3-2.詩織の日常
休み時間になると、保健室は様々な学年の児童が遊びにやってくる。身長を測ったりする子や川田先生とお喋りをしに来る子で賑やかになる。
そんな時、詩織は保健室の一角を仕切りで囲ったスペースでじっと息を殺して座っている。誰も居ないかのようにひたすら存在感を消している。
誰にも気づかれませんように、誰かのことを見てしまいませんように。
保健室に充満している賑やかな声が嫌で耳を澄ますと、遠くで誰かの笑い声が聞こえる。ボールを蹴る音、廊下を走る音。祈るように目を閉じて時間が過ぎるのをひたすら待つ。
龍之助はギフトが発動しなくなったと言った。詩織もいつかは人の秘密が見えなくなるかもしれない。でも、それはいつになるかはわからない。
「ゆっくりでいいから、少しずつ受け入れていきましょう」
龍之助はそう言った。そして詩織と同じようにギフトを持っている人達と引き合わせてくれた。
彼らは龍之助と同じように詩織に優しくしてくれたし、可愛がってくれた。ギフトを持った人達と一緒にいる時には少し安心感を感じるが、それでも心を開くことは出来ないし、小学校という大きな箱の中で詩織は一人きりだった。
登下校は一番怖い時間。休み時間は一番寂しい時間。本当は学校に行きたくなかった。つまらないし寂しいし、怖い。
――りゅーちゃんはパパでもママでもない、すてられたらしおりは一人ぼっち。そんなのいや。わがまま、言えない。
夏休みの宿題、“大切なもの”の作文用紙を見つめて溜息を吐いた。大切なものもこそ、龍之助にも言えない秘密の一つであったことに気がついたのだった。
その日は一日沈んだ気持ちで過ごした。




