8-1.メッセージ
「こっ、これ! 見てくださいっ!」
慌てて差し出した俺のスマホの画面を三人が覗き込み、あっと声を上げた。
「新堂 琉為が持ってるのって、ホワイトボード……?」
ママがそう呟くと、尾方 翠と笠井さんも即座に自分のスマホで新堂 琉為のSNSを開き確認していく。
「こっちも見て! この写真に写ってるの、私がしーちゃんの誕生日にプレゼントしたピン……!」
笠井さんが目を見開き叫んだ。
スマホの画面を見せながら指差す先には、四葉のクローバーのピンを付けておちゃらけた新堂 琉為の姿が写っている。
「こっちもだ……。このネコのキャラのハンカチ、俺が詩織にあげたやつと同じだ。しかもこの投稿、一時間前にアップされてる……」
尾方 翠も新堂 琉為のSNSを見ながら眉をひそめた。そう言われて確認すると、十三の新規投稿は全て一時間以内にアップされていた。
「この写真に写ってる眼鏡って、もしかしてしーちゃんが掛けてるのと同じやつですか……?」
明らかに子供用の小さい丸眼鏡を顔に当てている新堂 琉為の写真があり、ママに見せるとゴクリと唾を飲み込み頷いた。
俺達は顔を見合わせた。
「……これって誘拐じゃない! なんで新堂 琉為がしーちゃんのことを知ってるのよ! 一体何のために!!」
ママは半狂乱で声を荒らげ、怒りを堪えきれずに拳をテーブルに打ち付ける。ママがこんな感情を露にした姿を見るのは初めてだった。笠井さんも誘拐というワードに同様を隠せず青ざめた顔をしている。
「ママ、落ち着いて……」
俺が声を掛けると、鬼の形相でママは叫ぶ。
「これが落ち着いてなんかいられないわよ!!」
「今は!! やるべきことをしましょう! なんで新堂 琉為がしーちゃんを連れ去ったのかはわからないけど、怒るのはその後です!」
ママに負けじと声を張り上げると、
「そうだよ……! 谷崎の言う通りだよ。一旦SNSの情報を整理しよう……!」
と笠井さんも震えながらも声を上げ、その言葉に尾方 翠も力強く頷く。
ママは三回程ゆっくりと深呼吸をする。
「そうよね……。つい頭に血が上ってしまったわ。取り乱してごめんなさいね」
「こんな状況だし、オッサンの気持ちはわかってるから大丈夫」
珍しく尾方 翠がフォローする。俺も笠井さんも、今度は尾方 翠の言葉に頷いた。
そして俺達は新堂 琉為が一気にアップした十三の投稿を、一つずつ確認していくことにした。