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Weirdos―左頬に文字が見えるギフト―  作者: 七星
4.思ったことは手のひらの上
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4-5.スタッフルームにて

 今日はママ、笠井さん、俺の三人でのシフトだ。


 最近はお客様の少ないタイミングを見計らい、フルーツカットの練習をしている。まずはグラスの縁に添えるレモンの飾り切りを取得するべく奮闘中だ。


 たかがレモンと思っていたが、蝶々切りや孔雀切等のバリエーションがあり奥が深い。何より、リンゴのようにくるくると皮を剥くレモンスパイラルという技が難しい。途中で切れてしまったり、皮の太さが均一ではなくガタガタになってしまったり。ママに不器用とからかわれ、ムキになって自宅でも特訓をしているが、なかなか思うようにいかない。


 レモンとにらめっこをしていると、笠井さんがじっとこちらを見ていることに気がついた。しかし目が合うとぱっと目線を逸らす。俺の方を気にするなんて珍しいこともあるもんだ、と思いとりあえず世間話をしてみる。


「そういえば笠井さんの高校、もうすぐ文化祭があるんだって? 笠井さんは何かやるの?」


「そ、そんなのっ、谷崎には関係ない……」 


 何故かいつもよりキレがないが、笠井さんは今日も安定の塩対応だ。会話は続かずに雑談はそこで打ち止めとなった。


 二十二時になると笠井さんが退勤となり、二十三時半で俺も今日は上がりの時間だ。


 仕事を終えてWeirdos従業員用のスタッフルームに入る。今日もよく働いたなぁと伸びをした瞬間、視界に人影が映り俺は驚きのあまり後退った。


「うわぁっ! 笠井さん!? なんで帰ってないの!?」


 そこには一時間半前に上がったはずの笠井さんが、セーラー服姿でパイプ椅子に座って俯いていた。


「もう遅い時間じゃん! どうしたの!?」


 俺の問いかけに笠井さんはバツが悪そうな表情を浮かべる。


「……うん、ちょっと……谷崎に聞きたいことが……あって」


 足元に目線を落とした笠井さんの長い髪が一房、顔に掛かった。


「聞きたいこと? とりあえず着替えながらでもいい?」


 制服の蝶ネクタイを指さすと、


「あ、うん……!」


 笠井さんは少し焦ったようにくるっとロッカーと反対側を向いた。笠井さんが見てないことを確認し、蝶ネクタイを外しワイシャツのボタンを外していく。


「しーちゃんが教室に行き始めたのって……、谷崎のおかげなんでしょ?」


 無理やり絞り出したような覇気のない声だった。


「うーん、そんなことないと思うけど。別に何もしてないし」


 Tシャツを被りながら答える俺に、笠井さんは続けて問いかける。


「でも、しーちゃんは谷崎からおまじないを貰ったって言ってた。ママも谷崎に感謝してるって、谷崎がしーちゃんを迎えに行ったときに何かあったみたいって……。ねぇ、何て言ったの?」

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