとっても恥ずかしいやら情けないやらでどんな顔をすればいいのかわからない。


「バニラとチョコを一個ずつお願い!」


 オーダーを受けたクラスメイトからの指示を受け取り、お客様にカップアイスを二つ手渡した。


「はい、どうぞ。楽しんでくださいね」


 今日は気温が高いこともあり、アイスの在庫は順調に減っている。仕事をしている時は嫌なことを考えずに済むので有難い。


 クラスの仕事は全員が参加出来るようにタイムスケジュールを組んでいる。帰宅部の海鈴は他にやることもないので二日間とも午前中いっぱいシフトを組んでいる。あと少しすれば交代の時間で、行く宛のない海鈴は去年と同様に屋上で時間を潰そうと考えていた。


「笠井さん、次はバニラアイス一個!」


「はーい」


 とりあえずお昼ご飯を調達しないとな、と考えながら、冷蔵庫代わりに保冷剤を大量に敷き詰めた発泡スチロールの箱へ手を入れる。確かに休憩しないと指先が冷えて痛くなってきた。


「はい、バニラアイスです!」


 そう言って営業スマイルでアイスを手渡す。


 その手渡した相手に見覚えがあった。顔の半分が隠れる程伸ばした前髪に、首に掛けたヘッドフォン。


「……翠? 何でいるの?」


「ごめなさい……。来ちゃいました」


 そう言ってアイスを受け取る翠は、謝ってはいるものの口元は笑っている。やっぱり来たか、と心の中で溜息をついた。


 どうやら翠は一人で高校の文化祭に乗り込んできたようで、クラスも出し物も教えていなかったのによく自分のことを見つけ出せたものだと関心した。そしてその度胸にも。


「その子、笠井さんの知り合い?」


 海鈴の様子を察したクラスメイトが声を掛けてくる。


「うん、まあ……」


 歯切れ悪く答えると、


「ここはもう大丈夫だから、校内を案内してあげなよぉ! どうせもう交代の時間になるんだし!」


 快く送り出されてしまった。


 ちらりと翠の方を伺うと、表情は見えないものの期待を込めた眼差しでこちらを見ていることがわかった。今度は本当に溜息が出た。


 とりあえずクラスメイトに礼を言って教室を出る。目的地も決めずに歩く海鈴の横を翠が半歩遅れて付いてくる。


「私、来ないでって言ったよね?」


 一応、確認する。


「はい……。でも海鈴さんに会いたかったんです!」


 その言葉でもう一度溜息が出た。


 翠のことは自分に懐いてくれる可愛い弟のように感じているが、こうゆう押しの強い一面もあるのだ。


 高校の文化祭とはそんなに興味を引くものだろうか。大体、翠の通う中学校は難関な中高一貫校で、海鈴の高校よりも大規模な文化祭を毎年開催しているはずなのだ。


 まぁ、そんなことは今は後回し。


「お腹、空かない?」


 そう問うと翠はブンブンと頭を縦に振った。前髪が勢いよく乱れて、そんな様子が少し面白かった。

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