4-5.スタッフルームにて
詩織を迎えに行ったときといえば、二人で公園でアイスを食べた時のことだろうか。しかし、おまじないと言われてもピンとこない。ベルトのバックルを締めながら考える。
「うーん……、おまじないねぇ……。しーちゃんを迎えに行ったときなら、あれかな…。俺達がしーちゃんを想ってる気持ちを素直に受け取って欲しい、みたいなことを伝えたかな?」
二ヶ月も前のことだ。正直、一言一句は覚えていないが記憶の中からそれらしい台詞を捻り出す。
「あぁ、それと、しーちゃんのギフトは誰かの背中を押すことができる優しいギフトになる、みたいなことを言ったと思うけど」
我ながら臭い台詞を吐いたもんだと恥ずかしくなる。冷めた目をする笠井さんが目に浮かぶようで、頭を掻いた。
だがそんな予想に反して笠井さんは何も言わない。恐る恐る後ろを振り返ると、呆然とした表情の笠井さんが俺を見つめている。その目からは何を言いたいのか読み取れなかった。
「……笠井さん?」
俺の声ではっと我に返ると突然、
「私っ! 帰る!!」
そう言って笠井さんはスタッフルームを飛び出して行った。
「えぇっ!? ちょ、ちょっと! ちょっと待って!!」
いきなりの行動に面を食らい一瞬固まってしまったが、すぐさまリュックを背負いその後ろ姿を追いかける。
ビルの四階から見下ろすと、階段を駆け下りて走っていくセーラー服が見えた。俺も急いで階段を下りて走る。
Weirdosの入っているビルが建っている場所は大通りから外れ、歩道と車道も分けられていない人通りの少ない寂しい通りだが、こんなに猛スピードで走ったのは初めてギフトが発現した時以来だ。
角を曲がったところでやっと笠井さんに追いつく。
「笠井さん! ちょっと待ってってば……!」
勢いに任せて肩を掴むと、
「離してよっ!!」
笠井さんは振り向きざまに俺の手を振り払った。俺を睨みつけている目が、涙で滲んでいることに気が付いてギョッとする。
「俺、また何か悪いこと言った……?」
笠井さんは目元に溜まった涙が溢れないよう耐えながら、口を開いた。




