8-1.メッセージ
※この章には過激な表現が含まれる部分がございます。
苦手な方はご注意ください。
ママが店を飛び出してから、俺は一応Weirdosの制服に着替えて開店準備を進めていた。尾方 翠はテーブル席に座り、スマホを見つめてママからの連絡を待っている。
スマホは一向に鳴らず、帰って来ない二人を思うと不安が募る。俺と尾方 翠は終始無言だった。尾方 翠が指でテーブルをトントンと叩く音がやけに大きく聞こえる。
それからしばらくして、シフトに入っていた笠井さんもWeirdosにやって来た。
詩織が小学校から帰って来ていないこと、ママが詩織を探しに行ったことを笠井さんに説明すると、
「しーちゃん、一体どこ行っちゃったのよ……!」
なんてぶつくさ言いながら、セーラー服のまま尾方 翠の向かいの席に座ったり立ち上がったりと落ち着かないようだ。
ママが帰って来たのは、店を出て三十分程してからだった。
カランカランとベルが鳴ると同時に俺達は一斉にドアの方を見つめたが、そこにいたのは肩を落としたママ一人だ。
「詩織は……?」
尾方 翠がそう聞くと、ママは力なく首を横に振る。
「駄目、見つからないわ……。学校にも連絡してみたけれど、とっくに下校してるって言うし。お友達のお宅にもお邪魔してないみたい」
その言葉に笠井さんはへたり込んだ。
「警察に届けた方がいいのかしら……」
ママはそう言いながら、再度詩織のランドセルを開けて何か手がかりはないか確認し始める。
ランドセルから出てきたのは教科書にノート、プリントが数枚、筆記用具に給食袋。
ちなみに小学校入学時に買ったというGPS付きの防犯ブザーはランドセルに付けられていて、何の意味も為さなかった。
「こんなことなら、ホワイトボードの方に防犯ブザーを付けていれば良かったわ……」
とママは嘆いた。店の前に置いてあったのはランドセルだけで、いつも首から下げているホワイトボードは、今も詩織と共にあると考えられるのだ。
そうこうしているうちに、時刻はとっくに十八時を回っていた。
俺はずっと胸騒ぎがしていて、それが思い違いであることを願っていた。
なぜなら、SNSを確認することは既に日課になっていて、奴が近くにいないことは今朝確認済だったのだ。だから、そんなはずないと思いたかった。
でも詩織は学校にも友達の家にもいない。未だ帰って来ない。
確認するだけ、念のためだ。
制服のシャツの胸ポケットからスマホを取り出す。
恐る恐る開いた新堂 琉為のSNSを見て、俺は驚愕した。
今朝から更新されていた。それも十三回も。
写真と共にコメントがアップされていて、その投稿を一つずつスクロールして確認していく。その投稿の何枚かに、気になるものが写っていた。