4-2.占いの館にて
二学期初日は始業式のみで早帰りのため、午後から占いの館で、その後にWeirdosでのシフトを組んでいた。
占いの館のスタッフルームでいつもの衣装に着替えていると、お昼休憩にやってきた李 蘭玲と鉢合わせた。
あまり広くはないスタッフルームには六個の縦長のロッカーがあり、ロッカーがある反対側の壁に沿って白い長テーブルが設置してある。占いの館のスタッフはこの部屋で着替えたり食事を取ることになっていた。
「オハヨー! 『Rin』チャンはこれカラお仕事? ガンバローネ!」
「おはようございます。『蘭』さんは一日シフトですか? 今日は大学は?」
ヘッドドレスの位置をロッカーの鏡で確認しながらそう問うと、
「ふっふっふ、大学生はマダ夏休みなのヨー! いいデショ!」
お昼ご飯にコンビニの昆布おにぎりを二つ、テーブルに並べながら李 蘭玲は弾んだ声で笑顔を見せた。
占いの館に勤務している占い師は全員芸名を名乗っているため、スタッフ同士の会話でも芸名で呼び合うのが習慣になっている。
とはいえ仕事中は個室で各々仕事をしているため、他の占い師とはそうそう話す機会もない。スタッフルームで会った時に少し話をするくらいだ。このつかず離れずの距離感も海鈴にとっては有難かった。
「そう言えば、この前言ってた男性とはどうなったんですか?」
世間話程度に話題を振る。一ヶ月程前スタッフルームで会った時に男性からお茶に誘われたと聞いていた。
「あぁ、マキタサンのコトネ! メチャ良い人だったヨ! 美味しい食べ物ご馳走してくれたカラネ!」
李 蘭玲は中国からの留学生である。中国の大学を卒業してから日本に留学に来た勤勉な女性だ。海鈴とは年齢は離れているが、明るく社交的な性格なこともあって接しやすい。
「ダカラ、今度お礼に占いしてアゲル約束したヨ! ワタシの占い、アタルカラネ!」
そう言う李 蘭玲はどこか楽しげだ。
「それじゃ、ゆくゆくはお付き合いするんですか?」
と聞くと、彼女は大笑いしながら
「ソンなんじゃナイヨ! 友達になったダケヨ!」
と言って、あっという間に昼食を食べ終え仕事場へ戻って行った。
そんな彼女の言動に、どこかほっとするような、羨ましいような自分がいる。
彼氏というものに全く興味がないわけではない。ただ、相手の思考が見えてしまう自分が、誰かと恋に落ちて付き合う姿は到底想像出来なかった。何より出来るだけ多くのお金を貯めることが目下の目標なのである。




