3-6.半分こにしたアイス
そうしているうちに、ママから着信があった。渋滞を抜けて、Weirdosまで帰ってきたという。
俺は詩織と手を繋ぎながらWeirdosに向かった。今度は無言ではなくて、二人でお喋りをしながら歩いた。
店に着くとママは心配そうな表情をしていたが、詩織の顔を見ると安心したようだった。
「おかえりなさい、しーちゃん。お迎えにいけなくてごめんなさいね」
そう言って、夏の暑さで頬が火照っている詩織を抱きしめる。
「ヒカルちゃん、本当に助かったわ。ありがとう」
「いえいえ、大したことじゃ――」
「あのね、ひかるちゃんと、ブランコでアイスたべたのっ……」
珍しく詩織が遮るように話しだした。
「あら、ヒカルちゃんと?」
「あまりにも暑くて、寄り道しちゃいました。しーちゃん、また半分こしてアイス食べようね」
詩織は力強く頷いた。そんな詩織を見て、ママも泣きそうになりながら微笑んでいた。
その日の夜。
詩織は自室の机の引き出しの奥に隠してあったペンギンのぬいぐるみを引っ張り出した。
これからWeirdosの開店時間となるためにメイク中の龍之助の元に駆け寄る。
「りゅーちゃん……」
「なぁに? どうしたの?」
口紅を差そうとしている龍之助に、両手でペンギンのぬいぐるみを差し出す。見慣れないぬいぐるみに、龍之助は驚いた顔をした。
「これは、ぺんちゃん……!ほんとうは……しおりのたからものなの! パパとママと、すいぞくかんに行ったときに、かってもらったの……」
ゆっくり一呼吸おきながら、詩織は喋った。龍之助は必死に何か自分に伝えようとする詩織の姿を温かく見守っている。
「パパもママも、し、しおりのこと……きらい……だけど、しおりは……きらいになれないの……」
それは、詩織が初めて口に出した本音。
「しおりは、ぺんちゃんのこと、たからもののまんまじゃだめかな……」
恐る恐る龍之助の顔を覗き込む詩織が可愛くて、勇気を出して自分の思いを伝えようとする彼女が愛おしい。
「駄目なわけないでしょう? しーちゃんは自分の心のまま、大切にしたいものを隠さなくていいのよ。何度だって言うわ。アタシはしーちゃんのことが大好きよ」
「りゅーちゃん……、ありがとう。しおりも、大好き……!」
龍之助の作る卵焼きは、母親の卵焼きより甘かった。ハンバーグは大きいし、オムライスにはコーンが入ってない。でも、それがもう好きなのだ。
――しおりのいばしょは、いま、ここ。




