76.神事はお祭り
---------- アイ視点 ----------
プル:「マスターは人魚の島で何をしてるの?」
私はプルを抱えて人魚の島へ向かっている。
アイ:「人魚達の出産を手伝ってるの。」
プル:「なんで?」
アイ:「生まれてくる子供達はちょっと特別で、
小さい頃はちゃんと面倒を見てあげたいの。」
プル:「そうなんだ。それなら私も手伝うね。」
アイ:「気持ちは嬉しいけど、プルも忙しいんじゃない?」
プル:「どんな子達かな~。楽しみだな~。」
やんわりと断ったが通じなかったみたいだ。
プル達の知識と能力は言うまでも無い。
でも子供達への情操教育としてはどうなんだろう。
人魚は人魚で人間とは違う価値観を持っている。
いろいろな価値観や常識に触れるのは
それはそれで良いことなのかな?
アイ:「見えてきたよ。」
プル:「久しぶりだな~。」
アイ:「来たことあるんだ。」
プル:「うん。私達で中心の島の内部に空洞を作ったんだ。
人魚達が来る前に去ったから誰にも会ってないけどね。」
アイ:「やっぱり自然に出来た空洞じゃなかったんだね。」
ちょうど日の出くらいの時間帯だ。
地球の公転より早く移動しているため、
三角大陸の時間より人魚の島の時間の方が早くなっている。
帰ってきて安心したのか、急に眠くなってきた。
徹夜になっちゃったな。
人魚の島に着いたらちょっと休ませてもらおう。
山頂の穴から中央の広場の陸地に到着した。
すぐ傍でアクアさんが子供を抱いて待っていた。
アイ:「ただいま~。アクアさんも無事に出産したんだね。
おめでとう!」
アクア:「おかえりなさいませ。今しがた生まれました。」
優しい笑顔で子供を抱くアクアさんの姿は、
私から見ても惚れ惚れするほど美しい。
アクアさんは私によく見える様に屈んで子供を見せてくれる。
私が近づくと子供が手を伸ばしてきたので、
そっと手を握ってあげる。
アクア:「最初にアイ様にお見せ出来て良かったです。」
アイ:「アクアさんに似て綺麗な青い髪だね。」
プル:「可愛いね~。」
アクアさんがプルの方を見た。
アイ:「この梟はプルって言うの。
私の昔馴染みで昨日の夜に再開したら付いてきてくれたの。」
プル:「私はプル。マスターの忠実なしもべだよ。」
アクア:「アイ様の昔馴染みですか…。
私はアクアマリンと申します。アクアとお呼びください。
よろしくお願いします。」
アクアさんは丁寧に頭を下げた。
プル:「こちらこそお世話になりま~す。」
おお…。プルが礼儀正しい。礼には礼という感じなのかな。
アクア:「アイ様、この子に名付けをお願いします。」
アイ:「いいよ。そうね…。綺麗な青い髪だから、
ルリちゃんでどうかな?」
アクア:「ありがとうございます。」
私はいつも生まれた子供にやっているように
ルリちゃんに異常がないか額に私の額を当てて脳と身体の
状態を詳細に確認する。特に問題無く健康そのものだ。
そして痛覚を遮断して両耳にイヤリングを着けて傷を治す。
髪色に合わせて大粒のサファイアのイヤリングにした。
アイ:「ちょっと頭を下げて。」
アクアさんにもスピネルさんにあげたように
子供とお揃いのイヤリングを付けてあげる。
アイ:「ん~。術式はどうしようかな。」
アクアさんには術式込みで既に指輪をあげている。
追加する術式は何がいいかな…。
プル:「それなら術式は私があげるよ。
マスターの魔素結晶から作った魔道具なら、
私の術式も1つくらいは入ると思うよ。」
プルがアクアさんの肩にとまり、左右のイヤリングに
術式を書きこむ。
アイ:「ちょっと見せて。」
やっぱりというか、プル達のロボットの術式だった。
左のイヤリングにωタイプのアームズ、
右のイヤリングに複数の外装(武装も含む)が記載されている。
アイ:「これ、私も貰っていい?」
プル:「いいよ~。マスターが魔改造したら私にも教えてね。」
アクア:「アイ様も欲しがるような術式ですか…。
ありがとうございます。」
プル:「感謝は私にじゃなくてマスターにね。
かなり高度で情報量の多い術式だから、
理解するのは難しいし、必要な魔力も膨大な量になる。
でも、諦めずに努力して使える様になると…。」
サトルと一緒にいた完全武装した黒いロボットが現れた。
サタンアームタイプωという種類のロボットだ。
プル:「これが作れる術式だよ。
ちょうどいいから、この島の防衛にそのまま使おうかな。」
アイ:「それなら私達がいないときでも安心だね。」
アクア:「確かに強そうですね。」
アイ:「見た目だけじゃなくて、実際にかなりの戦力だよ。
総司君でも無傷じゃ勝てないんじゃないかな。
まあ、帰ってくる頃には
総司君も使えるようになってると思うけど。」
アクア:「それはすごいですね…。使える様に精進します。」
プル:「どうしても分からないところがあったら、
聞いてくれれば教えてあげるよ。」
流石にもう眠い…。休ませてもらおうかな。
アイ:「昨日寝てないからもう眠くて、ちょっと寝てくるね。」
アクア:「はい。ゆっくりお休みください。
私もルリと一緒に水中に戻ります。」
アクアさんは微笑みながらルリちゃんの頭を撫でている。
アイ:「プルはどうする?」
プル:「私は別に眠くないから、みんなに挨拶しとくよ。」
何か忘れているような引っかかりを感じるが、
気が付いたら対応すれば大丈夫だろう。
私は右の空洞へ移動して少し休むことにした。
4時間くらい寝ただろうか。空腹で目が覚める。
そういえば昨日の夜も今日の朝もご飯を食べてなかった。
中央の広間へ移動する。
お昼ご飯の準備でもしようかな。
何か忘れている気がする。そうだ。プルがいない。
アイ:「プルはどこ行った?」
「神殿の中~。」
忘れてた…。血の気が一気に引く。
慌てて神殿に入る。
通路の隅には寝袋が並び、人魚達が幸せそうな顔で眠っている。
急いで御神体のある部屋へ入る。
こちらからは見えないように曇りガラスの衝立があり、
その上に梟のプルがとまっている。
透明な外壁の外から人魚の子供達が貼り付くように見ている。
海底で繋がっているので、ここまで泳いで来ちゃったみたいだ。
水族館の水槽のような構造にしたのが思いっきり裏目にでている。
子供達の母親も一緒にいるので、人魚的にこれは問題無いらしい。
教育の一環?いや…ダメでしょ…。
いや…、人魚的にはダメじゃないの?
楓さんが総司君の名前を連呼している。
今は楓さんの番みたいだ…。
人魚達と白狐さん、ダリアさんが部屋の隅で座って見ている。
蘭さんは近くでストップウォッチを構えて見ている。
頼まれて私が作ったストップウォッチだ。
楓:「アッ、アッ、あ!早期君もうイきそう。」
蘭:「新記録かも!」
「楓ちゃんファイトー!」
「マリンさんを超えられるかなー!?」
「負けてられないね!」
楓:「私が総司君の一番になる!」
周囲から手拍子が始まり、徐々にその速度が速くなる。
楓:「イッたーーーーーー!」
蘭:「惜しい!でも、3分切ったよー!」
「「「総司様はやーーーーーーーーーーい!!!」」」
あんまりな状況に頭が真っ白になる。
衝立で見えないけど、何が行われているのかは分かる。
どうしてこうなった…。
少なくとも総司君には絶対に見せられない。
楓:「総司君、気持ち良かったよ。綺麗綺麗しましょうね~。」
蘭:「次は私の番だよ!ストップウォッチをお願い。
あっ、でも、そろそろご飯の時間かな。」
みんなが入口の方を見て、私に気が付く。
「「「アイ様だ!!!」」」
「「「アイ様いらっしゃ~~い!!!」」」
プル:「マ…マスター…。コレハナニガオキテマスカ?」
私はプルを捕まえて走って神殿から出た。
どうしよう…。見られた…。
言い訳のしようがないくらいしっかり見られた…。
プル:「アリエナイ、アリエナイ、アリエナイ…」
プルが小さい声でアリエナイと呟いている。
私もアレはヒドイと思う。当初の目的は薄れ、娯楽化している。
いや、風俗も立派な娯楽だ。
いやいや、アレを風俗というのはどうなんだろ…。
でも、アレはアレでなりゆきとしては自然なことなのかも…。
当然賛同は出来ないけど。
人魚のみんなに聞かれたくないので、
そのままプルを抱えて人魚の島から出た。




