4-6.真っ赤な耳
「私にはギフトが誰かのためになるなんて励まし方……できない! ギフトのせいで、建前と本音は全然違うんだって何度も傷ついてきた! 人との関係を諦めてる私にはそんなこと言えないよ……!」
初めて聞く笠井さんの本音だった。以前ギフトは呪いだと言った彼女は、きっと何度も人の本性に傷ついていたのだろう。
だとしても、だ。笠井さんが人との関わりを避けていたとして、人気ナンバーワン占い師としてお客様に希望を与えていることに変わりはないと俺は思う。
「いやいや、笠井さんは占い師として充分人の為にギフトを使ってるよ!」
しかし笠井さんの考えは違っていた。
「そんなの人の為じゃない、全部自分の為だし! お金になる仕事にできるからって、ギフトがあることを何かで正当化しないとおかしくなりそうだった……。私の保身に利用してるだけ……!」
笠井さんは何故か頑なに自分を認めようとしない。
「笠井さんがそう思ってるだけで、感謝してるお客様はたくさんいるはずだよ。……それに、どんな言葉を掛けようが、笠井さんがしーちゃんのことを心配してたってことは変わらないでしょ?」
なんとか宥めようと言った俺の台詞に、笠井さんは静かに首を横に振り、絶望の表情を浮かべる。
「違う……。私、見えるのが秘密じゃなくて良かったって本当は思ってた……。しーちゃんよりマシなんだって。自分より可哀想な人がいるんだって安心してた。だからしーちゃんに友達が出来たって聞いて喜べなかったんだ……。応援するって言ったのに……私、最低だ……」
そう言って笠井さんの目からボロボロと大粒の涙が溢れた。
自分と同じ、それよりも立場が弱いと思っていた詩織が一歩踏み出した。そんな詩織に、笠井さんは置いていかれた気持ちになったのだろうか。ギフトのことはWeirdosに集う俺達五人しか知らない。こんな小さなコミュニティでは吐き出せない思いもあったのかもしれない。
涙が止まらずに今にも崩れ落ちてしまいそうな笠井さんを思わず抱きしめる。
「ギフトは比べるものじゃないってママが言ってた。見えるものは違っても似た者同士、支え合っていこうよ。俺で良ければさ、いつでも話聞くから」
なんて言えば正解なのかやっぱり俺にはわからない。
俺の腕の中で啜り泣く笠井さんは、自分は可哀想ではない、ギフトなんて大したことないのだと一人で耐えて強がって、抱え込んでいるように見える。
なんて不器用な人なんだろう。そんな彼女が少しだけ可愛いと感じた。笠井さんを抱きしめながら頭を撫でる。髪の感触が気持ち良かった。今更気がついたが、肩も華奢だし石けんの匂いがする。
「もう、大丈夫だから、離して……」
俯いた笠井さんは耳まで真っ赤になっていて、これはセクハラになってしまうかも、と我に返った俺は急いで笠井さんを開放した。その代わりに、
「もう遅いし、家まで送るよ」
腕を掴んで歩いた。笠井さんは腕を引かれながら、大人しく俺の後を付いてきた。




