75.亮孔の思惑
---------- アイ視点 ----------
月の重力圏から抜けると共に地球の重力圏に入る。
来た時と同様に重量物を射出し反作用で加速する。
プル:「お~。さすがというか、
魔力ごり押しの単純な力技でこうやっちゃうか。
マスターはゲートシステムを使う必要ないね。」
アイ:「急いでるんだからいいの!」
プル:「マスターは縛りプレイの楽しさを知った方がいいかな。」
アイ:「縛りプレイって…。」
プル:「エロ兎の趣味じゃないよ?」
アイ:「わ…わかってるもん!それとエロ兎って言っちゃダメ!」
プル:「縛りプレイ好きの雲子さんね。」
アイ:「それもどうかと思うよ…。」
プルは私の顔を見ながら嬉しそうに話している。
プルは下ネタが好きらしい。
私もプルと話すのは楽しいけど、会話の内容には配慮してほしい。
三角大陸が見えてきた。
時間的には朝ご飯を食べ終わったくらいだろうか。
亮孔さんのいる屋敷の庭に着地する。
プルから手を離すといつものように私の肩にとまった。
「ビックリした…。どうされました?」
近くにいた人が私に気が付いて声をかけてくれた。
アイ:「急にごめんね。亮孔さんはいる?」
「とりあえず中へどうぞ。呼んできますね。」
アイ:「ありがとう。」
そのまま広間の方へ通される。
亮孔さんもすぐに来たが、
人払いをしてこの部屋に誰も入れないように伝えていた。
亮孔さんが床に正座したので私も向かいに正座する。
亮孔:「ようこそおいで下さいました。
一度二人だけでお話しさせて頂きたいと思っていました。」
亮孔さんはチラッとプルの方を見た。
アイ:「そうなの?」
プル:「ホーホー。ホーホー。」
プルは梟の鳴き真似をした。迫真の演技だ。
亮孔:「そちらの梟はただの梟じゃないですよね?」
残念。亮孔さんには気づかれたみたいだ。
アイ:「プル、ちょっとお外で遊んできて。」
プル:「もう言っちゃうんだ。もうちょっと頑張れたのに…。」
プルは残念そうに部屋の外へ飛んでいった。
亮孔:「ありがとうございます。」
アイ:「私も用事があって来たんだけど、先に話したい?」
亮孔:「私の話の方があまり人に聞かせたくない話だと
思いますので、私の話を先にさせてください。」
なんか変な言い方だな。
私の話の方が人に聞かせたくない話だと思いますので?
亮孔さんが知られたくないんじゃなくて、
他の人が知られたくない話ってことかな。
アイ:「いいよ。お先にどうぞ。」
亮孔さんが両手をついて頭を下げた。
亮孔:「私達を御救い下さりありがとうございました。女神様。」
亮孔さんは頭の切れる人だ。少しでも疑問に思っていたら、
発言後の私の反応を観察しようとするはずだ。
頭を下げて私の反応が見えない状態のまま
話を切り出したということは確信に至る何かがあるみたいだ。
アイ:「どうして私が女神様だと思ったの?
それに貴方達のために尽力したのは総司君で、
私は少しだけ力を貸しただけだよ?」
亮孔:「はい。総司さんにもこの上なく感謝しています。
ですが、総司さんのことも含めて
女神様あってのことだと思っています。」
亮孔さんは頭を上げ、正座の姿勢に戻った。
亮孔:「私は国王様から女神様のことをお聞きしていました。
お姿は少し幼く変わられたみたいですが、
特徴が一致しております。
そしてその知識とお力、女神様と考えれば納得出来ます。
決定的なのは魂の器です。
総司さんとソフィさんの装備、それと宇宙船にも
多くの魂の器が使われていました。
魂の器を生み出せるのは女神様しかいないと
お聞きしております。」
アイ:「仮に私が女神だとして、それを知ってどうするの?」
亮孔:「女神様、あえてアイさんと呼ばせて頂きますが、
アイさんは女神様であることを秘密にされていました。
秘密を知る者の一人として、非才な身ではございますが、
せめてもの御恩返しとして、お力になれることがあれば
何なりとご用命ください。」
亮孔さんは再び頭を下げた。
まあ、気づかれるのは仕方ない。
隠すためにしたいこと、
すべきことが出来ないのでは意味が無い。
でも、気づかれたのが亮孔さんでよかった。
思慮深く、行為の先に至る状況まで考えて行動してくれる。
十分に助けになってくれるだろう。
アイ:「私は自分を女神だとは思っていませんが、
この世界を創ったのは事実です。」
襟を正して真実を伝える。
言っちゃった。でも仕方ないよね。
亮孔:「お話し下さりありがとうございます。」
アイ:「まあ、そういうことだけど、
これからも変わらずよろしくね。
秘密にしているけど、絶対って訳じゃないよ。
私はただこの世界に生きる一人として過ごしていきたいだけ。
その中で出会った人達の力になりたいとは思ってる。
その程度だよ。」
亮孔:「必ずお力になることを誓います。
それでは、アイさんのお話しをお聞かせください。」
アイ:「えーとね。ちょっと事情があって月に行ってきたの。
ついでに備玄さん達に会って国王様と王妃様の御遺骨を
預かってきたの。」
亮孔さんに箱を渡す。亮孔さんは恭しく箱を受け取った。
亮孔:「またしても…。ありがとうございます。」
亮孔さんの目から涙が流れる。
アイ:「ついでなんだから、そんなに気にしなくていいからね。
そもそも総司君が引き受けたからなんだから、
感謝は総司君にね。」
亮孔:「はい。もちろんです。総司さんにも感謝致します。」
アイ:「それじゃ、用事も済んだから私は行くね。」
亮孔:「私に何か出来ることはありませんか?
あまりにも申し訳なくて…。」
アイ:「だから、そんなに気にしなくていいってば。
それこそ女神様の気まぐれくらいに思ってくれればいいよ。」
亮孔:「ですが…。」
アイ:「う~ん…。そうね…。それなら、数年後くらいに
人魚達と三角大陸とで交易を始めたいと思ってるんだけど、
三角大陸側でその準備を進めておいてくれる?」
亮孔:「御神託、承りました。」
アイ:「御神託って…。それじゃ、後はよろしくね。」
立ち上がり広間を出ると、プルは屋敷の人達と話をしていた。
アイ:「お待たせ。いくよ。」
プルは屋敷の人達と軽く言葉をかわすと飛んできて
私の肩にとまった。
プル:「マスターの偉大さを広めておいたよ。」
アイ:「余計なこと言ってないでしょうね?」
プル:「言ってないよ。いずれこの世界の頂点に
君臨するお方だから敬えって言っておいた。」
私はプルの足を掴んで振り回した。
プルは嬉しそうにパタパタしながら回っている。
アイ:「それじゃ、またくるね~!」
プル:「またな~!」
私達は人魚の島の方へ飛び立った。




