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Weirdos―左頬に文字が見えるギフト―  作者: 七星
10.好感度なんていらない
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10-3.新人教育

 彼がヒカルちゃんをライバル視していることは前々から解ってはいたが、今はヒカルちゃん以外に新人教育を任せられる人員がいなかった。


 最古参の従業員である海鈴はこの春から高校三年生。受験生となった彼女はWeirdosでのシフトを大幅に減らしている上に、占い師の仕事をメインに切り替えている。 


 海鈴の言う事なら兎も角、スイちゃんが素直にヒカルちゃんの指導に聞く耳を持つかを懸念していたのだが。


「開店準備で一番最初にやることは掃除だ! 翠はあっちのテーブルから拭き掃除な。テーブル用の緑色の布巾を使ってくれ」


「……うっす。この棚も緑色の布巾で拭いていいんすかぁ?」


「それはこっちのピンクの布巾で!」


「へーい」


 どうやら杞憂だったようだ。


 ふてぶてしくも真面目に指示や不明点を聞くスイちゃんに、薄っすらと汗を浮かべながらも張り切っているヒカルちゃん。


 男子同士のやり取りが、何だかちょっと幼くて可愛らしいわぁなんて考えながら微笑ましく二人を見守っていると、ベルがチリンチリンと小さく音を立てる。


 扉方向を見ると、狭い隙間から店内を覗き込むようにしている人物が一人。


「あ、笠井さ」


「海鈴さんッ!!」


 ヒカルちゃんの声を遮りながら、スイちゃんが扉の方へすっ飛んでいく。そしてエスコートをするように扉を開けて海鈴を店内へ招き入れた。


 本当は店内の様子を盗み見たら引き上げる予定だったのだろうが、見つかってしまった海鈴は若干の照れ笑いを浮かべている。


「やっ。翠の初出勤、上手くやってるか見に来たよ」


 そう言いつつ、にっと笑って海鈴はヒカルちゃんに「しっかりやってるじゃん」とでも言いたげに目配せした。


 彼女なりにスイちゃんがしっかりと指示に従っているか心配して見に来たのだろうけれど。


 そんな海鈴にヒカルちゃんも微笑み返している。通じ合っているかのような二人の視線のやり取りに気が付いたスイちゃんは、


「……谷崎なんてすぐに追い越しますよ。俺の方が断然優秀ですからね」


 と笑顔で本音を漏らし。背景に邪悪な黒いオーラが漂って見えるようだ。 


「みすずちゃん、あそびに来てくれたの……?」


 三人の複雑な関係を知る由もないしーちゃんは嬉しそうに手をもじもじさせ、


「そうだよ! しーちゃんに会いたくなったんだよぅ〜」


 そんなしーちゃんを海鈴がぎゅうっと抱きしめた。その後ろでスイちゃんがヒカルちゃんを鬼の形相で睨みつけている。なんてカオスな状況なのだろう。


――海鈴、アンタが来るまでこの二人、案外上手くやってたのよ。


 なんて少し心の中で毒を吐いたりして。男も女も、恋愛が絡むと駄目になるものね。


 龍之助は三人のやり取りに呆れながらも、ついに声を出して笑ってしまった。 

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