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Weirdos―左頬に文字が見えるギフト―  作者: 七星
4.思ったことは手のひらの上
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4-3.谷崎なんかに

 占いの館での仕事が終わり、今度は制服に着替えてWeirdosへ出勤する。今日はママと二人でのシフトだ。


 平日ということもあり、開店してからぽつりぽつりとお客様が来店しては帰っていくような落ち着いた時間が続いている。


 普段であればこんな日は「暇だわぁ」とつまらなそうに嘆くママが、何故か今日はご機嫌だった。


「ママ、何か良いことでもあったの?」


 鼻歌交じりでグラスを磨いているママに問いかける。


「今日ね、しーちゃんが教室に行けたんですって」


 詳しい理由は聞いていないが、しーちゃんが教室ではなく保健室へ登校しているという話は前々から知っていた。人の秘密が見えるという体質なのでそれは仕方ないことだと思っていたが、誕生日パーティーでの宣言通り本当に実行していたことに驚いた。


「しーちゃんが? 本当に……?」


 あの時は応援すると言ったものの、内心は信じられなかった。結局諦めて落ち込むしーちゃんを慰める心積もりだった。今まで頑なに心を閉ざしていたしーちゃんに、どんな心境の変化があったのだろうか。


「アタシも驚いちゃったわ。ギフトのこともあるし無理に頑張る必要はないと思ってたけど、やっぱり安心しちゃうの。ダメな保護者ねぇ」


 自分でダメと言いながらもママは嬉しそうだ。しかし海鈴は手放しで喜ぶ気持ちにはなれなかった。


「……私はしーちゃんが傷つかないか心配だけど」


 出会ったばかりの頃、ママの影に隠れて何もかもを拒絶していた彼女を思い出す。


 保健室とは全く異なる環境に、しーちゃんが付いていけなかったら?せっかく一歩ずつ前進を重ねてきたのに、また殻に籠もってしまうのでは……という考えが頭をよぎった。


「アタシもそうよ。でもね、躓くことがあっても、しーちゃんの視界が広がるのは素敵なことなのよね。ヒカルちゃんに感謝ね」


「谷崎? なんで谷崎なの?」


 突然出てきた谷崎の名前にムッとする。


「前にヒカルちゃんにしーちゃんのお迎えを頼んだことがあってね。その時に何かあったみたいなのよ」


 しーちゃんは教えてくれないけど、とママは困ったように付け足した。


「ありえない! 谷崎なんかに何も出来るわけない!」


 咄嗟に否定が出た。思いがけず大きな声を出した海鈴に、ママは少し呆れた顔をする。それがまた癪に障った。


「そんなことないわよぉ。海鈴はちょっとヒカルちゃんに厳しすぎ。なぁに意識してるのよ」


「意識なんてしてないってば!!」


「アタシ、海鈴の人に頼らないで生きようとする姿は好きだけど、意地っ張りに甘えベタは損よ」


「……ッ! 私、しーちゃんの様子を見に行ってきます!」


 谷崎の話をされるとイライラする。ママとの会話を遮るように、居住区への階段を駆け上がった。

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