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Weirdos―左頬に文字が見えるギフト―  作者: 七星
2.凧揚げと珈琲
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2-1.はじめてのアルバイト

 Weirdosでアルバイトを始めてから、一ヶ月が経った。


 とは言っても、週に三日か四日しかシフトを入れていないが。


 俺の仕事は基本的にレジ打ちや皿洗い、後はメニューを聞いたりなどウェイターのようなことだ。もう少し仕事に慣れたら、厨房側の仕事も教えてもらう予定だ。


 高校生の時は陸上部に入っていて、部活動で忙しくアルバイトはしていなかった。家の手伝いもおざなりであった俺は、すでにグラスを割りお皿を割り……という失態を犯している。働くということは大変だ。


 このWeirdosというバーは常連客が多いようで、それなりに繁盛している。特に花金と呼ばれる金曜日の夜は忙しい。


 勿論ギフトの方は相変わらずだ。バイト先でもお客様の顔には特技が書いてあるように見え、その人がどのくらい特技を活かせているのかどうかまで、俺には丸見えの状態だ。お客様が多い日は少しげんなりするが、それでも何も書いていないママや詩織の顔を見るとほっとする。普通の人がいる、というのは安心感があるものだ。


 あと、驚くことにゴスロリ占い師『Rin』こと笠井 海鈴がWeirdosでもアルバイトをしていた。


 彼女は不定期に占い師として十七時まで働き、さらに二十二時までウェイターとして働いている。部活動はしておらず、帰宅部だそうだ。シフトが不定期でも人気ナンバーワンをキープ出来るほど集客率がいいのは、事前にSNSでスケジュールの告知をしていることと、口コミの効果らしい。


 何故そんなに働くのかと尋ねたところ、「大学に入ったら一人暮らしがしたいから」とあっさり言われた。俺が高校生のころは先のことは何も考えずに部活動ばかりしていたのに。しっかりした女子高生だと関心してしまう。


 そんな俺だが、近頃はママにオープン前の作業をほとんど任せてもらえるようになった。オープン前の作業と言っても、テーブルを拭いたり、カトラリーを磨いたり等の軽作業である。


「ヒカルちゃんが入ってくれたおかげで安心してしーちゃんの様子を見に行けるから、本当に助かるわぁ〜」


 なんて言われると、フォークを磨く手にも力が入る。ママは営業中もちょこちょこ五階の居住スペースへ足を運んでおり、詩織が心配なのだと思う。


 正直、年下の女の子を頼りにするのは情けないけれど、まだ俺は新人だし、店に一人でいると心許ないので笠井さんとシフトが被っていると安心する。

 

 ママと笠井さんと三人で店を回している時は、ママではなく笠井さんが詩織の様子を見に行くこともある。俺も詩織とは何回か顔を合わせることがあるので、


「ねぇ詩織ちゃん、俺もみんなみたいに“しーちゃん”って呼んでいいかな? 俺のことは光とか、ママみたいにヒカルちゃんとか、好きなように呼んでくれたら嬉しいなっ」


 と、普段の自分より数倍はフレンドリーに振る舞いながら言ってみたものの、名前どころか話しかけられることもない。とりあえず頷いてくれていたので、詩織のことは“しーちゃん”と呼ぶようにしている。


 ちなみに笠井さんにも名前で呼んでいいか聞いてみたところ、職場での関係である以上、苗字で呼ぶように言われたので“笠井さん”と呼んでいる。笠井さんは高校二年生で俺より年下だが、Weirdosでは先輩なので“さん”付けだ。一方、彼女は俺のことを“谷崎”と呼ぶ。なんだか少し複雑な気持ちだ。

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